解析の詳細
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【解析結果】
本シミュレーションでは夏季を想定し、2003年8月5日13時の気象データを対象として数値計算を実施し、以下の知見を得た。
緑化無しの流れでは、樹木がないため地盤・建物ともに日射で過熱されやすく、外気の冷却はほとんど期待できない。 地表面の温度は最大で外気温よりも8℃程度高い。高温域の等温面では、地上約30mの領域まで高温域が存在し中層建物の半分程度が覆われている(図4,5)。
屋上と地盤を緑化した場合、地盤面近くでは南東側道路で2℃近く気温が低下している。 これは道路に沿って植えられた樹木の影響により地表面付近の輻射温度が下がったことによる。 高温域の三次元分布は、緑化なしの場合と比較して35℃等温面の大きさが減少しており、緑化することにより街区上空の温度上昇が抑えられる(図6,7)。
壁面緑化を追加した場合、地盤面近くでは南東側道路で緑化無しの場合より3℃以上気温が低下している。 街区内でも同じ傾向であり、つる科植物が建物低層部を覆った結果、広域にわたって地表面近くの輻射温度が下がったものと考えられる。 高温域の三次元分布では他と比較しても35℃等温面の大きさが更に減少しており、壁面緑化による地上部での温度上昇防止が街区上空の気温にも影響を及ぼす事が分かる(図8,9)。
図4 緑化なし、周辺風速と温度分布
(地上1.5m)
図5 緑化なし、温度等値面三次元分布図(等値面温度35℃)
図6 屋上・地盤緑化あり、周辺風速と温度分布
(地上1.5m)/div>
図7 屋上・地盤緑化あり、温度等値面三次元分布図(等値面温度35℃)
図8 壁面緑化あり、周辺風速と温度分布
(地上1.5m)
図9 壁面緑化あり、温度等値面三次元分布図(等値面温度35℃)
図10 緑化なし、表面温度分布図
図11 屋上・地盤緑化あり、表面温度分布図
図12 緑化あり、表面温度分布図
以上より、WindPerfectでは、GISデータを用いた街区詳細モデルにより、地盤・屋上・壁面の各部に緑化を用いた外部熱気流シミュレーションを実施した結果、高温域の大きさが適切な緑化により大幅に減ることが分かった。
また、緑化の設置位置、外気温度、外部風の設定を変更することにより計画初期段階における検討に有効性が高いことも確認できた。
・解析の目的
近年、ヒートアイランド化の進行により夏季における都市部の気温上昇が顕著であり、温熱環境の悪化による熱中症患者の急増など居住環境が悪化している。 都市計画上必要な施策を講じるためには現況及び計画改善後の街区の居住性評価が必須であるが、風・日射などの気象条件などと種々の緑化条件を組み合わせ街区レベルで温熱環境の評価が可能なシミュレーションモデルはほとんど報告が無い。 本解析事例では、WindPerfectを用いて、CFD(計算流体力学)に基づくヒートアイランドシミュレーションを実在街区3次元モデルに適用し、地盤・屋上・壁面の各緑化条件を付加した場合の、ヒートアイランド抑制効果について検討する。
・解析の内容
解析に用いる街区・地区のモデル化にはGIS(Geographical Information Systems、地理情報システム)を用いている。 ここで用いているデータは㈱国際航業製のRAMSeであり、航空測量した点群データである。
本解析での対象は、東京都心部の業務地区として東京都中央区銀座1丁目をモデル地区に設定した。設定したモデル地区は図2のとおりである。(解析条件) (図1参照)
図1 都市外部空間の電熱メカリズム
図2 対象街区解析モデル
図3 各緑化条件の割当位置
・緑化なし
・屋上・地盤緑化あり
・屋上・地盤・壁面緑化あり(以下、「緑化あり」と記載する。)
本解析での対象は、東京都心部の業務地区として東京都中央区銀座1丁目をモデル地区に設定した。設定したモデル地区は図2のとおりである。(解析条件) (図1参照)
図1 都市外部空間の電熱メカリズム
図2 対象街区解析モデル
図3 各緑化条件の割当位置
検討ケースは以下の3ケースである。
・緑化なし
・屋上・地盤緑化あり
・屋上・地盤・壁面緑化あり(以下、「緑化あり」と記載する。)
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