━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ イスラエルとハマスの戦争が大きな問題になっています。 世界を大きく揺 るがせているこの戦争は、どんな理由で起きているのでしょうか? いわゆ るパレスチナ問題なのですが、何故かネットにはこの問題を正しく説明したサ イトが存在しません。 本稿は、1980年代に読んだ小室直樹氏の著作に書かれ た内容に沿ってお話します。
パレスチナ問題で1つ確実に言える事は、ユダヤ人が一方的に悪いと言う事 です。 今のパレスチナの地に住んでいたユダヤ人は、1000年も昔にオスマン トルコやローマ帝国によってその地を追われ、世界中に離散しました。 その 後、それらシオニスト(シオンの人々、ユダヤ人の意)は、約束の地に至れば その地の土地・財産・人命を全て奪って良いとのユダヤ教の教義に従って行動 します。
20世紀初頭、1900年代初めには、イスラエルなどと言う国は存在しませんで した。 それがユダヤ人の入植により、国土を徐々に拡大していきました。 何100年も住んでいた先住民であるアラブ民族の、土地・財産・人命は全て奪 われました。 そして転機となるのが第2次世界大戦後の1947年の国連決議で して、領土分割が強制的に行われ、それまで5.7%だったイスラエルの領土は、 50%にまで肥大しました。
この間、イギリスの三枚舌外交などがありましたが、結局多くのアラブ人が 先祖伝来の土地を追われ、その後もイスラエルは領土拡大を続けます。 ここ で疑問なのが、米英の西側諸国が何故イスラエルを支援するかです。 これは、 シオニストの言う約束の地が今のイスラエルの場所になるとは限らず、イギリ スやアメリカもその候補地だったからです。 約束の地は、どこでも良かった のです。
日本では報道されませんが、特にアメリカはユダヤ人問題で苦しんでいる国 として知られます。 著名なところでは、ロックフェラー、ロスチャイルドな どの大財閥もユダヤ系ですし、ユダヤ人差別は逆差別も含めて米国社会の大き な宿痾と化しています。 実際にアメリカは、米国内にイスラエルを建国され かけて、大慌てで今のイスラエルの地をあてがったと目されています。
これが、今のイスラエル・ハマス戦争で、米英が一方的にイスラエルに加担 する理由です。 どこをどうつついても、イスラエル・米英の正当性はありま せん。 今現在世界中で、イスラエルのガザ侵攻に抗議するデモが起きている のは当然の事と言えます。 200万人の一般人を短時間で移動するようパレス チナの人々に強要しているのですから、無茶ぶりと言うしかありません。 更 にこの間、空爆で7000人以上のパレスチナ人が虐殺されています。 対して、 イスラエルが実際に攻撃されたとか、人が死んだとかのエビデンスは、ネット にはほとんど見当たりません。 あるのは瓦礫の山と化したガザの画像です。
ある試算では、インボイス制度で徴収できる消費税額が約2500億円なのに対 して、税額計算のコストは4兆円に上るとされています。 インボイス制度を 設計した官僚は、この問題について考えていなかったようです。 この問題が、 インボイス制度が実施される直前の今になって、ようやく注目されています。 制度の歪みを押し付けられるのは、いつも我々納税者です。
イスラエルを構成するユダヤ人は、大戦時ヒットラーが主導するナチズムに よって200万人以上が虐殺されました。 いわゆるホロコーストです。 しか し、今イスラエルがガザ地区の人々にやっている事はこのホロコーストに他な りません。 イスラエルが移動を呼び掛けているガザ地区南部には、食料も水 も医薬品もエネルギーもありません。 何故自分たちがやられたホロコースト を、ユダヤ人はパレスチナの人々に仕掛けるのでしょう? 日本でもイジメを する人は、過去にイジメを受けた人たちであると言われます。 人間の持つ悲 しい性(サガ)を感じずにはいられません。なお、ハマスは一部の西側諸国が 報道するようなテロリストではありません。アラブ社会では国家に準ずる存在 として認められた組織です。
東京大学名誉教授・特任教授の加藤信介先生の「CFD千夜一夜」。 早くも6 年目に入りました。 アラビアンナイトの毎夜語られるお伽話のように、今後 も続きます。
今回のテーマはビューフォートの「風力階級」です。 これは実は、ISOで 定められている世界標準になっているのですが、知っていましたか? 先ずは 階級の名称である”breeze”の話に触れますが、「風力階級」の多くの名称に 使われています。 天井などに付くブリーズラインもこれです。
”breeze”と言うと、我々は僅かな風と言う感覚を持ちますが、世界標準で ある「風力階級」ではかなり強い風も”breeze”と呼ぶようです。 日本人と ガタイの良い西洋人とでは息の強さが違うので、それを反映していると思うの は私だけでしょうか?
本稿では風の強さをエネルギーで表していますが、ここは風圧で考えた方が わかり易いかも知れません。 例えば、10m/secの風速での風圧は、ρV**2/2 ですから、1.2×10.0**2/2で60Pa(パスカル)なります。 10Paが1mmAqに相 当し、10mmAqは1kgf/平米なので、10m/secの風は人に6kgf/平米の力を与えま す。 人が風に向かって歩くと、見つけ面積が約1平米なので、約6kgの力を受 ける事になります。 体重の軽い人はかなり歩きにくいでしょう。
ちなみに過去に宮崎県で発生した竜巻では、風速70m/secの風が起こったと 言われます。 この時の風圧が2940Pa(294kgf/平米)と言う凄まじい力になり ます。 電車は自重が20t位ありますが、横から見た見つけ面積が100平米以 上ありますから、余裕で吹っ飛ばされるでしょう。
BIMのエヴァンジェリスト、株式会社BIMプロセスイノベーション代表取締役 の伊藤久晴氏のコラム、日本BIM見聞録の今回のお題はISO規格です。
ISO(International Organization for Standardization)は、国際標準化 機構の規格であり、スイスのジュネーブに本部があるこの機構は、162もの標 準化団体によって構成されており、製造業や食品業だけではなく、医療や農業 などの分野にも展開しています。 日本の場合は、日本産業標準調査会が展 開している「Japanese Industrial Standards(JIS)」も有名ですが、ISOとは 別物です。
ISOは、品質マネジメントシステムに関する「ISO9000シリーズ」、環境ISOと 呼ばれる「ISO14000シリーズ」、食品業に関係する「ISO22000シリーズ」など 数多くの規格が存在します。 また、「ISO22000シリーズ」の中のHACCP(ハサ ップ、Hazard Analysis and Critical Control Point)は、設備系の方にとっ て必須の知識でしょう。
BIMのISOという事で、ISO19650と言う規格があります。日本ではBSIジャパ ンが、この規格の認証・講習・資格制度を行っています。 伊藤様のお話はこ れに沿ってのものになります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 来月から導入されるインボイス制度が話題になっています。 何が問題とな っているのでしょう? インボイスとは適格請求書の事で、これがないとその 商品なりサービスの仕入れ額から、消費税分が経費として控除されないと言う ものです。 経費化するためには、国が発行した適格事業者番号を請求書に記 述する必要があり、それがないと仕入れた企業は税金が増える事になります。
商品なりサービスの提供者は、消費税を控除出来ない分だけ値引きを迫られ るか、最悪取り引きを打ち切られます。 これが中小事業者に問題にされてい ます。 今まで年間売上げ1000万円以下の事業者は、消費税免税が認められて いましたが、インボイス登録をすると、消費税10%を収めなければならなくな ります。
この理屈だと、年間売上げ500万円の事業者なら、いきなり収入の中から50 万円を毎年払わなければならなくなり、これは仕事を畳まなければならない事 態を招きかねません。 恐ろしいのは、これは会社形態で事業を行っている者 だけではなく、個人にもそれが波及する事です。 あなたのご家族が個人で何 か仕事して稼いでいれば、それも当然課税対象という事です。 声優業界や会 計士・税理士の団体が、反対の声明を出しているのはそのためです。
消費税が「預かり金」だと言う意見や、免税事業者に対して「益税」だと言 う指摘がありますが、これは全くの的外れです。 消費税は他国で言う「付加 価値税」であり、消費者が払った消費税を一時的に預かっている訳ではありま せん。 これは過去の政府の国会答弁で、何度となく確認されています。 「益税」という言葉は、免税事業者である事に罪悪感を持たせるためのプロパ ガンダのようです。
何故財務省が消費税に拘るかと言うと、それは消費税が財務省(国)に直接 納められる税金だからです。 例えば所得税は各地方の税務署に納められ、地 方税は労働者の居住する自治体に納められます。 どこかしら他の機関に収め られた後、国に回ってくる税金です。 それに対し消費税だけは国税局に納め られ、直接財務省が扱います。 言わば真水で美味しいのです。
消費税が、国民の消費意欲を大きく減退させる存在である事は疑いようがあ りませんが、実は更に大きな問題があります。 実際にインボイス制度を適用 する際、プロジェクトあるいは案件毎に控除すべき消費税額を、仕入れたもの の情報から集計する必要があります。 その数は、弊社の場合、案件毎に10以 上に上ります。 これが複雑な工業製品の場合、その数はもっと膨れ上がるで しょう。 インボイス制度下で掛かる控除すべき消費税額の集計には、膨大な 手間が掛かる事になります。
ある試算では、インボイス制度で徴収できる消費税額が約2500億円なのに対 して、税額計算のコストは4兆円に上るとされています。 インボイス制度を 設計した官僚は、この問題について考えていなかったようです。 この問題が、 インボイス制度が実施される直前の今になって、ようやく注目されています。 制度の歪みを押し付けられるのは、いつも我々納税者です。
3年の間連載が続いた「建築環境解析の光と影」、今回がいよいよ最終回と なります。 豊富な知識と経験に基き建築CFD(計算流体力学)について、示 唆に富んだコラムを執筆頂いた森川先生には感謝しかありません。
大学のCFDと民間企業のCFDの違いは何か? 大学のCFDは、原理原則を見出 すのに価値があると思っています。 様々な状況で、現象を支配する自然界の 摂理を発見するのが、研究者の役割ではないでしょうか? だから大学なのに 事例研究に終始したり、商用ソフトの批判くらいしか出来ない人を見ると、一 体何をやっているのかなと思ってしまいます。
それに対して民間企業で行うCFDは、知見を見出すのが主たる役割になると 思っています。 想定した設計条件下で流れはどのような挙動を示すのか、場 合毎に検討して、製品や空間の価値を高めていき、付加価値を高めて利益を出 すのが企業と言うものでしょう。 森川先生の仰る「一般解」や「特殊解」の 話に、通じるものがあるかも知れません。
一方、CFDは総合力が重要と思っています。 CFDの帰趨を制する要因に、算 法(アルゴリズム)、離散化、収束判定、計算速度、可視化、結果処理、ユー ザーインターフェイス、経験などが挙げられます。 その全てがハイレベルで ないとCFDは出来ないかと言うとそうでもありません。 弊社は総てのシミュ レーションはPCで行っていますが、計算力に勝るスパコンで実行したものに内 容で負けているとは思っていません。 計算力で劣るなら、経験なり可視化なり、 いろいろな手段でカバーして付加価値を保てば良いのです。
近年建築業界では、陰解法(定常解法)とk-εモデルなどのRANS乱流モデル を使って、とにかく簡単に早く答えを出そうとするやり方が幅を効かせています。
嘆かわしい事です。 そのやり方で検討出来るのは、あまたある熱流体 現象の中のごく一部にしか過ぎません。 本当に設計に役立つCFDは、面倒く さい上に時間も手間も掛かるものです。 設計業務の片手間で出来るものでは ない事を知らないと、機械・自動車・電子業界などの、建築業界よりCFDに長け ている企業の前であらぬ事を言って、目を丸くされかねません。
前回は人類史上まれに見る超天才、ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)の話題をお送りしました。 今回はスパコン開発の巨人、セイモア ・クレイ(Seymour Roger Cray)についてお話します。
セイモア・クレイはスーパーコンピュータの父として皆さんもよくご存知か と思います。 では彼の何が凄いのか? フォン・ノイマンと同様、3つの大 きな業績があります。
先ず、ベクトル型スーパーコンピュータのアーキテクチャーを創造した事。 計算を高速に実行するために、スーパーコンピュータにはいくつもの仕掛けが 施されています。 パイプラインは、処理するデータ列を効率的に並び替え、 全体のスループットが格段に大きくなるようにセットします。 その際、各パ イプラインに加算・減算・桁送りなどのデジタル操作を行う演算器を複数持た せる工夫もして、パイプラインの性能をより高めています。 画期的なSIMD( Single Instruction, Multiple Data Flow)アーキテクチャーの誕生です。
第二に、このような高速演算をする際に、コンピュータには大きな発熱が起 きます。 その熱を取り去らないと、高価なハードウェアが焼損して動かなく なります。 この問題を解決するために、クレイは外側のフレームからCPUの ある場所まで水冷ヒートパイプを差し込み、効率的に抜熱する特許を考案しま した。 初代のCRAY-1はこのような特殊な機構を持ち、CPUの熱を極めて効率 的に冷やす事が出来ました。 その代わりCRAY-1は、購入すると大型の水冷ポ ンプがおまけで付いて来ると、揶揄されるようになりました。
三番目には、このCRAY-1を立ち上げる際、クレイは電源を入れたマシンに、 何も見ずに自らが直接機械語を打ち込み、ブートする事が出来たと言われます。 皆さんはご存知ないかと思いますが、米国はアセンブラ文化です。 日本人が プログラミング言語しか操れないのに対して、米国は機械語やアセンブラでプ ログラミングできる人が相当数います。 嘆かわしいですが、米国人と日本人 では、プログラミングの体力が根底的に異なるのです。 更にその中でもクレ イは別格です。 彼がフォン・ノイマン同様、超天才と呼ばれる所以です。
彼が作った初代CRAY-1に関しては、様々な逸話があります。 CRAY-1を置く 場所が建物の2階以上だった場合、重量が2tから3tありますから、まず床が抜 けないかどうか心配しないといけません。 もちろんエレベーターなんかに乗 るはずもなく(乗っても上がらないでしょう。)、建物の外壁を壊して外から クレーンで横持ちするのが普通です。 壁は後から塞ぐ事になりますが、何と もド派手な導入作業です。
一方で、丸い筐体にやはり丸くて大きい基部が接続した艶やかなデザインは、 「世界で最も高価なラブベンチ」と呼ばれました。 50億円のベンチはさすが に贅沢ですが、本当に愛をささやきあった人が居たかどうかは不明です。 阪 神・淡路大震災では、兵庫県の三菱電機研究所のCRAY-1が、地震の揺れで横っ 飛びに移動し、その後横倒しになったそうです。 2t以上のラブベンチを倒 すとはどんな振動だったのでしょう。 怪我をした人が居なかったのが幸いで す。
現在では京や富嶽など、スーパーコンピュータはベクトル型から並列クラス ター型に変遷し、建物そのものがスーパーコピュータになっています。 この 未来を、クレイは予想したでしょうか。
今年はクレイが亡くなって28年目です。 私はCRAY-1とその後継機CRAY X-MP を何年か使った事があります。 プリフェッチ用に、IBM3090-VFを装備すると 言う贅沢な仕様でした。 どこまでもお殿様なコンピュータです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ コンピュータゲームをやった事がありません。 20代の時から約50年、1日 平均8時間以上コンピュータに向かい続けていますが、その間コンピュータゲ ームをやったのは、通算で1時間もないでしょう。 正直言ってつまらない。 シューティングであろうがRPGであろうが、興味を持てないのだから仕方あり ません。 たまに電車に乗った時に、スマホでゲームをやっている人を多数見 掛けますが、あんなものに時間を費やしてるなんて、人生を凄く無駄にしてい る気がしています。
何故そう思うのか、考えた事があります。 恐らくは私がソフトウェアの 開発をやっているからでしょう。 WindPerfectは、プリ・ポストプロセッサ であるGenesysと、結果データを際限なく吐き出すSolverで成り立ちますが、 その両方とも30万行以上になるプログラムです。 それに新しい機能を追加し ようとすると、物理式を抽出・離散化してアルゴリズムを考案し、必要な数値 やパラメータを与えます。 そのためのGUIインターフェイスも作る必要があ ります。
入力データができたら、シミュレーション結果を何通りか計算し、グラフィ ックライブラリを駆使して数値群を分かりやすく可視化します。 可視化も何 通りかいろいろな方法を試さないと、解の本当の様相が分からない事がしばし ばです。 これらの作業では、使えるメモリ容量やグラフィックリソースの大 きさによって、推奨仕様のPCで動くように様々なチューニングが必要になる場 合があります。
上手く動作しない時は大変です。 物理式、アルゴリズム、入力した数値、 グラフィックのロジック、ハードウェアの制限など、どこの何が悪いのか壮絶 で長い犯人探しが始まります。 原因を推理し、何10万行ものコーディングの 中から当たりを付けて修正してデバッグを試みて、それでエラーが見つかれば 良し。 そうでなければまた原因推理からやり直しです。
1つのバグを解消するのに1ヶ月掛かる事などザラにあります。 犯人がた った1つのミスパンチだと分かった場合は、自分の愚かさを天に向かって嘆き ます。 プログラミングとは、自分がいかに間抜けで頭が悪いかを、日々あか らさまに目の前に突き付けられる作業です。 嫌でも精神のタフさが求められ ます。
