解析の詳細
※音声有りの動画は、こちら
何もかも再現するのではなく、風の状況を特徴付ける建物を1つ1つ適切に選び、平面形状と高さ情報を与えていきます。 手前味噌ですが、昨年インターフェイスを大幅に改変したWindPerferctは、我々に期待に応えて玉造と豊中の全く異なる2つの解析モデルを、極めて短時間で軽々と作成する事に貢献してくれました。 放映をご覧になった方は、GoogleEarthの画像と我々の作った解析モデルがぴったり一致しているのを、テレビ画面でご覧になった事と思います。 風速・風向条件はテレビ朝日から指定が有り、大阪管区気象台の最大瞬間風速47m/sec・風向南(S)を設定。 これもWindPerfect上では、簡単な操作で設定可能です。 解析モデルの格子規模は、最初2000万グリッドで立ち上げましたが、放映までの時間がないため、風の現象が再現出来るギリギリまで格子数を落とす調整が続きます。 さて解析計算をするのがまた難題。 今回は定常解析ではなく、風の非定常性を再現するシミュレーションが求められました。 もちろん建物に対する風圧力は計算できて当たり前。 我々の選択した乱流計算は、「DNS」直接シミュレーションです。 ハイブリッド中心差分の一種を用いて、風圧力・風荷重の予測を行います。 実際に風洞実験の結果とも良く合いますし、排砂の津波解析による波力予測でも非常に実績のある手法です。 シミュレーションの流体計算が実際に始まったのが金曜の未明。 私は出張があったので一旦大阪に向かいます。東京にトンボ返りして事務所にテレビ朝日殿来社。 作成したシミュレーション結果の解説と、放映に合わせた動画の調整に関する議論が白熱します。 何をどう可視化すれば、視聴者が分かりやすいものが出来るのか。 ここでは 妥協を許さないテレビ報道記者の姿勢に脱帽せざるを得ません。 いろいろ宿題を頂いて、シミュレーションとアニメション作成を再度実施。 何とテレビ朝日殿は、翌日土曜にも押し掛けていらっしゃいました。 動画データをネットで送れば済むと思っていたのですが甘かったです。 夕方4時頃に全データを直接お渡ししてようやく解放されました。
【解析結果】
<玉造>
風上は表示の情報で南側です。 台風21号来週時の風向はほぼ一貫して南です。
高層マンションに当たって風がはねる位置で建物角部からの渦の剥離が出ています。 この間欠的に生じて放出された渦は北側の赤い屋根の住戸に向かいます。 放出された渦の大きさにはバラつきがあり、時に小さく時に大きい渦が下方に向かします。
こういった風の性状は映像で見たような爆発的な突風に成長して、建物は破壊されたと考えられます。 南側の小学校を乗り越えて来た風は、赤い屋根の住戸には直接当たらず、上方に逸れている様子が分かります。
図4 玉造粒子軌跡図(色は風速)
図5 玉造平面風速分布(地上3m)
<豊中>
元になった動画は、高層建物に挟まれた区画で駐輪場の屋根が基礎ごと持ち上げられて飛んでしまうと言う衝撃的なものです。 この現象の不思議なのは、この場所が当時の主風向の南風に対して、大きな建物が壁になって風が遮られる位置関係になっている事です。 強風が吹かないはずの場所で何故駐輪場が損壊したか? 数値シミュレーションによる予測でその謎に迫りました。
建物の配置関係や高さを再現してシミュレーションを掛けると意外な事がわかりました。 この駐輪場の区画の外では極めて早い風が吹いているのですが、肝心の駐輪場の中の風は比較的穏やかです。 しかしこれは風速分布だけの話であって、圧力の分布を見ると話は変わってきます。
圧力分布では駐輪場の区画が負圧でおおわれており、しかもいくつも小さな渦巻き状のものがあるのが分かります。 この負圧が2000Paもの値になっており、すなわち200kg/㎡の上方向に巻き上げる力働いている事になります。 これでは少々頑丈な駐輪場でも壊れてしまいます。 風速が小さいからと言って、安全について過小評価するのは禁物です。
図6 豊中平面風速分布(地上3m)
図7 豊中粒子軌跡図(色は風圧)
図8 豊中平面風速分布(地上3m)
豊中のシミュレーションでは平面風速分布を上から俯瞰したあと、パンしながら横からの俯瞰に切り替わるシーンは、WindPerefectのキーフレームアニメーション機能で作りました。 コンピュータ・グラフィックスなど見慣れているはずのTVマンが、口をあんぐり開けて驚くのを見るのは少し痛快でした。 テレビ朝日殿の題材の選び方が良かったのでしょうか。 2つの解析のどちらも、ほぼ狙い通りの風現象が再現出来たのでほっとしています。 これも普段から手を抜かず、真摯に熱流体シミュレーションに取り組んでいる事への、神様のご褒美かも知れません。
与えられた情報は、現地の住所・写真と現地の最大瞬間風速。 もちろん図面もCADデータもなく、GoogleEarthとYahoo!地図の画像情報から下敷き機能を使って、対象となる建物群の形状を立ち上げます。
図1 GoogleEarth 玉造現地パース
図2 玉造解析モデルを下敷き機能で作成中
図3 GoogleEarth 豊中現地パース
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