解析の概要
風速分布 風向ENE
風速分布 風向WNW
某市街地風環境シミュレーション
頻繁に行われる風のシミュレーションは、解析対象となる当該建物の有無によりどのように周辺の風况が変化するか調べるものです。主にこうした解析は卓越風(当地で出現頻度の高い風)について実施されますが、住民やお施主が気にする風向でも行われる事があります。簡易な解析ですので裁判資料にはなりません。
上記画像の説明
2つの風向での風況の変化を表しています。高層建物が道路の交差点近くに位置しており、風向によって周辺の風の乱れ方が異なっている事に注目。
解析の詳細
風環境解析結果 平面風速分布図/西北西(WNW) 左:建築前, 右:建築後
計画前 低層棟解析モデル 左:計画前, 右:計画後
風害ランク評価 村上方式
風害ランク評価 右:建築前,左:建築後
風環境解析は、計画建物の高さに関係なく実施します。東京都内では11階建て以上のビルは周辺住民への環境評価の説明責任がありますが、事情によって5階建て程度の低層建物でも風環境評価をすることがあります。解析手順は高層ビルの場合と変わりがなく、同じ手間暇を掛ける必要があります。風洞実験では1式400万~500万円(模型費用が半分位)も費用が掛かるので、低層建物ではコスト的な問題で実施できないことが多いです。その点、数値シミュレーションは卓越風2風向に検討なら1式50万円程度で出来るので、非常に有効なソリューションと言えます。風洞実験は模型の作成時間が納期のネックになりますが、数値シミュレーションは現地調査を行った瞬間から始められるのでフットワークが全く違います。
それから、風洞屋さんには怒られると思いますが、1/1000の模型で実物と同じ密度・粘性係数の空気しか流せない風洞実験は相似則の点から疑問があり、実寸大スケールでのシミュレーションを容易に行えて理にかなった結果が出せる数値計算の方が合理的であると、私どもは考えています。中には風洞実験が一番正しいなどと言うことを主張される方もいるようですが、相似則が元々合っていないのになぜ正しいとされるか非常に疑問です。風洞実験が、コスト・掛かる時間や工数・結果データの保存などの点で不利になってきている現状では、数値シミュレーションを行うメリットはますます大きくなるでしょう。
下の図の左側が建築前、右側が建築後の解析モデル図になりますが、この低層ビルモデルは建築学会のアーカイブにあるもので、非常によく引用されているものです。
この問題は低層街区の中に比較的大きな建築物が立った場合を想定しており、日常茶飯に眼にする極めてポピュラーな問題です。特にこの問題の場合は、計画建物の北側に道路があり、そこを渡る風が計画建物にぶつかります。すなわち、「風の道」を阻害する建築物が風環境の変化にどう影響するか評価することが、シミュレーションの主眼になります。
例えば、最上部結果図に風向西北西(WNW)での計画建物が建つ前と建った後の、地上1.5m高さの平面風速分布の変化を示しました。西北西方向から街区に侵入してきた気流は東西方向に延びた道路の西側から道路に入り「風の道」を形作りますが、建設前には低層の小さい建物しかなかった計画敷地内にボリュームと高さのある建物が建ったために風は大きく跳ねます。この現象はアニメーションでも確認できます。
風害ランク評価はこのような場合でも有効です。卓越風だけでの計算よりも確かな評価が得られます。この問題では、評価点2,3,7,14などの箇所を中心に大きく風害ランクが上がっており、風環境が大きく悪化している事が分かります。風環境解析の目的の1つに対策の立案がありますが、植栽などの効果を適確に把握する事が出来ます。
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