かつてAppleのWWDC、MicrosoftのPDCなどのイベントに何回か参加した事が ありますが、参加する開発者たちはほとんどが男性で身体の大きな者ばかりで す。 今はどうか知りませんが、身体の小さい者や女性はほとんど居ませんで した。 単にプログラミングが人間に求める資質はそれほど高いのです。
お分かりになったでしょうか? Visual StudioのようなIDE(Integrated Development Environment)環境を用いたソフト開発は、それ自体が高度なコ ンピュータゲームのようなものです。 バグは1つではなく無数にあり、新し い機能を追加したり問題の大規模化に伴う配列の拡張をしたりした際のバグも あります。 答えがあるに決まっている市販のコンピュータゲームなど、面白 いと思う余地はありません。
以上の話は、実際の現象に適合した合理的なシミュレーション結果を得るの とは、また別のものとなります。 このようにWindPerfectのようなソフトを 作るプロセスを知ると、生成系AIでCFD(計算流体力学)をお手軽に代替する などと言うような大それた事は、当分起こり得ないと確信出来ます。 皆AIに 期待し過ぎ。 そもそもカオスを再現出来る生成系AIなど存在しないのですか ら。 それでもAIでCFD解析に取り組みたいと言う方はどうぞご自由に。 貴 重な人生と時間を無駄にされないよう祈っています。
好評の「CFD千夜一夜」、5年目となる第60夜をいよいよ迎えます。 東京大 学特任教授・名誉教授の加藤信介先生が繰り広げる建築CFD深堀話。 今回は 建築環境研究の主流を維持し続ける風環境評価について、お話を承ります。
「ビル風」は何故起こるのかから始まり、風が人間の生活にどう影響するか が語られます。 高い建物が建つ事によって上空風を地上に誘導して風が速く なる一方、建物の風下側では風が緩くなる現象が起こります。 配棟計画とは 風に関する知識なしでは意味を成しません。 < 【CFD千夜一夜 第60夜 「風環境の評価」】>
CFD(計算流体力学)を代表とする数値シミュレーションの発展は、多くの 先人たちの存在抜きでは語れません。 その先人の中でも、歴史に残る天才た ちがきら星のごとく光を放ちます。 ネット主体となった現代情報社会でもそ の価値が失われる事はありません。 Z世代と呼ばれる価値観の異なる若者達 が居るそうですが、それも関係ありません。 普遍的な価値を持つ天才たちは 厳然として存在します。 ここではそうした人たちを紹介していきましょう。
有史以来最も頭の良い人間とされるのが、ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)です。 ハンガリー出身のアメリカ合衆国の数学者である彼は、 IQ300を優に越える頭脳を持ち、「悪魔の頭脳」とも「火星人」とも言われま したが、主に3つの偉大な業績があるとされています。
ノイマンの業績として先ず挙げられるのが「プログラム内蔵型電子計算機」 の開発です。 それまでの電子計算機(コンピュータ)はいわゆるインタープ リター(Interpreter)式のものしかなく、計算ジョブは逐次読み込まれ解釈 されたプログラムと数値から、少しずつしか計算出来ませんでした。 それを ノイマンは、一挙にプログラムと数値を読み込み、高速で計算ジョブを実行す る方式を考案しました。 これはノイマン型コンピュータとも呼ばれ、現代で 稼働するほとんどの計算マシンは、この方法で動いています。
ノイマンは「CFDの始祖」でもあります。 主に兵器開発に関わるプロジェク トで高速の流れ問題を多く解き、爆発時の空気や液体などの流体の衝撃波発生 の予測で重要な研究をしています。 我々もよく使う人工粘性(Artificial Viscosity)の予測をするプログラムを開発し、それまで不安定であった流体計算 を安定して行う基礎を築きました。 彼は、アメリカ合衆国初のコンピュー タである「ENIAC」の開発にも従事しています。
第3の業績として、「セル・オートマトン」の考案が挙げられます。 セル ・オートマトン(Cellular Automaton)とは、格子状のセルと単純な規則によ る離散的計算モデルであり、数学、物理学、複雑適応系、微小構造モデリング などの研究で利用されています。 非常に単純化されたモデルであるにも関わら ず、生命現象、結晶成長、乱流生成といった複雑な自然現象を、驚くほど自然 に模擬出来るようになりました。
『自己増殖オートマトンの理論(Theory of Self Reproducing Automata)』と 言う書籍が彼の死後出版されましたが、ここに掲載されているDNA自己複製の 発見は、コンピュータウイルスの先駆けであるとされています。 超天才ノイマ ンの数々の業績と逸話は、Wikipediaにも掲載されています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 中古車販売・自動車修理大手のB社が、マスコミを賑わせています。 私は 以前B社に車検を頼んでいましたが、おかしな事がありました。 4年ほど前 の車検で、それまで普通に動いていた車が、車検から返って来た途端にエンジ ンが掛かりにくくなりました。
どうもバッテリー切れ寸前のようなのですが、車検前はそんな兆候はまるで なかったので、クレームを入れて修理を依頼しました。 ところが何日経って も直る気配がまるでありません。 とうとうシビレを切らして車を取り返し、 近くのガソリンスタンドまで何とか走らせて、バッテリー交換しました。 そ れ以来、バッテリーに関しては今日までノントラブルです。
いちいち調べていませんが、これが保険会社への不正請求の1つの手口だと したら、大変嘆かわしいです。 社長の辞任会見などありましたが、損保ジャ パンなど大手保険会社とズブズブの関係とか、店舗前道路の除草剤散布に加え て、保険契約捏造疑惑まで出てきました。 まさに底なしの伏魔殿の様相を呈 しています。
私は過去に大手鉄鋼メーカーと広告代理店大手の2つの大企業での勤務経験 が10年ずつくらいあります。 そこで見聞きした経験からですが、大手企業の やる事は信用出来ない場合があります。 東芝の粉飾決算や神戸製鋼の大量不 正検査などのように、大手企業には一定の割合で顧客の利益を考えない人達が います。 原子炉圧力容器の探傷検査をごまかすのを、目の前で見た事すらあ ります。
食品関係企業も同様です。 1パック1000mlの牛乳パックに900mlしか入れな い企業や、原発事故後に大規模水耕栽培工場をわざわざ同じ県内に建設する企 業が存在します。 私がスーパーで手に取る商品は、地場の中小企業のものが 多いです。 しょうゆ、みりん、油など、中小メーカーながら添加物の入って いない信用の出来そうなものを選びます。 中小企業なら弊社と同様に、良質 な製品とサービスを提供するモチべーションがまだあると思うからです。
そして、おもてなしや日本食くらいしか海外に自慢出来ない今の日本の状況 は異常です。 本来なら、IT開発力やスマホ・ドローンなど付加価値の高い製 品製造で我が国は外貨を稼ぐべきで、そのための若い人の育成や開発投資が必 要です。 日本製造業の衰退は、人材育成や投資を怠り、株価ゲームに終止す る企業による人災に他なりません。
今回の日本BIM見聞録は、落語のご隠居さんと熊さんの掛け合いみたいにな っています。 実際のBIMの調達がこうなっていたら困ると思うのですが、そ うなってしまっている企業は実は多いのではと思ってしまいます。 日本の ほとんどの企業が、技術者よりも遥かに少ないBIMソフトのインストール数な のを考えると、伊藤様のお話は笑い飛ばせません。
<ソルバー関連>
<グラフィック関連>
詳報はまた。 ご期待下さい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ いわゆる生成型AIの利用に関する議論が沸騰しています。 米国俳優組合でも 議論の対象になっていて、ストライキが敢行された結果、トム・クルーズの来日 まで中止になったのは報道の通り。 AIに対して、我々はどのように対処して行 けば良いのでしょうか。
将棋の藤井聡太七冠(竜王・名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖)が、次の ようなやり取りをメディアと交わしています。
記者:「AIとの共存期において、人間、あるいは棋士が持つ可能性についてどの ように考えているのでしょうか。」
当時17歳の青年は少考した後に言った。「今の時代においても将棋界の盤上の 物語は不変のもの。その価値を自分自身も伝えられたらと思います。」
これはAIに振り回される我々子羊への福音かも知れません。
生成型AIが、我々働く者から仕事を奪うとメディアが煽っていますが本当でし ょうか? 生成型AIは何が出来るのでしょう? 生成型AIのアルゴリズムは、畳 み込みニューラルネットワークと言われるものです。 これは分かりやすく言う と最小自乗法の化け物で、解が存在する空間を同定するものです。 ここで言う 空間とは位相空間の事で様々な変数の集合体です。
将棋で言えば、駒の状態が83通り(9×9+2)で駒の数が40個だから、おおよ そ(83!ー39!)の自乗が位相空間の基本的な大きさになります(!は階乗)。 それが時間の進行とともに変化するのを追い掛けるのは、計算力の高いコンピュ ータには難しくありません。 ただ将棋を人間が織り成す盤上の物語と考えると、 藤井聡太七冠の指摘するように、その価値は単なる空間同定の問題ではなくなっ てきます。 また、解の存在空間が同定出来ても、それを人間が解釈して利用出 来なくては宝の持ち腐れです。 実際に将棋を指すのは人間だからです。 AIは 盤上の真理を目指すのに興味はありませんから。
加えて我々のCFD(計算流体力学)はどうかと言うと扱う現象が非線形です。 そしてその実相は時間とともに常に変動しカオスです。 現代のAIの手法はあく までも線型の範囲を対象としており、非線形現象には適用出来ません。 一方、 非線形AIの実用化はいかに米国IT企業でも少なくともあと数年を要するでしょう。 CFDをAIで代替しようとする動きは日本の大手企業でもありますが、寝言に毛の 生えた程度の成果しか出ていません。 日本のIT開発力を考えるとこの状況は当 分続くと考えています。 日本のIT開発者・研究者は悲しいくらい薄給ですし、 日本の大手企業の開発に対するモチベーションは恐ろしいくらい低いからです。
話をまとめると、人間の知識とスキルと経験の融合には、まだまだAIは勝てま せん。 我々は、目の前の問題を一つ一つ丁寧にモデル化し、考えうる最も合理 的な条件を丁寧に課して解けば、AIに頼らずとも現象の真相に迫れるでしょう。 盤上ならぬコンピュータ上の人間ドラマも存在するのです。 将棋と同様に、解 が出てもそれを人間が解釈出来なくては宝の持ち腐れなのは言うまでもありませ ん。 そして、RANS乱流モデルだの陰解法だの、お手軽ですが間違った方法を 使えば、当然間違った解にたどり着くと言うのも忘れないで頂きたいです。
なお藤井聡太七冠は、弊社コンサルタント加藤信介先生(東京大学特任教授・ 名誉教授)と同じ愛知県瀬戸市效範(こうはん)小学校の出身です。 天才は天 才を呼ぶのでしょうか。 なお、東京大学入学者数は毎年3000人を越えるのに対 して、将棋の四段昇段者数は年間数人。(将棋は四段からがプロ) いかに将棋 界の門戸が狭いかが分かります。 囲碁のプロの人数は約450名、将棋のプロの 人数は約230名、将棋の方が何故人気が高いのかが分かります。
森川先生のコラム「建築環境解析の光と影」、今回は換気効率の話題です。
ご存知のように、換気効率指標は弊社コンサルタント加藤信介先生が考案され たものです。 初めて学会発表されてからしばらくなかなか広まりませんでし たが、近年注目される機会が増えています。 空間の淀みをこれほど適確に表 示できる指標はないのですから、むべなるかなと言えます。
ちなみにCK大学のK教授は今年既に退職しました。
WindPerfect最新版であるVersion6を近日リリース予定です。
ここでは先ず、入力に関する機能追加及び改善をご紹介します
・BIMデータとの連携を大幅に強化。
RVTダイレクトリンク、STL(Ascii、Binary)、DXFなど既に好評の定番BIMデータ インポート機能に加えて、FBX、3DM(Rhinoceros)、SKP(Sketchup)などの入力機能が 追加されます。 これにより、市中で流通するBIMデータのほとんどと連携が可能で す。
・CityGMLデータとの連携
国土交通省の提供する3次元地形情報データベース「PLATEAU(プラトー)」 <https://www.mlit.go.jp/plateau/> の全136箇所のOpenDataを、WindPerfectで取り扱う事が可能となりました。 弊社では、風関連シミュレーションの基本データとして、既に受託解析サー ビスでの利用が始まっています。 細部まで作り込まれた地形データを、迅 速にインポートする事で、今までより数段グレードアップされたシミュレー ションが現実のものとなります。
・3次元計測点群データ(LAS形式、iPhone取得データを含む)
3次元計測器やiPhoneで取得した点群データをWindPerfectで取り込み、そのままシ ミュレーションに利用出来るようになりました。 解析着手から結果を得るまでの ターンアラウンドが、飛躍的に短くなります。
他にもデジタルツインクラウドの積極利用など、WindPerfectの挑戦は更に続きます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 消費税が物議を醸しています。 中小企業経営者の立場として、消費税の事 をどう考えているか、お話ししてみたいと思います。
まず消費税について、大企業が何故反対しないのでしょうか。 この理由は 非常に単純です。 例えば、年間売上げ10億円の企業があったとしましょう。 今の消費税率だと、年間1億円が消費税だと考えられます。 ではその企業は 毎年1億円を税務署に払っているのかと言うと、それはノーです。
消費税は、徴収の際の手間賃なのでしょうか、実際に税務署に納めるのは1 億円のほぼ半額です。 残りの半額はと言えば、それは徴収した企業にとって 不労所得になります。 売上げの5%と言えば普通の製造業の税引き後利益に 相当する額です。 いくらなんでも、徴収の手間に5000万円も掛かる 訳ないじゃないですか。 でもそれが税法です。 美味しいです。 だから 消費増税に対して、大企業が反対するはずなどないのです。 他にも輸出企業 には消費税の戻し税があったり、新聞やテレビ局などは消費税の減免措置が あったりなど、消費税に関して大企業は優遇されています。
何故躍起になって国が消費税を取ろうとするかと言うと、消費税は国税庁へ の直接税だからです。 所得税・地方税(住民税)は、国民から一旦自治体が 徴集し、その中のある割合を国が受け取る間接課税になります。 社会保険も 年金事務所が徴収するもので、国の直接の収入にはなりません。 それが消費 税になると、国税局が直接の徴収管轄になり、全額が国のお金になります。 多分縄張り争いなのでしょうが、この徴収したお金が真水かそうでないかは、 官僚・役人にとって非常に重要な事のようです。
消費税は日本固有の税金です。 他国には消費税と言う制度はなく、その代 わりに付加価値税があります。 付加価値は言わば贅沢品に課税されるのです から、食料品など生活必需品に課税される事はありません。 日本の消費税は、 総ての流通品に等しく課税される非常に過酷な制度であり、他国の制度と大 きく異なります。 免税措置と言うのは、本来弱者を守るための制度であり、 強者のためのものでないのは言うまでもありません。
ここまでお話すると、インボイス制度がいかに歪んだ制度であるかが分かる のではないでしょうか。 世の中の大企業の大半が消費税で不労所得を得られ るのに、中小事業者は今までずっと享受して来た免税措置を何の説明もなく外 され、真水の消費税を現金で期日までに納めなければなりません。
インボイス制度下では、年間売上げ800万円の八百屋さんは、年間約40万円 の消費税を納める事になりますが、売上げと言うのは常に毎月一定額が入るも のではないので、目の前の仕入れ費用や生活費・電気代が払えない事態は普通 に起こりえます。 個人の声優やクリエーターが、インボイス制度に反対する のは当然です。 なお「益税」という言葉は、中小の免税事業者があたかもズ ルをしているように見せかける、国のプロパガンダでしょう。
調べて頂いて結構ですが、ここでは単に事実を書いているに過ぎません。 経営者ならみんな知っている事です。 大蔵省や財務省は金貸しの総元締めで す。 金貸しが作る国などロクでもないのはみんな分かっているはずなのに、 それが現実となっているのが今の日本です。 日本だけではなく諸外国も似た ような課税状況ですが、その中でも国民負担率が突出して高いのが日本です。 五公五民など、江戸時代かと言いたくなります。
そして次に日本で狙われるのは、サラリーマンの退職金の非課税枠を小さく する事だと言われています。 これを読んでいるあなたにも、増税の波は容赦 なく押し寄せます。 消費税や増税が国にとって必要なのかどうかは、機会 があればまたお話しましょう。
東京大学名誉教授加藤信介先生の今回のCFD千夜一夜、流体解析ではなく構 造解析のようなお話になっています。
換気は建物にとって非常に重要なのに、何故昔の建物は大きな窓が取れなかっ たのか、今回の加藤先生のコラムで合点がいきました。 満員電車での乗り降 りにCFDが役に立つとは、これも思っていませんでした。
BIMプロセスイノベーション伊藤様は、BSIジャパンの手掛けるBIMのISO認証、 ISO19650に精力的に携わっておられます。 BIMに限らずIT業界にもアルファ ベット3文字の用語は溢れかえっていて、日々我々を英語の迷宮に誘ってくれ ます。 略語は確かに便利ですが、技術屋同士で話をすると使う用語(Term) でお互いのレベルが分かったりします
よく使っていますが、「URL」「WWW」「HTTP」って何の略語か分かりますか?
< 日本BIM見聞録 第14回 「圧倒されるBIM関連の英略語とBIMオタク 」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ テニス全仏大会でのトラブルが話題になっています。 女子ダブルス3回 戦で加藤未唯(ザイマックス)選手とアルディラ・スーチャディ(インドネシ ア)ペアが失格となった問題です。 加藤選手がオフプレーになったボール を返球したら、それがボールガールの頭に当たってしまい、そのボールガール が泣き出したと言うものです。
私はこの動画を当日事件直後にネットで見た時に、人種差別だと思いました。 ヨーロッパ人のアジア人に対する人種差別です。 主審が加藤選手に警告を与 えたのは、これは当然の行為です。 しかしその後、対戦ペアのマリエ・ブズ コバ(チェコ)、サラ・ソリベストルモ(スペイン)組が主審に執拗な異議を 申し立て、判定が覆って失格になりました。 動画を見る限りでは、対戦ペア は加藤選手がボールを返球した事で何の不利益も被っていません。 主審が 何故対戦ペアの抗議を受け入れるのかが先ず不思議です。
ブズコバとソリベストルモの対戦ペアは、「わざとやった」とかの発言もし、 結果的に仏大会本部は加藤・スーチャディペアを失格とし、更に賞金とランキ ングポイントも没収しました。 対戦ペアは、それを見てほくそ笑んでいた事 が動画から確認できます。 フランス人の日本人差別は、上沼恵美子やGACKTが SNSで報告していますが、今回また差別の事実が公になりました。
その後加藤選手は、同大会の混合ダブルスでなんと優勝を果たしたのは報道 の通りで、日本テニス界は新しいヒロインを得る事が出来ました。 加藤選手 の優勝後のスピーチも素晴らしく、世界に感銘を与えました。 一方、対戦ペ アと大会ディレクターは自らの正当性を主張し、テニス界の多くの名選手や世 界から非難を浴びています。
私は大学時代は体育会でバレーボールをしており、途中からプレーに見切り を付け学生バレーボール連盟で活動しました。 毎週土日は、3部以下の試合 会場に行って、審判や事務作業等を行い、インカレ(学生選手権)の運営にも 携わりました。 4年次はかなり上の試合も笛を吹いたので、卒業の時には地 元のバレーボール協会が審判のライセンスをくれると言う話もありました。 審判の講習には何度となく参加しましたが、そこで最も注意を受けたのはユニ フォーミティ(均一性:Uniformity)です。 聞き慣れない言葉でしょうが、 判定に当たって常に同じ基準でプレーを見ると言う事です。
しかしながらミスをしない審判など居ません。 ここで大事なのはミスジャ ッジをした後です。 ミスジャッジで誤って反則を取ると、バツが悪くて次は その選手の反則を取らないようにするとかの、いわゆるバランスを取る判定を やってしまいがちです。 しかしそれは、審判として絶対にやってはいけない 行為です。 そんな事をすると、判定基準がグダグダに崩れてしまうからです。
今回の全仏大会では加藤選手が混合ダブルスに出場しましたが、女子ダブル スで失格になった以上、同大会の他の種目には出られないのが普通です。 大 会本部は加藤選手の混合ダブルス出場を認めましたが、これは加藤選手ペアを 失格させた事への負い目が大会本部にあったからでしょう。 しかし先に述べ たように、これはユニフォーミティの観点から絶対にやってはいけない事です。 大会本部は温情を与えたつもりでしょうが、結果的にこの事はテニス競技に対 する信頼を大きく損ねました。 当然今後のテニス人気にも影響するでしょう。
ユニフォーミティは会社生活にも重要です。 前職でかつて部下になってく れた人達や、今の会社で共に働く人達と接する時、自分の評価・査定はユ二 フォーミティに反していないか、常に自問自答する自分がいます。 これは外 国籍の方に対しても変わりません。 現IDAJの徐錦冑社長はかつての部下です が、お互い経営者になった今も交流があります。
東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜、開口のある空間の人の出入 りに言及します。 韓国梨泰院の圧死事故を想起させます。 人の密度が高す ぎると、回転も倒れ込みも効果がないでしょう。 むかし京成電車で通勤して いた時、電車の中で周りから押されて、身体が宙に浮いた状態に20分ほどなっ た事があります。 私の体重は、当時80kgほどあったのですが。
通勤時の満員電車は、新型コロナ流行の影響で以前より少なくなりました。 出退勤時刻の柔軟化と在宅ワークの増加が大きいと思います。 その中で、ノ ーマスクの人の増加には忸怩たる思いがあります。 マスクをしない自由はあ るかも知れませんが、マスクをせずウイルスを撒き散らす者を、近づけさせな い自由もあるのではと思います。 マスクをしない人は女性が多い気がしま す。 どんな美人でもウイルスまみれの息は吸いたくありませんが。
<CFD千夜一夜 第58夜 「開口の出入り 」>
森川先生のCFDコラム、今回は設計実務とCFD解析の隙間について語られます。
27年前のガレリア設計についてCFD解析を適用した際の状況は、まだCFDソフ トウェアの普及前という事もあり、結果を読み解いて設計の改善に繋げるには、 相当の苦労があったものと思われます。
しかしある程度CFDソフトウェアが使われるようになった現在が、当時より 進歩しているかは疑問です。 いくら速く解けようが、陰解法とRANS乱流モデ ルで出した答えなど、モノの役に立たない場合が多いからです。 また、シミ ュレーションを掛ければ、その案件の設計の良いところだけでなく悪いところ も分かりますが、改善するにはコストが掛かる事もあります。 都合の悪い結 果を許容しない人たちの存在は、CFD解析の価値を貶めている感があります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 来年3月22日、弊社は創業30周年を迎えます。 1994年以来、こなして来た 受託解析サービスの件数は、優に7000件を越えます。 年間200~300件の業務 をコンスタントに継続して来た事になります。 そして、その7000件をほとん どノークレームで過ごして来たのは、弊社及び弊社社員の誇りでもあります。
このような企業は日本どころか世界的にも珍しいと思います。 利益の面か ら言えば、ソフトウェアを売った方が絶対に儲かりますから。 何故工数の掛 かる受託解析にわざわざ注力するかと言えば、解析ニーズを先取り出来る点が 一つ。 それに、才能やモチベーションがあるかないか分からない方がソフト ウェアをわざわざ使うより、自分らでやった方が意味のある結果に早く確実に たどり着けるからです。 5年や10年のキャリアでは、どんなソフトでも多種 ・多様なシミュレーションに対応出来ないと言うのが我々の考えです。
将棋の藤井壮太6冠(2023年5月現在)が、「連続するタイトル戦で、防衛と 言う意識では、モチベーションを保てない。 スーパーシードからいきなり決 勝戦に出られると言う気持ちが重要だ。」と言う趣旨の事を話しています。 わずか20歳にして至言だと思います。 受託解析は、同じような仕事ばかりで 飽きないのだろうかと考える方も居るでしょうが、単純な形状、簡単な条件で も思ってもいない複雑な解や予想外挙動を経験する事があります。 そして それは、設計にとっても非常に重要な提案に結びつく知見である事がしばしば あります。 CFD(計算流体力学)の妙味に触れる貴重な瞬間です。
CFDなんて、ソフトウェアさえあれば、誰がやっても同じだと思う人が居る そうです。 でも残念ながら、ソフトウェアを操る人によって、出る答えが変 わるのがCFDです。 才能・スキル・知識・モチベーション・適用する技法に よって、解はその様相を変え、与える意味までも変容します。 陰解法やRANS ばかり使って、お手軽簡単に答えを得たい人には縁のない世界です。
600万円以上もする高いソフトウェアを有り難がる事に意味はありません。 どんなに高価なソフトウェアでも、使い方が悪ければとんでもない答えに行き 着きます。 CFDに関しては、製造業の施主様の方が何枚も上の場合があるの で、おかしな答えをプレゼンしないよう気を付けて欲しいものです。
弊社の受託解析サービスのお客様は、そのほとんどがリピーターです。 ネ ームバリューに目がくらんでいる企業が大半のこの業界で、毎日真摯に誠実に シミュレーションに取り組んで来た結果だと思っています。 生成型AIが幅を 利かすこの世の中でも、不変の価値をもつ仕事の1つだと考えています。
東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜、今回はコロナ禍を機に定着 したオンライン会議の話題から入ります。
エアロゾル感染予防に、空気清浄機が有効であると言う知見が何故か広まら ないのは不思議な気がずっとしています。 一説には生産能力の関係で需給が 逼迫するからだと言う話があるそうですが、1台数万円で確実に効果があるの だから、もっと普及するべきでしょう。
フィルター交換が気になるところですが、内蔵のHEPAフィルターは10年は保 つそうですから、先ずは使ってみるのが正解です。 最近コロナ感染率がじわ っと増えているのに、ノーマスクの人が4割まで増加したそうですから、自分と 自分の家族のために自衛しましょう。
<CFD千夜一夜 第56夜 「換気 」>
森川先生のコラム連載、あと数回で終了します。 今回提示された「風洞の 風と実際の風は何が違うのか?」は、今日的問題でもあります。
Mellor-Yamadaモデルの山田先生は、1990年代に開かれた湘南でのCWEカンフ ァレンスで展示ブースが隣になり、いろいろ話をさせて頂きました。 その後 食事もご一緒させて頂きましたが、山田先生のソフトは多数の企業が購入され たと言う事なので、ご存知の方も多い事と思います。
熱履歴については、地盤・建物とも日射が当たる外面から内部にかけて、熱 伝導解析で温度分布を評価する必要があります。 例えば、地盤は3mも掘れ ば全国一律15℃です。 建物も室内は空調されています。 日射面の数だけ評 価しなければなりませんから、これも膨大な計算量になります。 単に輻射解 析が出来たからと言って、日射解析が出来たとは言いません。 なんちゃって シミュレーションで間に合っている方はどうぞご自由に。
風の数値シミュレーションは、建築分野と気象分野では用語や扱いが異なり ます。 例えば対流項の名称は、建築分野ではConvectionですが、気象分野で はAdvectionと呼称します。 浮力と対流の関係を明確にするのが気象の流儀 です。 時間積分の差分法も、建築ではLES・DNSですが、気象ではLeapFrog法 です。 気象の研究者は賢明な事にRANS乱流モデルなど昔から相手にしません。
< 【 建築環境解析の光と影 第33回 「建築と大気乱流解析 」】>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 政府与党によると、日本の給与水準が低い理由は、中小企業が多いからだそ うです。 中小企業が全て統廃合されて大企業に吸収されれば、日本の給与水 準は諸外国並みに高くなるとか。 2つの超大企業にそれぞれ10年くらいの勤 務経験を持つ私の個人的意見では、過去30年も上がらなかった給与水準が、そ んな事で上がるとは到底思えません。
日本の大企業の致命的欠点は、継続性のなさとちゃらんぽらんなところです。 もちろん経営者の責任です。 余りにも利益重視と言うか、お金を儲けるため なら良心などかなぐり捨てて、今までの制度やら製品ラインを捨てて、利益追 求に邁進する。 その大企業の姿には不安を感じずには居られません。 これ は今の商法の問題ですが、株主に会社を支配する権限を与え過ぎている弊害と 言えます。
あのトヨタですら多くの場合、1つの車種を販売する期間はたかだか数年に 過ぎません。 あっと言う間に今まで売っていた車種が消える場合もあります。 朝令暮改が必ずしも悪いとは言いませんが、海外の自動車メーカーのように、 改良されながらも息長く続く製品ラインを何故多く持てないのか不思議です。 新しい製品ラインを作ると言う事は、それなりに設計の労力や組み立て方法の 開発、資材の調達まで含めて莫大なリソースを必要とするはずで、企業として の損失は少なくないはずです。
値上げラッシュの昨今ですが、エネルギー費の高騰やら円安やら、いろいろ と値上げの理由はあるでしょうが、原油の値上がりは2019年頃に比べて10数% にしか過ぎません。 それが何故30%もの値上げに繋がるのか、理解に苦しみ ます。 原油価格は変動するもので2020年には20%も下がりましたが、製品や 電力料金を値下げした企業はついぞ見当たりません。 今の大企業の値上げは、 屁理屈をつけて価格をとにかく釣り上げる事が目的化しているのは明らかです。
このような大企業の至らなさを補ってきたのが、我々中小企業です。 お客 様の抱えている問題に真摯に取り組み、誠実で細やかな対応でニーズを満たす 姿勢が私たちにはあります。 政府与党や大企業経営者が何を言おうが、我々 は我々の進むべき道を粛々と目指し、お客様の喜ぶ顔が見たいと思います。
東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜、連載から5年が経過しようと しており、楽しみにして頂いている読者も多いと聞きます。 今回も前回に引 き続き「勾配」の話題です。
ロケットと言えば、種子島でのJAXAの打ち上げ失敗が記憶に新しいです。 我が日本の技術が、北朝鮮に大きく見劣りすると言うのは嘆かわしいですが、 事実は事実として受け止めて捲土重来を期して欲しいものです。
大幅に熱遮断を実現するダイナミック・インシュレーションは、加藤先生が 言及されているように余り普及しているとは言えません。 私が以前に勤務し た鉄鋼メーカーも同様で、コークス炉や高炉(皆さんが溶鉱炉と呼ぶものです)、 転炉など莫大なエネルギーが、全国の製鉄所で無駄に浪費されている現状が あります。 高炉の巻き替えとか、数100億円掛かるのでそんな簡単な事では ないのは分かりますが、部分的にでも実現できないものでしょうか。 原単位 の大きな低減に繋がるはずです。
<CFD千夜一夜 第55夜 「勾配管理で熱制御 」>
森川先生の今回の話題は、CFD(計算流体力学)解析で未だ難しいとされる 日射解析についてです。 目の前で簡単にちょいちょいと計算出来るとされる ソフトの事ではありません。
困難なのは、形態係数の計算と熱履歴の評価でしょう。 計算モデル中で向 かい合う面の数の自乗の計算量が、輻射計算には必要です。 よほど工夫しな いと、精度と計算速度の両立はできません。 弊社が使用しているTP法はその ニーズを満たす方法で、数1000万グリッド規模の問題でも実用範囲内です。
熱履歴については、地盤・建物とも日射が当たる外面から内部にかけて、熱 伝導解析で温度分布を評価する必要があります。 例えば、地盤は3mも掘れ ば全国一律15℃です。 建物も室内は空調されています。 日射面の数だけ評 価しなければなりませんから、これも膨大な計算量になります。 単に輻射解 析が出来たからと言って、日射解析が出来たとは言いません。 なんちゃって シミュレーションで間に合っている方はどうぞご自由に。
「時期尚早」については私どもも同じような経験があります。 風荷重風圧 解析、結露解析、移動物体解析など、ここ3年くらいで引き合いが急増した感 があります。 シミュレーションが可能とは知らなかったとか、結果の使い方 が分からないとかいろいろ理由はあるようですが、確実に利用は増えています。
技術と言うものは、世の中に必要とされるタイミングがあるという事なので しょう。 天の時・地の利・人の和で「天地人」とも言います。 営々と開発 を続ける事の意義を感じます。 これも大企業ではなかなか出来ない事です。 日本の大企業では、技術者は10年もすれば異動してしまいますが、10年と言う のはCFDでは鼻垂れ小僧に過ぎません。
< 【 建築環境解析の光と影 第32回 「日射解析とその適用」】>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ChatGPT-4が話題です。 普通に平文で質問を書き込むと、それに対する回答 を周辺のデータから生成して適当に作ってくれるとか。 人工知能(AI)のレ ベルがとうとう実務に使えるくらいまでになり、それが我々が日常的に使って いるOffice365(旧Microsoftオフィス)に実装されると言う事のようです。
どこやらの業界で、企業が勝手がってにやっている閉鎖的なAI&ディープラ ーニングの開発に比べて、オープンだし信頼性が高そうです。 企業の管理職 の業務を9割方こなせるそうで、リストラにはもってこいのようです。 顧客 の査定とか勤務評定とか計画立案・情報収集など、個人の偏見が働かなくなる のも大きなメリットでしょう。 大企業や官公庁は、内部のための会議や根回 しが多過ぎますから、その解消にも繋がります。 と言う事は汚職や忖度も減 ると言う事ですね。
画像を見せると、その解説まで書いてくれると言うような事もやってくれる そうです。 ただ、AIのロジックの基本はまだ線形の畳み込みニューラルネッ トワークですから、非線形でありカオスである我らがCFD(計算流体力学)は、 ChatGPTが幅を利かすにはまだ数年掛かるでしょう。 でも、あと数年です。 我々も、社会からリストラされないように、付加価値を高めていかなければな りません。
テスラやツイッターの経営者で有名な米実業家イーロン・マスク氏らが、強 力なAIの開発停止を求める公開書簡を公表しました。 何でも6ヶ月間開発を 止めて、安全性とか社会への影響について検証しようと言っているらしいです が、こんなの誰か言う事を聞く人間がいるのでしょうか? テスラはトヨタな どからEVの開発を止めてくれと言われたら、素直に言うことを聞くでしょうか。
米マイクロソフト創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏は3日、ロイターの インタビューで、イーロン・マスク氏らの書簡は問題解決にはならないとの見 解を示しました。 世界中で開発を停止するのは難しいとし、リソースをAI開 発の最善の利用法に集中する方が得策だと言う事です。 GAFAM(Google,Apple, Facebook[現Meta],Amazon,Microsoft)の中で、マイクロソフトは相変わらず まとものようです。 ChatGPT-4のOpenAI社は元々マイクロソフト傘下ですが。
東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜、早いもので既に連載から5年 が経過しようとしています。 前回に引き続き「勾配」のお話をお届けします。
水勾配と言う言葉は、建築業界で仕事を始めてしばらくしてから聞きました。 私みたいな化学出身には馴染みのない言葉ですが、苦もなく飲み込めました。 もう暖かくなりましたが、この冬は屋根への積雪で家屋が潰された事件が多か ったようです。 積雪地方では、水勾配ではなく雪勾配と言うのでしょうか。
温度揺らぎによる熱エネルギー輸送とは面白い考え方です。 よく問題にな る空間内の温度成層が、そのような現象がきっかけで生成すると言うのは目か らウロコです。 その先の、壁面に沿って起こるドラフト(熱対流)はCFDの 問題ですが、それを利用した温度差換気のシミュレーションは非常に多いです。
<CFD千夜一夜 第55夜 「勾配輸送」>
森川先生のコラム、今回は湿度シミュレーションの話題です。 結露問題は 建築物のクレームでトップクラスに多いと知って驚きました。 弊社にも、た くさんの結露に関するお問い合わせがあります。 私どもの結露予測手法は単 純な露点判定ではなく、水分の凝縮を考慮に入れた精度の高い判定法です。 開発から20年以上経って、着実に多くの実績を積み重ねています。
< 【 建築環境解析の光と影 第31回 「湿度解析とその適用」】>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 最近の家の電気代の上昇に驚いています。 12月が36000円くらいでしてこ れは良いとして、1月の支払いが63000円。 これは高いなと思ったら、今月は 何と107000円もの請求が来て目が点です。 慌ててこまめに暖房を消していま す。 4月以降、更に電気料金が値上げされたら一体どうなるのでしょう。
電気と言えばEV(電気自動車)が話題になっています。 私は2000年代から 注目していますが、交通機関としてガソリン車よりも合理的な選択だと思いま す。 日本の自動車メーカーの人には怒られるかも知れませんが、うちのお客 様に自動車業界の人はあまり居ないので、まあ良しとしておきましょう。
最近どこをどう間違ってか、EVも火力発電の電気を食うから環境へのメリッ トがないと論陣を張る人が著名人にもいるようです。 しかし、これは誤りで す。 第一の理由として、火力発電の効率は90%以上です。 それに対してガ ソリン車の燃焼効率は、高速道路を一定速度でクルージングしていても、せい ぜい30%そこそこでしょう。 アクセルのオン・オフの激しい街乗りでは更に 効率は落ちるでしょうし、渋滞に入ったら目も当てられません。 EV車は、ガ ソリン車の1/3程度のエネルギーコストしか掛からないのです。
第二の理由として、ガソリン車は燃やしているのが高価なガソリンなのに対 して、火力発電は安価な重油を燃やします。 今現在のガソリン価格は175円/ Lくらいで、A重油は115円/Lくらいですから、EV車の優位性はますます大きく なります。 私は「MFゴースト(しげの秀一著)」が好きでよく読みますが、 ガソリン車愛と言うのはもはやノスタルジーでしかありません。 人類が地上 で使う移動手段として何がベストかについて、勝負はついてしまっています。 米国や欧州・中国など諸外国は、EV化にひたすら邁進し、新興のEV車メーカー も多く出ています。 日本のEV化と自動運転の普及遅れは目を覆うばかりです。
EVは内燃機関車に比べて部品点数が圧倒的に少なく、大量生産時に大きなコ ストダウンが期待できると言うのも、昔から言われている事です。 日本に あまたある部品メーカーを生き残らせるのが重要だと指摘する識者も居ますが、 コストばかり掛かって社会に貢献出来ない企業は退場するしかないのが歴史の 必然です。 過去10年ほど、日本の自動車業界は未曾有の好景気を謳歌してき ましたが、その中で我々国民の実質賃金は一向に上がらず、富の分配は結局成 されなかったと言うのも、これまた厳しい現実です。
私はと言えば、ここ20年近くドイツ車の中古に乗っています。 丹念に探せ ば程度の良い5年落ちくらいの車が200万円ほどで手に入ります。 ドイツ車 のハンドリングに慣れると、国産車に乗る気はなくなります。 機会があれば EV車に乗り換えたいところですが、コロナ禍以降、勤務がテレワーク主体にな って、週1回くらいしか出勤しません。 いつ免許を返納するか考える方が先 なのかも知れません。 皆さんはどう思われますか?
東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜、今回と次回、二夜に渡り「 勾配」の話をお届けします。 どのような話題が展開されるでしょうか。
「勾配」と言えば思い出すのが、中学生だかの頃に聞かされた寓話です。 いろいろな習い事は、重たいリヤカーをひいて坂道を登るようなものだと言う 事です。 坂道を登るためには常に全力でリヤカーを引っ張らなければなりま せん。 力を入れなければ坂道は登れず、坂の途中に止まるだけでも力を常に 入れている事が必要です。
力を緩めればリヤカーとともに徐々にずり落ちていきます。 恐ろしいのは、 時間が経てば経つほど落ちていく速度が上昇する事です。 努力と成果の関係 を端的に教えてくれる寓話で、不断の努力の大切さを教えてくれます。
<CFD千夜一夜 第54夜 「勾配」>
前回に続いて緑化の話になりますが、風の緩和ではなくて、その熱的な影響 について言及します。 芝生育成が差別化に直結する建設技術の1つだとは、 私も知りませんでした。 日韓ワールドカップの招致の頃に、芝生の上でプレ ーする選手の快適度をCFDで予測した事はありましたが。
屋上緑化や壁面緑化のシミュレーションに従事した経験を踏まえ、有効な建 築の提案には設計に対する総合的な視点が必要と訴えています。
< 建築環境解析の光と影 第30回 緑化解析(樹木&キャノピー解析その2)>
伊藤様が執筆されたRevitの教本は大変評判が良いですが、その執筆当時の 状況が今回は描かれています。 ”Autodesk Revit公式トレーニングガイド 第2版 上・下 単行本 - 2021/2/4 伊藤 久晴 (著), 石川 達也 (著), オートデスク株式会社 他”
大阪の天満のバーのママとの、「BIMとはなんぞや」のやり取りで、BIMの次 元数が語られます。 なんとBIMには10次元まであると言うのにはびっくりし ます。 問題はその考え方が、実務にどう役立つかでしょう。 3次元までの データを扱えれば良いCFD(計算流体力学)の仕事で良かったと安堵している 自分が居たりします。
<日本BIM見聞録 第13回 「BIMの次元」>
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最近将棋界で、マスク着用に関する事件が2つ起こりました。
<「鼻出しマスク」で反則負け 日浦八段、将棋名人戦・C級1組順位戦>
<佐藤天彦九段「整合性取れていない」 マスク反則負け不服却下>
思考力が売り物の一部のプロ将棋棋士の無思慮な行為には驚くばかりです。 私見ですが「反則負け」は当然の裁定と思います。 対局者をはじめ、周りの 迷惑も考えるべきではないでしょうか。 無知な不心得者のためにコロナに罹 るなどまっぴらです。 プロ高段者なら一般の人にも範を示すべきです。
コロナ飛沫核の移流拡散現象について、もう一度おさらいしてみましょう。 人体から排出された、コロナ飛沫を含む飛沫を含む咳ないし呼気(吐く息) の挙動は、次のようだと以前に述べています。
・呼気中には、発話状態・咳をしている状態以外でも、コロナウイルスを含む 飛沫が相当数含まれます。 飛沫とは人体を構成する水分・タンパク質・ホ コリ等の混合物で、もちろんコロナウイルスを多量に含みます。
・飛沫の直径は概ね数100ミクロンでが、空気中で乾燥して迅速に水分を失い、 コロナウイルスとタンパク質・ホコリの混合物 ーコロナ飛沫核ー となり ます。 コロナ飛沫核はおおよそ直径0.3ミクロン程度の大きさとされます。
・直径0.3ミクロン程度のコロナ飛沫核の空気中の沈降速度は約3mm/sec程度で、 わずかの気流でも空気中をほぼ無限に舞い続けて、どこまでも拡散して行き ます。 これを吸い込んだ人間は、コロナに罹る可能性が極めて高くなりま す。 いわゆるエアロゾル感染と呼ばれる現象です。
・咳及び呼気の温度は体温です。 夏場の空調温度は約26℃なので咳及び呼気 とは10℃以上の温度差が有り、当然の事ながら咳及び呼気には浮力が働きま す。 また人体周りには表面体温による熱上昇流が存在し、口や鼻から排出 されたコロナ飛沫核は、これに同伴して基本的に空間上方に拡散します。 換気は重要ですが、滞留したコロナ飛沫核をわざわざ撹拌する方式は、かえ って感染のリスクを高めます。 特に吸込み口の近くはリスクがあります。
・マスク着用は、自身の吐いたコロナ飛沫核を含む空気を他者に吸わせないた めのものです。 自分がコロナに罹らないようにするためのものではありま せん。 マスク未着用は、上方に移流拡散するはずの呼気を横方向に拡散す るのので、同じ室内に居る者を感染の危険にさらします。 室内でマスクを しないのは、その行為自体が犯罪と言っても過言ではありません。
口と鼻は繋がっていますので、鼻出しマスクはマスクをしていないのと同じ です。 あごマスクなど、ハナから意味などありません。 弊社は、マスク 未着用者の入室を、例外なくお断りしております。
コロナ感染での死者は4万人を越え、さらに増加中との報道がありました。 自分と家族を守るため、自分の身は自分で守りましょう。 消毒液を置かな い店も増えて来ましたが、みんな警戒心なさ過ぎです。 GoToも再開してい ますが、リスクは大きいままです。 旅行業と宿泊業だけが。何故こんなに 優遇されるのかも疑問です。
ネット情報ですが、国は屋内でのマスク未着用を認めるとの事です。 し かし一方で、コロナの罹患者や死者は非常に多数に上っています。 これは 五輪開催時頃のパンデミックに匹敵するのではないでしょうか。
一旦コロナに罹ったら、味覚・嗅覚を奪われたり、ものすごい身体のだる さが残るなどの後遺症が報告されています。 WHOは航空機内でのマスク着用 をまた推奨し始めました。 マスク警察だのの批判や、マスクは効果がない だのの世迷言には、耳を貸さないようにしたいものです。
本年から年賀状の郵便による送付について、これを取りやめております。 去る1月6日の仕事始め時に、メールで新年のご挨拶を申し上げました。 弊社宛てに年賀状をお送り頂いていた方には申し訳ありません。
なお弊社謹製卓上カレンダーは、好評につき残部がもうありません。
本年も相変わりませず、宜しくお願いいたします。
東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜、早いもので掲載開始から既 に5年目に入っています。 すっかり弊社ホームページの名物になりました。
熱伝導・対流・放射(輻射)の伝熱三態は、最初は中学で学び、次に大学受 験の時に学び、更には私のような伝熱工学を大学で専攻した者は講義・輪講や 卒論で叩き込まれます。 しかしこれが建設業界になると、伝熱工学を知って いる人がまずいません。 建築の設備系は、電気専攻か大学で建築設備を学ん だ技術者しかいません。 最初は驚きましたが、だからこそ弊社のような弱小 企業に仕事が来るのだとも言えます。 面倒くさい事を回避したり、施主様へ の説明に都合の良い結果しか受け入れないのでは、先が思いやられますが。
<CFD千夜一夜 第53夜 「伝わり方」>
キャノピー解析と言うと何だか格好良いもののように聞こえますが、建物な ど構造物を真面目に作らず、開口率と抵抗係数に置き換えてシミュレーション をする手法です。 お分かりのように解析精度はそれなりです。
更に私見ですが、現状の樹木のモデリングには問題があると思っています。 例えば葉っぱは風が強いほど風下にたなびきます。 当たり前の事ですが、こ れは低風速と高風速とでは、抵抗係数が大きく異なる事を意味します。 針葉 樹か落葉樹かとか、葉面密度とか気にする前に、これを何らかの方法で定量化 する必要があるのではないでしょうか。
<建築環境解析の光と影 第二十九回 樹木キャノピー解析 >
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AU(Autodesk University、ルイジアナ州)と、AUJ(Autodesk University
Japan、東京)が先ごろ開催されました。 その内容を調べたところ、ショッ
クな事が判明しました。 それは弊社の生業であるCFD(計算流体力学)関連の
講演がほとんど無かった事です。 AUJでインドの設計事務所が1件だけ発表し
ただけで、それも大した内容のものではありませんでした。
<AUJ詳細>
BIM黎明期から10数年が経ち、日本のBIMも発展期に差し掛かっているはずで すが、この皆さんのBIMによる熱流体解析への関心のなさは、一体どういう事 でしょう? 私はここで今まで思い違いをしている事に気が付きました。 そ れは、BIMの普及とCFDの普及は、ほとんど関係がないという事です。
昔はBIMが普及すれば3次元データの利用が盛んになるから、CFDの利用も当 然活況を呈するという風に想像していました。 そこで、弊社も様々なBIMデー タのインポート機能の実装に力を尽くし、それは実現されました。 最近では、 国交省PLATEAUの基本データであるCityGMLデータにも対応しています。 しか しBIMの普及が始まって10数年経っても、CFDの利用がはかばかしくないのは、 先のAU、AUJの状況から見て明らかです。 これはもはやBIMの業界標準となっ たRevitだけではなく、ArchiCAD、MicroStation、VectorWorksなど他のBIMソ フトのイベントにおいても同様です。 弊社だけでなく他社のCFDソフトでも、 やはり同じ傾向が見られます(但し、スポンサー講演は除く)。
結局、今まで普及して来たのは設計行為としてのBIMであって、シミュレー ション連携の事例は、一部の構造解析を除いてほとんど見当たりません。 近 年は弊社への解析業務の依頼が非常に増えており、事業に対する不安はありま せんが、BIMに対する過度な期待はしないと言うのが、これからの基本的な私 どもの方針にせざるを得ません。
CFDとして、複雑で大規模な問題への解析需要はますます増えつつあり、 シミュレーション技術の研鑽やソフトウェア開発も含めて、今後も真摯に地道 にCFDに取り組む所存です。 皆様のご指導・ご鞭撻を切にお願い致します。
どうか皆様、良いお年をお迎え下さい。
来年より年賀状の郵便による送付について、これを取りやめる事になりま した。 仕事始め時にメールで新年のご挨拶を申し上げます。 儀礼として 年賀状交換という習慣が衰退して来たと言う判断からです。 既に弊社宛て に年賀状をお送り頂いた方には申し訳ありません。
なお弊社謹製卓上カレンダーは、例年通り配布しております。 宜しくお願いいたします。
今回は、英語の名詞の話題から話は始まります。 英語の名詞も厄介です が、ドイツ語の名詞も扱いにくいです。 男性名詞、女性名詞、中性名詞が あって、冠詞が変化します。 想像で男性、女性、中性を判断してもなかな か当たりません。 これと全く意味不明の再帰動詞とで、学生時代のドイツ 語の学習は見事に沈没しました。 Navier-Stokes式の導出は、学部4回生の 時にやらされました。 難しいように思いますが、運動量収支を微小塊で取 ると割合簡単に導けます。 こちらはお陰で苦手意識を持たずに済みました。
<CFD千夜一夜 第52夜 「流儀の違い」>
㈱BIMプロセスイノベーションの伊藤久晴様は、英語習得に非常に熱心な方 ですが、その動機が今回は紹介されています。 伊藤様は中国語も堪能で、大 抵のコミュニケーションはご自分でこなされてしまいます。 私の場合はカミ さんが帰国子女なのでペラペラどころかネイティブに近く、それを見ていると 英語力向上などという無駄な努力はする気が起こらなくなりました。 但し、 普通に英語に触れる機会は増えたので、映画を見ていても、何となく聞き取れ る単語が増えたように思います。 世の中、何が幸いするか分かりません。
<日本BIM見聞録 第12回 「言葉の壁を越えよう」>
データセンター、サーバールームの熱気流解析は一時下火になりました。 数年前に、マイクロソフトの「de:code」と言うイベントに参加した時ですが、 Azure(マイクロソフトのクラウドサービス)のセッションで自社のデータセ ンター建設時のブレードサーバーの調達コストを紹介されました。 何と市中 価格の1/10近くで、いちいちシミュレーションで熱気流を最適化するよりも、 壊れたら交換すれば良いと言う考え方です。 この話を聞いてからつい最近ま で、データセンターの解析依頼は本当に皆無になりました。
しかしここ最近は様相が変わってきています。 コールドアイルキャッピン グ主体だった冷却方式が、ホットアイルキャッピングに変わって来ているから です。 無責任に熱気を空間にバラまくより、熱気をキャッピングを通して積 極的に回収した方が熱制御がやりやすいからです。 エアハンの動力削減にも 繋がります。 この目的のため、CFDで要求されるモデルの再現度は、以前と はレベルの違うものが要求されます。 またお話します。
<建築環境解析の光と影 第28回「データーセンター解析」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今はGAMMA(Google,Amazon,Meta[旧Facebook],Microsoft,Apple)と言うそ うですが、いわゆるGAFAのビジネスモデルは、サポートコストを省くだけのも のだったと言う事を以前言いました。 世界に冠たる米国IT企業が、大した付 加価値を築く事もなく、セコく儲け続けていたと言う事です。
そう言った状況に市場や一般市民が気付きだしたのか、上記GAFAは業績の不 振が伝えられています。 Google,Amazon,Metaの1万人を越すリストラが大き く報道され、AppleもiPhone14の販売が低調である事が伝えられています。 Twitterのリストラも当然でしょう。 あの仕事の質と量なら2700人でも多い くらいでしょう。 私がイーロン・マスクなら、1000人以下まで削減します。
iPhone13・iPhone14は、7年前のiPhone7と比べて何も進歩していないどころ か、退化していると以前報告しました。 指紋認証を信用していない私は、起 動時の側面スイッチを押してからの画面下端スワイプ操作がいつも上手く認識 されず、常に歯がゆい思いをしています。 買ったばかりなのに電池も全然保 ちません。 こんなスマホが20万円もするなんてボッタくりです。
唯一例外の企業はMicrosoftでして、弊社の開発環境であるVisualStudioの 提供を始め、良い仕事をしていると思います。 Microsoft365は、1人年間1 万円強でOfficeが全て使えてTeamsが使えて、OneDrive無制限まで付いてきま す。 Teamsがもう少し使い勝手が良くなったら、これもボッタくりのZoom( ビジネスユースだと5ライセンス縛り)は即座に解約するつもりです。
VisualStudioで、1億グリッドを越えるシミュレーションプログラムの開発 と実行が、PCで年10数万円で出来るのは非常に有難いです。デバッガも使いや すく、総ての変数を監視しながら、組んだロジックが正確かどうか確認出来る のは、一昔前なら考えられない事です。 便利な世の中になったものです。 スパコンなど必要性を全く感じません。
「Z世代」と言う言葉がある事を先日初めて知りました。 Wikipediaによる と、「幼少期から“デジタルデバイス(機器)やインターネット、SNS含むソ ーシャルメディアの存在を前提とした生活」に親しんだ世代だとか。 でも若 い人にも情弱は普通に居るし、それ以前に日本語が怪しい場合が多いので、若 い人が特にネットやITに詳しいとは思った事がありません。 最近の高齢者の、 ネットやスマホへの親しみ方も相当なものです。
巷では旧統一教会の問題が注目されていますが、今回のCFD千夜一夜は神な る権力者について触れます。 私も大学を卒業した頃とか、大企業を辞めて起 業したタイミングなどで宗教の勧誘に会いました。 ギャンブルが儲かるとか 信じていないのと同様に、宗教で何かが救われるなどハナから思っていない罰 当たりなので、事なきを得ました。 数値シミュレーションなどやっていると、 信じられるのは自分の見識と経験だけと言うのがよく分かります。
<CFD千夜一夜 第51夜 「権力者」>
今回は、階段加圧システムと、火災シミュレーション・避難シミュレーショ ンとの関連が述べられています。 火災の熱流はCFDで、人の避難行動はマルチ エージェントモデルで評価するそうです。
先日の韓国梨泰院での圧死事故が記憶に新しいですが、多数の人の動きは人 体を粉粒体に模擬する事でシミュレーション可能です。 弊社にまたテレビ局 から問い合わせがあり、専門外なのでお断りしましたが、あれはブリッジング と言う現象です。 粒(人)同士の摩擦力が原因で、流路が閉塞すると言うも ので、農場のサイロと言う穀物を貯蔵する施設でよく起こります。 シミュレ ーションの奥は深いです。 犠牲者のご冥福をお祈りします。
<建築環境解析の光と影 第27回「火災&排煙シミュレーション(その2)」>
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CityGMLをご存知でしょうか。 国交省都市局が所管するデジタルツイン
「PLATEAU」の建物・地形データです。
<https://www.mlit.go.jp/plateau/>
本年3月時点で全国53箇所の地点で整備され、その総てが国交省のホームペ
ージに掲載されています。 特に東京については、23区総てを網羅していま
す。 CityGMLはオープンデータであり、商業利用も無料とあります。
<https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/plateau>
ではこのCityGMLは、実際に役に立つのでしょうか? 答えはYesとも言え ますし、Noとも言えます。 CityGMLの建物・地形の再現性は驚くべきものが あります。 例えば、新宿副都心のデータを見てみると、駅を中心とした高 層街区が、小さな建物・大きな建物を含めて正確に再現されているのが分かり ます。
これを通常の地図情報データや、現地調査から作成しようとすると膨大な手 間が掛かります。 CityGMLを利用したら、今まで苦労して工数を掛けていた 風関連の解析モデル作成が楽になるのは明らかです。 CityGMLは役に立つか、 Yesと言えます。
一方で、飯田橋駅付近のCityGMLを見てみると、おかしな事に気づきます。 この地域でランドマークとなる主要な建物が、いくつかすっぽり抜け落ちてい るのが分かります。 東京ドームホテル、大和ハウス工業本社、ホテルメトロ ポリタンエドモント、東京仕事センターなどです。 こうした例は他の都心に 近い場所でも見受けられ、法務省や弁護士会館などの一角も、建物群がごっそ り向け落ちています。 現状のCityGMLの利用には、現地の確認が不可欠です。
最初は何かの偶発的なミスでデータが欠けているのかと考えましたが、そう ではないようです。 東京駅丸の内側の三菱村一角で、実際は低層の建物なの に、CityGMLでは高層ビルに化けてしまっているものが見られます。 これは 人為的なミスであるのは明らかです。 不思議な事に、小さな建物で欠けてし まっているものはほとんど見当たりません。
何故このような事が起こるのでしょう? ある識者に伺ったら、市販の地図 情報が売れなくなるから、国交省がそう言ったメーカーに遠慮して、わざと欠 損したデータを公開しているのではと言う意見がありました。 かなり説得力 がありますが、それなら鳴り物入りで、わざわざ国のホームページで公開する 必要はないはずです。 善処を期待したいものです。
風洞実験をやらなくても、建物や構造物にかかる風荷重・風圧を、数値シミ ュレーションで評価する事が出来ます。 本記事、ここから先は風洞屋さんは 読まれない方が良いかも知れません。
最近のPCやネットワークの発達で、規模の大きなシミュレーションでも容易 にこなす事が可能になってきました。 弊社では風解析でも空調換気解析でも、 1000万グリッドを越すシミュレーションは珍しくなくなりました。 昔は京や 富嶽でしか出来なかった数1000万グリッド級のシミュレーションも、時間さえ あれば普通に出来るようになりました。
その計算力が最も威力を発揮するのが、風荷重風圧シミュレーションです。 風圧シミュレーションでは、建物や構造物の隅角部から発生する強い負圧の渦 を再現するのが肝ですが、そのためには隅角部で十分な格子数を確保するのが 必須になります。 再現する渦の大きさは、格子解像度に依存するからです。 例えば1mの大きさの渦を再現したければ、大きくとも10cm程度の格子幅が必 要です。
数1000万グリッドの規模のシミュレーションが可能であれば、こうした事は 難しくありません。 格子幅は難しく考えず、均等に取ってもらえれば十分で す。 シミュレーションさえ出来ればしめたもので、荷重の時系列変化を可視 化してアニメーションにしたり、任意の部位の抗力・揚力・横力や転倒モーメ ントなどの数値をExcelに落とすのも容易です。
数値シミュレーションのメリットをいくつご紹介しておきます。 1つは迅 速でコストが安い事です。 数値シミュレーションは3Dデータさえあれば、も のの数10分で解析モデルを作成出来ます。 そこから結果を得るのに、1ケース 数時間も掛かりません。 費用は数10万円でしょうか。 これが実験・計測だ と、先ず模型を作るのに3Dプリンターを駆使しても、数週間から数ヶ月は掛か り、費用は300万円は掛かります。更に計測機器や撮影機器の手配などで、時 間と費用が掛かります。
2つ目のメリットは、相似則を気にせずに済む事です。 例えば熱を伴う風 の風洞実験をしようとすれば、Re(レイノルズ)数・Fr(フルード)数・Nu (ヌッセルト)数・Pr(プラントル)数を合わせる必要がありますが、これは 至難の業と言うか、まず不可能です。 ほとんどの実験・計測は相似条件が崩 れており、扱いはよほど注意しないといけません。 数値シミュレーションは、 基本実寸であり、実際の物性値を使うので相似則を自動的に満たせます。
3つ目ですが、これが最大のメリットかも知れませんが、結果を3次元で取得 できて可視化が容易な事です。 実験・計測では観測は数10点、多くても数100 点のデータが取れれば御の字です。 しかしこの点数では3次元の分かりやすい 可視化は無理です。 数値シミュレーションなら、結果を可視化ソフトで読み 込むだけで、誰にでも分かる可視化がその場で出来ます。
もう1つトドメを刺す事になってしまいますが、実験・計測は相当の慣れと スキルが必要です。 論文などに載っている結果は、相応の経験とスキルを持 った方が、1年以上の苦闘の結果得られたものだったりします。 ただ数値シ ミュレーションなら何でも良いと言うものではありません。 陰解法やRANS乱 流モデルを使った、計算が速いだけのシミュレーションは、おかしな答えを出 すので害があるだけです。
皆さんも数値シミュレーションの豊穣な世界で、有意の結果に触れてみませ んか? 私どもはその水先案内人になる事をいといません。
早いもので、世間を賑わせた北新地の火災事件から、あと2ヶ月足らずで1年 になります。 世間では相も変わらず火災事故があちこちで起きていて、火災 の様相も世相とともに変化しています。 たまたま火災シミュレーションの依 頼が今3件来ていますが、これは何かの偶然でしょうか?
<建築環境解析の光と影 第25回「火災&排煙シミュレーション(その1)>
BIMプロセスイノベーションの伊藤さんにとって、BIMの聖地は英国だそう です。 女王崩御後、首相が早期退陣したり減税政策を全面撤回したりと迷 走が続いていますが、BIMの組織論は堅固に保っているようです。 個人的 には玄奘三蔵と言うと、夏目雅子を思い出してしまいますが。
<日本BIM見聞録 第11回「BIMの経典を求めて>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 使っていたiPhoneを、6月に7plusから13ProMaxに機種変しました。 さすが に電池が保たなくなって来たからですが、これが最悪の選択でした。 機種変 に18万円ほど掛かりましたが、これは事前に分かっていたので仕方ないでしょ う。 その直後にiPhoneが値上りし、20万円以上になったのは驚きました。
最新の13ProMax(今の最新は14ProMax)と比べて、前に使っていた7plusの 販売開始は、7年の隔たりがあります。 しかしいざ13ProMaxを使ってみると、 まず感じたのは「重い」「分厚い」「画面が狭い」の三重苦です。 私は常時 胸ポケットに入れていますが、重くて肩が凝りそうです。
しかし13ProMaxの欠点はこれに留まりません。 使おうとすると、「右ボタ ンを押す」「画面下の横長のシンボルを上にスワイプ」「6桁のパスコードを 入力」「画面下の横長のシンボルを上にスワイプ」「画面上のアイコンを選択」 の5動作が必要になります。 これが7plusの場合は、「画面下のボタンを押す」 「4桁のパスコードを入力」、「画面上のアイコンを選択」の3動作で済みます。 ハードウェア的にボタンがあるので、画面を見なくても操作出来ます。
パスコードを4桁にする方法は家内に教えてもらいましたが、使う時に毎回 これではたまったものではありません。 私は指紋認証とか顔認証とか信用し ていないのでそこは悪しからず。 あと、どうでも良い事をいちいち通知して 来るし、余計な動作を勝手にやってくれる点はWindows11の比ではありません。
腹立たしいのは、例えばYouTubeとか見ている時に、画面のどこかを誤って 少しでも触れようものなら、全く見たくもないあさってのコンテンツに飛んで 行ってしまう事です。 それを今まで見ていたコンテンツに戻そうと思っても、 その方法がまた分からない。 開発者は一体何を考えているのやら。
肝心の機種変理由の電池の保ちも、13ProMaxは恐ろしく電池の減りが速い事 が分かりました。 朝に充電満タンにしたのに、昼頃には半分以下になってい る事も珍しくありません。 実はauのお引越しソフトで住所録などのデータを 移行して気が付いたのですが、同じWi-Fiに繋がっている限り、7plusは電話が 出来ないだけで他のほとんど総ての機能はそのまま使う事が出来ます。 料金 も掛かりません。 今は外出時は13ProMaxで、在宅時は7plusを使っています。
13ProMaxはライダー機能以外は、何一つ良いところがない。 7plus用に安 いSIMカードでも買おうか検討中です。 結局Appleは、7年も掛けて進化どこ ろか退化していた事になります。 いわゆるGAFAのビジネスモデルは、サポー トコストを省くだけのものだと言うのは以前言いましたが、何故こんないい加 減な企業群に日本勢が負けるのか、私は不思議でなりません。 iPhoneを最新 機種に変更されようとしている方は、十分ご注意下さい。
第50回を迎えた加藤信介先生のCFD千夜一夜。 最新の建築業界のトレンド であるデジタルツインに迫ります。 デジタルツインのデータ取得の信頼性 について、それがどのように担保されているのか疑義を提示されています。 先日あった3次元計測フォーラムでの講演で私も言及しましたが、BIMデータや 点群データにしたところでその方位や基準高さは曖昧であり、多くの設計事故 に繋がっている現状があります。 デジタルツインの行く末を、しっかり見届 ける必要があります。
<CFD千夜一夜 第五十夜 「デジタルツイン」>
今回は、建築空間での知的生産性について議論が展開されます。 心理学的 に居住者の欲求を引き出す手法と、そのVRによる可視化が大きな意味を持つよ うです。 働く者のモチベーションの維持に向けて、なすべきアプローチはま だまだ多いようです。
<建築環境解析の光と影 第25回「~VR技術の展開(その3)~>
シーラカンスの小嶋一浩先生が亡くなられて、早いものでもう5年ほど経ち ます。 流れによる建築空間でのイベントの創出と言う概念は、小嶋先生に初 めて教えて頂きました。 一流の意匠デザイナーは、場で起こる流れと言うも のにここまで感受性豊かなのだと痛感させられました。 今の売上げと利益重 視の建築デザインの現状をご覧になったら、嘆かれるのかも知れません。
<日本BIM見聞録 第10回「小さな矢印の群れ~Fluid Direction 」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 先月スマホを買い換えました。 7plusから13ProMaxです。 私は旧iPod からiPhone3に移り、5を経て、7plusに機種変して7年目に今回の購入です。 どうにも電池の持ちが悪くなって、苦渋の乗り換えでした。
13ProMaxは20万円近くしました。 で、値上げがついこの間あり、今では 22万円くらいするようです。 本国のAppleは値上げしていないのに。 ここ でも、円安で日本人が貧しくなっているのを感じます。 じゃあセカンドス マホはAndroidにしようとしてネットで値段を見たら、何とiPhoneとさほど 変わらない。 こりゃあ便乗値上げでしょう。 お偉方。
新しいiPhoneの感想ですが、7年でほとんど何の進化もないのに驚いてい ます。 使い勝手なら7plusの方が全然上です。 13ProMaxはホームボタン がないのに加え、余計なインターフェイスが多すぎ。 カメラが良くなって いるとか、5Gだとかの恩恵は感じられません。 データ移行の時に気づきま したが、同じWi-Fi環境下では、古い7plusは電話以外はほとんどの機能が使 えます。 家の中では7plusをメインに使っていてかなり便利です。
GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)ですが、以前も言ったと思いますが 大した事ありません。 いずれの企業も、クレームや何か聞きたい事があった りした時の問い合わせ窓口が見つからない。 無い訳ではないが、我々でもよ ほど注意して探さないと分かりません。 要はGAFAと言うのは、そうやってサ ポート業務の負荷を減らして、利益を上げるだけの企業です。
それだけセコく稼いでいながら、Amazonは先のQuarterで大赤字を出していま した。 何をやってるんだか。 つい先日、MicrosoftとGoogleが、日本で会社 登記を初めてしたそうです。 少しは心を入れ替えるのでしょうか? 日本 も、三菱電機や日立・東芝の不正を見ていると同じようなものかも知れません。
コロナ第7波のようです。 感染者数がかつてなく増えているのに、行動制 限はありません。 自衛しか自分と家族を守る術はないようです。 どうかご 注意を。 水分補給しながら頑張りましょう。
弊社ホームページの名物となりつつある加藤信介先生のCFD千夜一夜。 難 しい文章なのにページビューで上位です。 今回は、電話のお話です。 東京 都千代田区岩本町と言うのは、加藤先生の事務所と弊社のある住所です。 金物通りとか紺屋町とかあるように、昔ながらの職人の街です。
<CFD千夜一夜 第四十八夜 「広がり」>
VR部隊と設計BIM部隊共同でのBIM―VR連携システムの開発が述べられます。 研究ツールなのか、デモ・プレゼンテーションツールなのか。 先駆者ならで はの葛藤が続きます。
<建築環境解析の光と影 第23回「~VR技術の展開(その1)~>
iPad mini6が好き過ぎる。 今回はウィジェットとペンやマウスなどのアク セサリー類の紹介です。 何故iPad mini6が好きかは諸説あるようです。
日本では、操作性の問題や耐久性の問題から、現場でパソコンを使いにくい ので、iPadなどのタブレットが現場でも使われています。 従って、タブレッ トの有効活用が、施工BIMの鍵になるのではないかと言う提言です。
<日本BIM見聞録 第9回「iPad mini6が好き過ぎる その1」>
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またテレビ放映に出演しました。 読売テレビ「かんさい情報ネットten.」
からインタビューを受けました。 これは6月21日、消防庁が昨年12月に発生
した大阪北新地火災事件の報告書公開を受けてのものです。 報告書の可視化
が分かりにくいのはFDS(Fire Dynamic Simulator)で解析されたからです。
<大阪北新地火災事件の報告書>
インタビュー内容等は、同日夕方、ニュースで放映されました。 番組では、 開いた窓からの新鮮外気の導入による、換気の重要さを強調しました。 消防 庁のシミュレーションは、弊社の結果とほぼ同様です。
消防庁のシミュレーションは、
火災時の建物内の3次元煙流動シミュレーションは火災検討に非常に有用で、 欧米では既にISO化されて多くの実績があります。 しかしながら日本は1994 年以来、二層ゾーンモデルによる簡易なシミュレーションのみが法令化され、 どんな複雑で大きな建物でも、3次元煙流動シミュレーションが利用される事 はありません。 理由はバカバカしすぎて言及する気になりません。
またかと思われるかも知れませんがコロナの話です。 映画を見に劇場に行 くと、必ず上映前に換気の宣伝を見せられます。 曰く「十分換気しているか ら安全です。」曰く「劇場内の空気は清浄器できれいにしています。」。 ど ちらもコロナ飛沫核に対して、安全である事を担保するものではありません。
法令上の換気回数を満たすのは必要条件に過ぎず、十分条件ではありません。 例え一般のオフィス並みの4回/時の換気回数があったところで、淀み点や吸込 み口付近に居る人に対しては、効果が余りありません。 コロナ飛沫核とCO2 は全く挙動が異なるので、CO2濃度などリアルタイムで測定しても、コロナ飛 沫核の拡散予測には役に立ちません。
映画館は天井吹き出しで、吸込みが前方のステージの下端にある場合が多い ので、空間内で人が吐いた呼気は総て吸込み口付近に集まります。 私は映画 を鑑賞する際、ステージや腰壁のルーバーに近い所は絶対に避けます。 場内 の全員が吐き出した呼気を、わざわざ吸い込む趣味はありません。
火災でもコロナ飛沫核拡散でも、3次元熱流体解析は非常に有用なのに、そ れが利用される事が少ないのは嘆かわしいと感じます。 現在の建築設計の問 題点として改善すべき事のように思います。
急激に暑くなっています。 皆さんも水分補給など十分気を付けて下さい。
「PLATEAU」、ライダー計測、点群データ、BIMなどの最新の建築3Dデータの 状況と利用法を共有することを目指すフォーラムが、来る7月4日(月)都内大 田区産業プラザで開催されます。 リアルとオンラインの並行開催です。 弊社も登壇します。 ご関心のある方は是非ご参加をお願い致します。
東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜。 今回も凄い情報量です。 今回のテーマは、参院選の争点の1つでもある「憲法」。 最後の方、日本 国憲法前文の一部を、流体シミュレーション用に書き換えたのは必読です。
<CFD千夜一夜 第四十七夜 「憲法」>
森川先生のVRの博識は刮目すべきものがあります。 今回は可視化情報を キーにしてVRが語られます。 いかに見えないものを見えるようにするか、 新たな価値をどう発見するか。 ともに現在は存在しないCFD解析による建築 性能の可視化と、計画される「建築デザイン」を、前者を「サイエンス」と 呼び、後者を「アート」と呼ぶのは秀逸です。
<建築環境解析の光と影 第22回「~建築とVR~」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 庵野秀明総監修、樋口真嗣監督による空想特撮映画「シン・ウルトラマン」 が5月13日から上映されています。 初日を含む3日間の興行収入が「シン・ゴ ジラ」を越える約10億円のスマッシュヒットを記録しています。 「シン」の 意味は明かされていませんが、「新」「真」「Thin」といろいろ解釈が考えら れるなか、私は「深」だと思っています。
現代の特撮技術を駆使して、初代「ウルトラマン」をリブートした本作品で すが、ただただ本物ぽく見えるだけのハリウッドのCG技術の逆手を取り、往年 の円谷作品の特撮に見せるための手法を取り入れています。 ですので敢えて 禍威獣(怪獣)も、往時の着ぐるみを思い出させるCGになっています。 ウル トラマン自体の造形もスーツのしわまで見えそうですが、これはCGなのだと気 が付くと、よくやるなとしか思えません。
撮影現場にiPhoneを10数台用意し、俳優達がそれを持ってお互いを撮影する とか、複数のカメラでシーンを最初から最後まで、セリフを噛んでも長回しで 撮るとか、今までにないユニークな映画作りも話題になっています。 樋口監 督が、「俺も撮るから、誰かカット出して!」と叫ぶ状況も度々あったようで す。 「シン・ゴジラ」と「シン・ウルトラマン」の両方に出演した斎藤工は、 両作品とも新しい実写撮影技術の実験場だったと評しているようです。
「何故ウルトラマンは地球にやって来たのか」、「何故ウルトラマンは禍威 獣から人類を守るのか」と言う根源的なテーマにも回答を与えるこの作品、主 題歌の米津玄師「М八七」も秀逸です。 エンドロールにこの曲が被さって来 た時は衝撃でした。「痛みを知るただ一人であれ」と言う歌詞は、現代と言う 時代に向き合う人間の姿勢として、重要な意味を持つように思います。
伏線が多いのが庵野・樋口作品の特徴で、マーベルやDCのヒーローものが単 調でのっぺりしたものに見えてしまいます。 「エンドゲーム」など1回見れ ばもうたくさんですが、「シン・ゴジラ」は伏線回収を含め劇場で26回も見て しまいました。 「シン・ウルトラマン」も、まだまだ何回も見ないといけな いようです。 予告編で見た来年上映の「シン・仮面ライダー」にも期待して しまいますが、私の本音としては「シン・ガメラ」が見たいです。
津波安全を企図し、基本設計から3次元データを用いて津波シミュレーショ ンによる検討を行った案件です。 避難ビルの配置や意匠、避難先の空地の面 積・高さも、震源からの津波の波高・速度を踏まえて浸水状況を詳細に予測し ました。 与えた津波の波高などは、都の予測データを使っています。
寄港する船舶が、津波発生時から沖合に避難する時間がない事が懸念された ため、最新の手法により、浮遊する船舶が津波の波力によって護岸に衝突しな いかどうかの検討も行っています。 総て3次元CADデータを使い、当時として は珍しいBIMによる検証を適用した案件と言えます。
ちなみにこの作品、残念なことに、主担当だったBCP室元室長の故松下督氏 のクレジットがありません。 日本建築学会が、建築選集応募に故人を認めな いと言うのはいかがなものでしょうか。 設計者をもっとリスペクトするべき ではと思います。
<大島岡田港避難施設 津波シミュレーション>
森川泰成先生の「建築環境解析の光と影」、かつて葛西での建設を想定した プロジェクトの話になります。 大空間の中で、夏の環境と冬の環境を、本当 に同時に作り出せるのか?
私の結論は、エアカーテンなどに空間の分離能力などないと言う事です。 吹き出し気流は、どのような設定をしても空間内をただ撹拌するだけであり、 温度や清浄度の差のある環境など作り出せはしません。 清掃工場などのシミ ュレーションでも経験しましたが、防虫効果がある程度です。 本プロジェク ト、建設が立ち消えなくても失敗に終わっていたでしょう。
<建築環境解析の光と影 第21回「~幻の大空間とVR~>
(株)BIMプロセスイノベーションの伊藤久晴氏が紡ぎ出す「日本BIM見聞録」。 今回の出だしは緩いですが、語られる内容は真摯です。 曰く、一方で「BIM の時代になって、線一本、文字ひとつ書けない設計者が出てきて」としつつ、 曰く「これからのBIMの時代には、(図面ではなく)BIMモデルに魂をこめまし ょう」と語られます。
CFD(計算流体力学)でも同様の状況かあります。 「おいしゅうなれ、お いしゅうなれ」と気持ちを込めてシミュレーションしても、解が発散する事が あります。 しかしそれも1つの結果なのであり、実態としておかしな現象に ならないよう、そのモデルや条件を変えていく事がCFDでは重要です。
陰解法やRANS乱流モデルを使ったり、解析モデルを端折ると、確かに計算は早 くなります。 しかし多くの場合、現象の本質を見落としてしまい、設計に不備 を引き起こします。 CFDをお手軽に済ませようと言うのが、そもそも大きな間 違いで不遜なのです。 何が本当に大切なのかよく考えて、なんちゃってシミュ レーションからの脱却を図って欲しいものです。
<日本BIM見聞録 第8回「魂を込めるということ」>
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新型コロナの感染者がまた下げ止まりあるいは増加を始めています。 原因はいろいろ言われていますが、端的に言えば我々の警戒心の希薄化が主たるもののように私には思えます。 朝電車に乗ればラッシュアワーだし、休日繁華街に買い物に出れば尋常でない人の波に出会います。 私の家の近くのドンキホーテでは、とうとう入口に消毒液を置かなくなりました。
蔓延防止は解除されましたが、感染の波は衰えを見せていません。 つい先日会合をした相手の方は、その前日まで濃厚接触者として隔離対象でしたし、弊社はそう言う相手先がいくつもあったりします。 集団免疫を獲得しているから良いんだ、と言う人もいますが、新型コロナによる月間の死者は増えていす。 オミクロン株の毒性が薄いと言うのはウソだった訳です。
一昨年の始めから外出時にマスクをしだして、私は風邪をひかなくなりました。 それまでは決まってひと冬に最低でも2回くらい大風邪をひいていたのですが。 着用は面倒ですが、マスクの威力は絶大です。 私は外出時には、服のポケットごとに新品のマスクを入れています。
このメールマガジンでも何回か取り上げていますが、マスクは呼気(吐き出す息)に含まれるエアロゾル(飛沫核)の拡散を防ぎ、他人にウイルスを移さないようにする効果があります。 二次的なものとして、空気中のウイルスを取り込まないようにする効果もありますが、こちらの効能は大した事がないと言われています。 それでも無いよりは遥かにマシなようです。
しかし、鼻マスクの人は相変わらず居ますし、バイザーや、上部が開いた透明のマスクを着用する人も居ます。 こうした人達はマスクをしていないのも同然で、保菌しているウイルスを、呼気を通して際限なく外に吐き出しているので、非常に危険と言えます。 少なくともこうした方は、弊社事務所への入室は固くお断りするでしょう。 コロナ警察と言われようが、従業員の健康と安全が第一です。
新型コロナ蔓延が始まってから2年。 建物に関して「換気しなさい」と言うガイドラインは出ましたが、根本的な対策は打ち出されていませんし、換気シミュレーションに真面目に取り組む企業が建築業界で余り多くないのには、忸怩たる思いがあります。 政治的・営業的な思惑はあるでしょうが、建物と言うのは多くの人が出入りし利用する、公共性の高いものである事を忘れてはならないでしょう。
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◇弊社プロモーションビデオご紹介
◇CFD千夜一夜 第四十六夜 「愚者」
◇建築環境解析の光と影
第20回「~アトリウム・大空間解析 その3~」
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【弊社プロモーションビデオご紹介】
新型コロナ後の弊社の方針として、大規模な集客イベントは開催しません。感染のリスクは完全に拭う事は出来ず、感染症との社会生活を賭けた戦いは、
今後も長く続くと私どもは考えております。 それよりも、ホームページやYouTubeを介したコンテンツ提供が、弊社業務プロモーションやCFD普及に役に立つと言う事で、それらの充実を図ってまいります。
その一環として、昨年はソフト操作のハンズオンビデオの作成と、弊社ホームページやYouTubeへの掲載を実施しました。 今回は弊社の業務内容をご理解頂くためのプロモーションビデオを作成しました。 建築で熱や流れをシミュレーションする事で何が分かるのか? ソフトウェアはどんなものなのか? 解析サービスで得られる情報は何か? などなど平易に説明しています。 皆様のご理解に役立てば幸いです。
会社概要
株式会社環境シミュレーション2022PR
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【CFD千夜一夜 第四十六夜 「愚者」】
東京大学名誉教授加藤信介先生のコラム、「CFD千夜一夜」の今宵のテーマは「愚者」。 さあ何が語られるでしょうか?
タロットカードの愚者(Fool)はよく小説などの題材になります。 映画でピエロがもっとも怖いのは、やはりバットマンのJOKERでしょうか。 2008年の映画「ダークナイト」でのヒース・レジャーの怪演が印象的でしたが、シリーズとは別に2019年にまた映画化されています。
Wikipedia「ダークナイト」
<建築環境解析の光と影 第二十回 ~アトリウム・大空間解析 その3~」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 弊社は1994年の創業以来、独自に熱流体解析ソフトウェアの開発を続けています。建築業界向けの解析には固有のノウハウが必要であり、他の業界向けのソフトウェアでは利用出来ないからです。例えば、自動車や航空宇宙系で実施されている空力解析は、角のないBluffBodyを対象としたものであり、角部(特異点)を含む建築向けの風解析では、ほとんど役に立ちません。
誤解されているかも知れませんが、別に自動車業界はハイテクでも何でもなく、自然を相手にする解析では建築の方がハイテクの場合が多いです。四角くて特異点ばかりの物体の風解析など、自動車屋さんには無理なのです。建築では多種多彩な自然が解析対象に含まれるので、その範囲は非常に広く取り扱う現象も様々です。
例えば外部の空間を扱う風解析や、居住空間の気流や温度を調べる気流解析は、いろいろな意味で全く別物です。前述の特異点だらけの建物に対する風荷重解析や、流体の浮力を駆動力とする温度差換気解析、人体周りの熱上昇流の影響を受け拡散するコロナエアロゾル解析など、実にいろいろな解析が建築分野には存在します。 日射や人工排熱、複雑な輻射挙動や躯体・地盤の熱伝導も扱うヒートアイランド解析は、流行のマルチフィジックス・シミュレーションの代表格です。
建築物は動きませんが、解析対象としての動くものは無数に存在します。人間や車両、搬送台車、扉などです。 建築物内外の気流変化や温度変化の解明を迫られるシーンは非常に多く見かけます。 特に動くものは実測が困難な場合が多いので、e-flowによる移動物体解析が頼みの綱になります。 自動車は実際に空間内を走行するのですが、多くはガリレイ変換による静止した車両の解析でごまかします。 ですが本来は、空間の中で動く車両を対象に解析するのが筋なのは明らかです。
CFD(計算流体力学)にとって何が重要なのか、設計にシミュレーションを反映させるには何に注目したら良いのか? 本質を見誤ってはいけません。
Voronoy(ボロノイ)分割という言葉があります。 Voronoy分割は、なわ張り理論に基づくものであり、CFD(計算流体力学)では、方程式の体積積分の手法の1つとして認知されています。 簡単に言えば、空間の中である点の影響があると考えられる領域を示すものです。 最も分かりやすい例を挙げると、石けんの泡が挙げられます。 たくさんの泡を手に取り、それに眼を近づけて観察すると、虹色に輝く1つ1つの泡が、微細な領域を作っているのに気が付きます。
泡の界面は隣の泡との中心軸に正しく直角であり、泡の表面張力で形成可能な最大のサイズで大きさが規定されます。 泡同士は、全く同じ条件下でお互いが存在できる領域を主張し、その空間を占めていると言えます。 これは多くの泡の配置を最適化する最善の手法です。
この考え方は、非構造格子系の流体解析ソフトウェア(有限要素法的な任意の大きさ・形状の要素をモデル定義に利用する手法)で採用され、支配方程式を離散化するコントロール・ボリューム(検査体積)を規定する手法としてアルゴリズム化されています。 熱流体解析の方程式を得るには、今までは積分論のGreenの式が使われるのが常でしたが、Voronoy分割で検査体積毎に物理量のShell-Balance(微小領域の物理量収支)を取る事により、コンピュータで解くことの出来る必要な離散式を得る事が可能となります。
破綻の少ないアルゴリズムが得られるのがVoronoy分割の長所ですが、良い事の裏には必ず悪い事もあるものです。 Voronoy分割で出来た離散式の欠点は特異点の扱いに難がある事です。 特異点とはCFDでは角部を意味しますが、境界条件としてはNeumann(ノイマン)条件が適用されます。 その条件は、例えば圧力などの物理量の法線方向の勾配がゼロである事(∂P/∂n=0)です。これを空間のどの方向からでも満たす事が、Neumann条件にとって必要です。
この条件を、実はVoronoy分割を適用したCFDでは実現出来ません。 元々コントロール・ボリュームを違和感なく最適配置する手法だから、仲間はずれになる特異点は扱えません。 実現出来ないと言うのは言い過ぎかも知れませんが、実際とは異なった流れしか計算出来ません。 どうなるかと言えば、角部からの剥離があまり見られないシミュレーション結果になります。
自動車や航空機の空力解析は、基本的に角のないBluffBodyを対象にしますから、それでも破綻する事は少ないですが、建築分野に多い角のある形状相手ではそうも行きません。 特に設備系の問題では相性は最悪でしょう。
建築系の学会で、非構造格子系ソフトのベンチマークをやっているそうですが、そのセンスに愕然とします。 やっている事が、自動車技術会のCFD技術委員会で、20年くらい前に議論された研究に酷似しているのはまだ良いですが、問題はその後の建築設備系の解析に適用出来る見通しが全くない事です。建築分野で、一見ローテクに見える構造格子系ソフトでの解析が今だに主流なのは、理由があるのです。
建築熱流体解析では利用するソフトの選定も重要です。 使いやすいとか安定しているとか計算が速いとかが、解析精度の向上には害悪でしかない事は以前申し上げました。 実質少ない格子を用いているとか、陰解法やk-ε乱流モデルを使うとか、精度の高い解にはたどりつけません。 見かけだけ格好良く見える高額なソフトも、使い方を誤れば正しい答えを出すとは限らないのです。
Voronoy分割を考案したGeorgy Voronoyは、今話題の現ウクライナ出身の数学者だそうです。 彼もまた歴史上の多くの数学者と同様、40歳と言う短命でこの世を去りましたが、その際立つ業績の輝きは失われる事はありません。それでもそのVoronoyの理論が、CFDの始祖たるVonNeumannの呪いに縛られている事は、大いなる皮肉と言えます。
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東京大学名誉教授加藤信介先生が今宵もコラム「CFD千夜一夜」を語ります。
個人主義に対して制約を与えるべきとする全体主義的な議論を加藤先生は懸念されていますが、私も同意見です。 時折しも、ロシアがウクライナに侵攻していますが、今の日本のような皆が皆片方を非難するような状況では、大抵その裏でロクでもない事が起こっているとしたものです。
民主主義を維持するためには、個としての自分をしっかり保つ必要がある事に気付かされます。 大手ソフトの出した答えを、盲目的に信じる近頃の傾向にも疑問を感じます。 先入観なく純粋に物事を見ないと、間違った設計をしてしまうのですが。
<CFD千夜一夜 第四十五夜 「権威主義」>
森川泰成先生のコラム、「建築環境解析の光と影」、いよいよ実務に基づいた生々しい体験が語られます。
誰でも知っている○○ビール園、夏期の冷涼な外気活用、冬期の日射による温室効果活用など、多くの課題がCFDと実測で確認され、CFDと言う手法の有効性自体が、この時期から建築家や建築技術者の間で大きく認知されていきます。建築CFD黎明期のエポックメイキングな出来事と言えます。
<建築環境解析の光と影 第十九回 ~アトリウム・大空間解析 その2~」>
伊藤久晴氏の「日本BIM見聞録」、くだけた内容から入っていますが、今回提示されているテーマは深刻です。
BIMを触った事のないお偉いさん方が、BIMのコストパフォーマンスに口出しをする。 自分がBIMの導入担当者だったら、想像したくない場面です。 BIMを触った事のない人に、BIMの特徴や有効性を納得させるのは至難です。 と言うか出来っこない。
BIMデータの作成依頼が、2次元CADデータで指示されるのも悪夢です。 でも、こう言う事が普通に起こっているのが日本の建築業の現実と言うのは、否定出来ない事実です。 熱流体解析でも、知識も経験もないのに分かったつもりになっている設計者が多いのに驚きます。 みんなもっと事実には謙虚になるべきではないでしょうか。
<日本BIM見聞録 第7回 「ビムノカタチ」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 在宅ワーク、テレワークが当たり前になってから、もう足掛け3年になります。 最近もオミクロン株蔓延のおかげで、感染者数が今だに大変な事になっています。 重症化しないと言われながら、死亡者数は更新を続けており、まだしばらく安心して外出出来ません。 そのお陰で、食べるものは自分で料理する機会が増え、キッチンに立っていろいろな物を作っています。
料理は化学工学であり熱流体解析です。 攪拌とか加熱などの単位操作があり、その中にまた対流・熱伝導・輻射などの熱現象が絡みます。 伝熱工学的見地やCFD(計算流体力学)の立場で見て思わぬ発見をする事もしばしばです。クックパッドとかのレシピ通りにすると本当に美味しくなるのに驚きます。
出来上がりをイメージして段取りを考え、材料を揃えて順番に切ったり煮たり焼いたり揚げたりを手際よく進めないと、同じタイミングで料理が出来上がりません。 使い終わった料理器具を洗ったり、残った食材をラップで包んでしまわないと、まな板を置く場所もなくなったりします。 油を使っているそばで水を使ったり、生ものを置くのも厳禁です。 こういった段取りがあるのも、料理と言うのはつくづく頭脳ゲームだと痛感させられます。
その中でも、パスタをアルデンテにゆでたり、ハンバーグを焼き目良く焼いたり、チャーハンをパラッと仕上げたり、一見単純で簡単そうな事が非常に難しいのに気がつきます。 これも熱流体解析によく似ています。 料理が出来る人は、男女問わず凄いと思います。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇建築CFD(熱流体解析)で大切なのは 1
抜群の安定性をうたうソフトがあります。 線形解析主体の構造解析ではロバストネスは確かに重要な性能です。 しかし抜群の安定性とは、非線形現象が多いCFD(計算流体力学)で、本当に美点なのでしょうか?
CFDの基本となるのは、流体の運動を司るNavier-Stokes方程式です。 この方程式は極めてジャジャ馬で、設定条件によっては非常に不安定な事が知られています。 いわゆる噴流などのカオスもそう言った現象の1つで、それを解析すれば少なからず解の挙動は不安定になります。 言ってみれば、流体解析ソフトは、解が発散するべきところでは発散するから、精度を担保していると言って過言ではありません。
本来発散すべきところで、無理やり安定化させて解を得る事はいくらでも出来ます。 しかしその結果何が起こるか? 本来の現象とはかけ離れたものを計算してしまっている可能性もあります。 何も知らない建築業界の方相手ならいざ知らず、他の業界でCFDに携わっている方相手だと通用しない事があります。 利便性から結果が早く出る事に固執されるのは分かりますが、そのしっぺ返しは必ずあるという事です。
「計算速度が速い」のも時によりけりです。 いくら何でも100万グリッド以上の規模のCFD解析が、目の前で数分で解けると言うのは、それこそ富岳でも使わないと、CFDの常識として有り得ません。 いくら性能が良くても、PC では土台無理です。 CFDソフトを実際に動かして検討している他業界の方は、CFDは時間が掛かるものだと言う認識をほぼ例外なく持っています。 だから こそ自社で、スーパーコンピュータやクラウドサービスを利用されるなど、計算資源の確保を図ったりされています。
建築業界の方々、特にゼネコンさんの設計部隊や設計事務所さんは、施主さんの前で知らずに大恥をかいている事があります。 どうかご用心を。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
CFD千夜一夜は、東京大学名誉教授加藤信介先生が織り成すコラムです。
今回のテーマは葬送。 私の最近のお気に入りのコミックに、「葬送のフリーレン」と言う作品があります。 魔王を討伐した後の、勇者一行の後日譚を描くものですが、大きなイベントが終わっても、その後の長い人生を生きていかなければならない人の業を考えずには居られません。
加藤先生は、葬送に至る以前の経緯や歴史にも、注意を払う必要があると述べられています。 人や流れがどのようなカオスを経験してきたか、この世の理(ことわり)の深淵を覗くような気がします。
<CFD千夜一夜 第四十四夜 「異なる葬送」>
森川泰成先生が、当時在職しておられたゼネコンの研究所で、現業の検討手段としてCFD(計算流体力学)を適用された過程が克明に記述されています。当事者の一人として考えると、当時の建築業界と学会の熱とモチベーションは、天を衝くものがありました。
当時の私の判断で思い出すのは、当時のアポロドメインとかよりも、シリコングラフィックス社のIRISワークステーションを強烈にプッシュした事です。とにかく描画性能がダンチでした。 これは、私が1984年にNASA Ames Research CenterのCFD Branchを偶然訪問する事が出来、当時のチーフDr.Steve Divertらから得意げにデモを見せられた事に端を発します。 同センターは、もう日本人を受け付けなくなりましたが。
<建築環境解析の光と影 第18回「基礎から実務へ ~~クリーンルーム&大気乱流解析~」>
伊藤久晴氏のおすすめの流行語は、”建設SDGs”という言葉だそうです。”建築DX”はやや言い古された感があり、正直何の事を言っているのかよく分かりません。 今でもいろいろな企業からセミナーの勧誘メールが引きも切らないですが、内容を見るとセミナーを主催する当事者が、本当にDXと言うものを理解しているのか疑問だったりします。
昨年の大阪でのクリニック火災事件での弊社の対応にも触れて頂いていますが、これも私どもにとってはBIMで実現する熱流体解析です。 対応の速さにも触れてておられますが、これは競合他社さんが何故メディアに全く対応されないのか、私の方が聞きたいくらいです。 普段から、圧倒的な使いやすさとか、計算速度とか強調されているのは、競合各社さんの方なんですが。
<日本BIM見聞録 第6回 「建設業界の流行語について」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ やっと新型コロナが収まったと思ったら、オミクロン株が日本を席巻しています。 死亡率は低いそうですが、この感染者数は異常です。 私は外出をなるべく控えるようにしています。 皆様もどうかお気を付け下さい。
ずいぶん寒いお正月でしたが、特にテレビを見ると言う事もなく、どこかにドライブに出ると言う事もなく、近場で買い物する程度で穏やかな年末年始でした。 昨年は密を避けて映画を見に行く機会が少なかったですが、その中で印象に残った映画は、「ゴジラ対コング」でも「ワンダーウーマン1984」でも「ブラック・ウィドウ」でもなく、「竜とそばかすの姫」でした。
正直言って私は細田守監督を評価していなかったのですが、この映画には心を奪われました。 鮮烈なビジュアルと、家庭内暴力に焦点を当てたストーリーもさる事ながら、主人公を演じる中村佳穂の圧倒的な歌唱が魅力です。 中村佳穂の歌唱がどのくらい凄いかと言うと、YOASOBIの幾田りらが、重要な役柄で共演しているにも関わらず、1曲も歌っていないと言ったら分かるでしょうか? 当代随一の歌姫が歌う余地がないのが、中村佳穂の歌唱です。
もう一度見たいと思いつつ、再度映画館に足を運ぶ機会に恵まれなかったので、今はDVD/Blu-Rayの発売待ちです。 でもアマゾンプライムで提供している間は円盤は発売されません。 ビデオオンデマンドは、いつの間にかタイトルが消えてしまうので好きではないです。 アマゾンは金にあかせて、好き勝手やらないで欲しいものです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇大阪堂島北ビル火災シミュレーション、各メディアに動画提供
昨年12月17日に起こった、大阪堂島北ビルのクリニック火災のシミュレーション動画を、テレビ局・新聞へ多数提供しました。 事件から1ヶ月目の今月17日の産経新聞・読売テレビへの提供でようやく一段落しました。 新型コロナ関連の換気シミュレーションでも多くのメディアに取り上げて頂きましたが、これだけ短期間で、多くのメディアに放映・掲載頂けたのは初めてです。
・18日 テレビ朝日「サタデーステーション」
を皮切りに、MBSテレビ『よんチャンTV』、CBCテレビ「ゴゴスマ」、名古屋テレビ ローカルニュース、読売テレビ ローカルニュースなど地方局にも動画を提供しました。
各メディアへ提供した動画は、実は同じものは1つとしてありません。 今回の火災事件は、消防と警察が現場検証情報を開示しなかったため、今でも詳 しい間取りや各扉の開閉状況、火源位置などがはっきりしていません。そのため、依頼のあった時点での取材情報を各メディアから提供頂き、それに沿って空間の3次元モデルを都度構築し、シミュレーションを行いました。
てんやわんやだった動画提供も、先月24日の読売新聞、今月13日の朝日放送テレビ、17日の産経新聞掲載・読売テレビ放映でようやくキリとなりました。先月24日の読売新聞大阪版では、弊社の火災シミュレーションの記事が1面に掲載されました。 三大紙の第1面に、数値シミュレーションの記事が載るのは私は見た事がありません。
今月17日産経新聞では、弊社シミュレーションの別の記事が紙面全面に掲載されました。 熱流体シミュレーションの記事が、これだけ大きく紙面で取り上げられたのは、これもまた極めて異例だと思います。 この記事はレイアウトがカッコ良いです。 是非ご一読を。
今回のシミュレーションは煙流動に関するもので、所定の火源から発生するCOを多量に含む燃焼排ガスの動きを模したものです。 激しいサーマル熱対流と、天井に沿って広がる煙層の速度に驚きます。 このようなシミュレーションは、かつては大型案件で日本建築センター評定で行われてきたものです。私は1994年までの間に、火災のアセス案件に10件ほど関わったので、煙流動シミュレーションの実務のノウハウがあります。 火災時の対策が心配な案件がありましたら、随時ご相談に乗ります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
CFD千夜一夜は、東京大学名誉教授加藤信介先生が織り成すコラムです。今回は「回路網」をテーマにしていますが、笹子トンネルの事故など、多くの話題に触れています。 製鉄所勤務だった時に、隣の課で電力の潮流計算をやっていたのを思い出しました。 所内の電力需要に応じて、中国電力から電気を買うのか、所内の専用火力発電所の出力を上げるのか、と言うような事をやっていたと思います。
今回の話題とはあまり関係ありませんが、弊社事務所のネットワーク環境は有線に限定しています。 PC周辺がスパゲティ状態になるのですが、無線傍受による情報漏えいを防ぐためです。 安価に対策するにはローテクの方が向いているという事です。 物理的に隔離されていれば盗聴など有り得ません。
<CFD千夜一夜 第四十三夜 「回路網」>
森川泰成先生の本コラム、佳境に入ります。 当時のゼネコンの研究所として非常に先駆的かつ意欲的な、検討業務へのCFD(計算流体力学)の適用状況がリアルに語られます。 私も当事者の一人でしたが、バブル崩壊前でもあり、世の中全体に勢いのある時代でした。 T社さんの凄いところは、バブルが崩壊しても、CFDへの投資と人材育成を続けた事です。
<建築環境解析の光と影 第17回「基礎から実務へ ~~クリーンルーム&大気乱流解析~」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 何とも悲惨な事件が起こりました。 大阪堂島北ビルで17日放火事件が起こり、多くの尊い命が犠牲になりました。 謹んで哀悼の意を表します。
弊社はこの事件について、煙流動解析のシミュレーション動画を各テレビ局等メディアに多数提供しています。 熱源からのプリューム熱対流による火災時煙流動解析は、他社さんソフトでは出来ないものの1つです。
で、我が国が誇るスーパーコンピュータ富岳はどうかと言うと、以前にもコロナ関連のシミュレーションで指摘したように、使われている理研製のCUBEと言う流体解析ソフトは、熱を解析出来ない仕様です。 信じられないでしょうが本当です。
弊社は今回火災のシミュレーション動画を、先日18日・19日放映のテレビ朝日「サタデーステーション」、「サンデーステーション」を皮切りに提供し、同局「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「TheTIME」、フジテレビ「めざましテレビ」やMBSや名古屋CBCなど各キー局系列の地方局からも提供依頼されました。 今現在も、動画提供を続けている状況です。 金曜の大阪読売テレビが最後の提供になるのではと思っています。
放送をご覧になっていない方のために、サンデーステーションの放映URLを貼っておきます。 テレ朝ニュースのURLもお知らせしておきます。
参考のため、各テレビ局に出したコメントをお知らせしておきます。
○燃料としてガソリン1Lを想定。 燃焼熱量は40MJ/L(その後の情報では8L)
弊社は、1994年に防災評定で煙フィールドシミュレーションが無くなるまで、10件以上このシミュレーション業務に携わり、それ以降現在に至るまで、京都 アニメーションなど、種々の火災シミュレーション業務に従事して来ました。
日本では、防災の評価が3次元シミュレーションから二層ゾーン簡易モデルに1994年に切り替わり、日本の火災シミュレーション研究は、世界から10年遅れたと言われています。 米国NISTが開発したFDS(Fire Dynamics Simulator)による煙流動解析は、既にISO化され国際標準として全世界に普及していますが、日本はISO化された煙流動シミュレーションを認めていない国です。 日本の建築業が、他の産業と同様にガラパゴス化しないと良いですが。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇CFD千夜一夜 第四十二夜 「運び屋」
「岡山芸術交流」と連動し、アーティストと建築家が協働する都市内分散型ホテルプロジェクト「A&A LIAMFUJI」は、官民一体となったアートによる街づくりを、山の日常生活の中に仕込む企画です。
アートを旅と読み替えるなら、今回実現したのは、従来の「旅の中のホテル」の反対、つまり「旅を内包するホテル」です。 アーティスト、リアム・ギリックによる壁面の巨大な文字列は、気象学者・真鍋淑郎による地球環境問題を論理的に表現した数式であり、今世相を賑わせているSDGsとも通じるものがあります。
弊社はこの企画の中で温熱環境シミュレーションを担当し、非常に難易度の高い快適な住環境構築のお手伝いをしました。 なお本記事作成には、テーテンス事務所(https://www.tetens.co.jp/)からの資料提供を受けました。
LIAM_FUJI_PROJECT(PDFファイル,3.11MB)
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東京大学名誉教授加藤信介先生のコラムCFD千夜一夜。 今回は「運び屋」をテーマに取り上げます。 私はUber Eatsを思い起こしました。 誰が触っ たか分からない物を食べる趣味はないので、利用した事はありませんが。
始点と終点と言うと、私は化学工学屋なのでキルヒホッフの法則を連想します。 反応経路によらず、反応熱は不変という法則です。 しかし、水素と酸素が反応して水ができると言うような単純な過程でも、数10種類の素過程が存在し、それぞれに反応定数と分配平衡の情報が必要です。 むべなるかな。 自動車のエンジンのCFD(計算流体力学)は、未だに火が付いた事がないと言う話です。
<CFD千夜一夜 第四十二夜 「運び屋」>
生きた建築CFDの歴史である森川泰成先生の経験が語られます。 実物の「風洞」から当時最新の「数値風洞」への移行期の、生々しくも活気のある研究状況が伺えます。 週単位で手法の進歩が見られた特異な時期でした。
NK設計のK氏、S建設のH氏、K建設のI氏、何故か全員私は知っています。私は研究者でも何でもなく、一介の技術者なんですが。
<建築環境解析の光と影 第16回「基礎から実務へ ~風洞と数値風洞~」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みずほ銀行が大変なことになっています。 基幹システムの再三に渡るトラブルでATMが稼働せず、預金者に戸惑いが広がっています。 最近金融庁までもが経営陣のシステムに対する認識の甘さを厳しく指摘し、経営を監視すべき社外取締役の役割も問題視しました。 しかしみずほも金融庁も、問題の本質をまるで分かっていません。
彼らは、そして恐らくこれを読んでいる皆さんも、問題の本質 ―ソフトウェア開発の困難さー を理解していないのではと思います。
弊社のWindPerfectですら、ソースプログラムで50万行近い巨大なソフトウェアです。 これが都市銀行の勘定系基幹システムなら、開発規模は優にその10倍以上でしょう。 それら鬱蒼たるコードの森林を、様々な条件とデータで総て稼働させるようなチェックが、事前に出来ていたかどうか。 私の答えはNoです。 膨大な回数のテストにも関わらず、まだ数回しか命令を処理した事のないコード群が、数え切れないほどあったでしょう。
当然バグもあります。 それも、処理するデータの並びの特異性によって発生するものも少なくありません。 変数や配列を共有している場合には、別のモジュールで起こったバグの影響を受ける事もあります。 それらの中には、本格稼働後でないと見つからないものもあります。 扱うデータの全体量やトラフィック量によって、バグの発生条件を満たすものもあるはずだからです。
加えて、ソフトウェア開発者なら皆知っている事ですが、開発環境にもバグはあります。 みずほが、どのような環境を使っていたかは知りませんが、WindPerfectの開発環境のMicrosoft Visual C++(現在は2022)も、はっきり言ってバグだらけです。 そのバグを上手くあやしゴマかして、仕様通りに稼働させるのも、ソフトウェアエンジニアの腕の見せどころです。
これがまだ世界で数10万人が使っているVisual C++だからまだ良いですが、JavaだのPythonだの、出来てまだ時間があまり経っていない開発環境の場合は、目も当てられないでしょう。 ソフトウェアエンジニアは、バグをくぐり抜けてソフトを所定の仕様で動かすアクロバットを日常的に繰り返しているのです。
そう言うエンジニアを高く評価してくれるのは、やはりアメリカです。 シリコンバレーのソフト開発者の年収は10万~15万ドル(1300万~2000万円)。日本だと企業経営者のレベルの収入です。 日頃からブルーカラー扱いされて、400~500万円の安い年収しか貰えないのに、みずほのシステムのために、汗水たらして働く開発者など居ないでしょう。
みずほもそうですが、輪をかけて分かっていないのは官公庁でしょう。 ソフト開発の困難さが理解できないから、仕様と納期と予算を決めたら、ソフトは出来るものと誤解している。 私が1つだけ言えるのは、ソフト開発はやってみなければ分からないという事です。 人間の不断の努力とスキルと投資とプライドと、それと若干の幸運の上に、ソフトウェアは初めて形を成すのです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇岡山A&A LIAMFUJIプロジェクトのご紹介
「岡山芸術交流」と連動し、アーティストと建築家が協働する都市内分散型ホテルプロジェクト「A&A LIAMFUJI」は、官民一体となったアートによる街づくりを、山の日常生活の中に仕込む企画です。
アートを旅と読み替えるなら、今回実現したのは、従来の「旅の中のホテル」の反対、つまり「旅を内包するホテル」です。 アーティスト、リアム・ギリックによる壁面の巨大な文字列は、気象学者・真鍋淑郎による地球環境問題を論理的に表現した数式であり、今世相を賑わせているSDGsとも通じるものがあります。
弊社はこの企画の中で温熱環境シミュレーションを担当し、非常に難易度の高い快適な住環境構築のお手伝いをしました。 なお本記事作成には、テーテンス事務所(https://www.tetens.co.jp/)からの資料提供を受けました。
LIAM_FUJI_PROJECT(PDFファイル,3.11MB)
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東京大学名誉教授加藤信介先生が織り成すCFD千夜一夜の今回のテーマは「車は急には曲がれない」。 なんだか交通標語のようですが、流体力学に関する重要なお話です。 理解には、やや理系の知識が必要になります。
冒頭、最近物覚えが悪くなったと嘆いておられますが、加藤先生は愛知県瀬戸市出身で、あの将棋界のレジェンドとなりつつある藤井聡太竜王(四冠)と小学校が同じです。 天才が半世紀を経て輩出するとは、一体どう言う土地柄なのでしょうか。
<CFD千夜一夜 第41夜 「車は急には曲がれない」>
森川泰成先生の今回コラムは、先生が建築CFDに精通するきっかけとなった建築環境工学との出会いの2回目です。
私も初めてお聞きする過酷な大学院生活で、先生の知識・スキルと人脈がどのように形成されたのかが語られます。 伏字になっていますが、登場人物の方々の顔ぶれの何と豪華な事か。 CFD(計算流体力学)の急速な進展の中で、濃密な議論と情報交換が成された時代です。 そのような環境に浸れない今の若い世代は、気の毒だとさえ思ってしまいます。
<建築環境解析の光と影 第15回「建築環境工学との出会い その2」>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と言うSF小説があります。 自然が破壊された世界で、生物は昆虫一匹と言えども、法によって厳重に保護されている。 そうした中で逃亡したアンドロイドを処理する賞金稼ぎの物語です。
この小説にはいくつかの暗喩が含まれています。 曰く「人間とは何か?」、曰く「人間と人工知能(アンドロイド)との違いは?」。 アンドロイドとは、 現代で言えばAIでしょうか。 この作品の根源的なテーマが、素朴な問いかけとしてタイトルに表れています。 では我々が携わっているCFD(計算流体力学)の根源的なテーマとは何でしょう?
数値シミュレーションを通して、いろいろな場面での気流場・温度などを求めるのが、このメルマガを読んで下さっている方の、CFDを使う一般的な目的かと思います。 ではその時に重視されるものは? 使いやすさ、計算速度、解析精度、多様な評価機能と、挙げたらキリがありませんが、皆さんは何を大切と思われるでしょう。 弊社が最も重視するのは「解析精度」です。
昨今、やたら計算速度が速いのを誇示するソフトがあります。 しかし、それは1万グリッド程度の、精度などとても確保出来ない極めて粗い格子で計算しているからです。 そのような粗い格子を使うと、いくら計算が速くても定量的どころか定性的にも実現象と全く異なる結果が出ます。 いくら早く結果が出ても、それが間違っているなら何の意味もありません。 もし誤った結論に導かれれば、その揺り戻しはプロジェクトの進行にも多大な悪影響を与えます。
弊社は創業以来、解析精度にこだわり、年間200件以上、94年からの27年間の累積で7000件以上の受託解析業務に携わっています。 その間、有難い事にほぼノークレームで業務を進めています。 当然扱う格子を始め、解析モデルや条件設定などには細心の注意を払っています。 結露解析で、結露が発生すると言うシミュレーション結果が気に入らず、料金を支払わなかった企業がありましたが、まあそのくらいです。
あなたのCFDは、解析精度の夢を見るでしょうか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Symmetry Dimensions社との、国交省PLATEAU上での弊社との協業が、同社のホームページに掲載されました。“インサイトからアクションへ ージタルツインの構築から活用までー”
<「風環境/耐風設計解析」>
「PLATEAU」はご存知ない方も居られるかも知れませんが、日本各地の3次元デジタルデータを提供する国交省のプロジェクトです。 デジタルツインクラウドと言うこれも聞き慣れないプラットフォームですが、アクセスしたユーザーに地盤や建物のデジタルデータを提供します。 現在は関東圏を中心に、多くのデータの蓄積が進んでいます。
<PLATEAU>
またこのプロジェクトは、単に3次元データの共有だけでなく、風やヒートアイランド、人流や災害などの数値シミュレーションによるソリューションも提供すると言う、野心的な狙いを持っています。 弊社はこの趣旨に賛同し、データ入力や可視化を含む解析エンジンを提供します。 ソリューションサービスの開始は、来年前半を予定しています。 どうかご期待下さい。
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東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜。 今回のテーマは「ナイチンゲール(フローレンス・ナイチンゲール:Florence Nightingale)。今、コロナ禍で3密が注目されていますが、室内の換気の重要性を指摘して、社会的に大きな影響を与えた人とは知りませんでした。
ナイチンゲールは、今から200年ほど前に生まれたイギリス人女性です。 クリミヤ戦争で敵味方関係なく傷病者を看護した事で知られますが、英才教育で学んだ数学・統計学を生かし、「感染」は空気の汚れから生ずるものであり、「感染」は予防できると考えました。
現代では、シミュレーションを用いて、人が呼吸する空気が室内のどのような経路を経て口元の呼吸域に到達するかを、詳細に解析できる時代になってい ます。 いくつものシナリオを立てその功罪を検討する事が、窓を開放する事より有効なのは言うまでもありません。
<CFD千夜一夜 第40夜 「ナイチンゲール」>
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建築CFDに精通する森川泰成先生の今回のコラムは、先生と建築環境工学との出会いについて触れます。
先生の人生を建築環境工学に向かわせたのは意外な出来事でした。 彰国社の「環境工学教科書」、建築環境のシミュレーションという章は、先生の執筆です。 最新のシミュレーションや複合解析が紹介されていますが、最近よく耳にするSDGsを視野に入れたサステナブル建築という視点での内容も追加されています。 建築環境工学は安全・健康・快適な室内環境・都市環境を実現するための基礎学問分野です。
<建築環境解析の光と影 第14回「建築環境工学との出会い」>
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ DXとかSDGsとか言うあっちの言葉が好きではありません。 DXって、どう考えたってDigital Exchangeなのに、デジタル・トランスフォーメーションと訳 すなんて意味が分かりません。 ネットも調べたのですが、DXと、ICT化とかITとの区別が、私には更に分かりません。
ご存知の方も居られるでしょうが、弊社ソフトウェアは少し前のバージョンを”WindPerfectDX”と呼称していました。 ”DX”は3次元描画を扱うグラフィック・ライブラリのDirectX(Microsoft製)から由来していて、PCでの表示速度を劇的に速くする技術です、
でも、お客様が「ウインドパーフェクト・デラックス」と呼ぶのを目の当たりにし、そのダサさが嫌で名前からDXを取ってしまいました。 ”DX”が付いていた方が、名前としては今の時代に受けたのかも知れませんが、悔いはありません。
SDGsについては、最初のSはある人の顔を思い出したりするのでパス。 そもそも17項目もある定義なんて、そんなの覚えられる訳が無い。 メディア でSDGsの文字をよく見ますが、好きな奴は勝手にやってろと言う世界です。私は太く短く生きたいので、持続可能など昔からあまり興味がありません。
コロナ禍で我々の仕事や暮らしは一変し、「在宅」や「巣篭もり」などがすっかり定着しました。 人は、思っていたよりもずっと少ない資源とエネルギーで暮らせる事が分かりました。 良い服を着たり美味しい物を食べたり高い車を買ったり豪華な旅行をしたりとか、好きな人がやれば良いだけの話です。旅行業・宿泊業・観光業にお金を落とす人は、これからはそんなに多くならないでしょう。 身の丈に合った生活を私は送ろうと思います。
政権選択の選挙ですが、皆様は何を思われるでしょうか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇チュートリアルビデオ公開
前回の受託解析パンフレット・解析クローズアップ更新に続き、WindPerfect等の操作に関して、弊社ソフトウェアのチュートリアルビデオを、新たに作成しました。 弊社ソフトの使いやすさや、様々な機能、可視化能力をご覧頂ければと思います。 YouTubeにアップしますので、どなたでも見て視聴可能です。 今回はデータ入力・可視化関連のビデオの公開です。
風解析、空調換気解析のハンズオンのビデオも作成中ですが、そちらは当面ユーザー様限定での公開とさせて頂きます。 同業者さんも見たければどうぞご自由に。 でもあまりパクらないで下さい。
マウス等による操作
プリ処理(データ入力)
ポスト処理(結果可視化)
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東京大学特命教授加藤信介先生のCFD千夜一夜。 今回は「条件付き」がテーマです。 と言っても最適化のお話になります。
導入は第二次世界大戦になります。 その時選んだ無条件降伏が、日本の未来の幅を狭めたという議論です。 全ての物事にはシナリオが必要です。 戦争遂行の科学であるOR(オペレーションズリサーチ)を通して、作戦研究がどのようなプロセスで成されるのかが分かります。
<CFD千夜一夜 第39夜 「条件付き(最適探査)」>
建築CFDの大家、森川泰成先生の今回のコラムは、「ヒートアイランド解析」
恩師の方の影響で”暑くなる大都市”に興味を持たれた森川先生ですが、都市の熱現象を口で解説するのは簡単でも、実際にそれらをシミュレーションで実現するのは非常に大変です。 非常に多くの現象が複雑に絡み合うからです。
評価にはそれら現象を読み解き、適切な評価と対策に結び付ける「目利き」が必要であるとされます。 同感です。
<建築環境解析の光と影 第13回「「ヒートアイランド解析」>
㈱BIMプロセスイノベーション代表取締役の伊藤久晴氏による今回のコラムは、ご自身のBIM遍歴を披露頂きます。
見積部門での業務、TQC活動など、伊藤様の建築屋人生の端緒は、非常に興味深いです。 最初はCADがあまり好きではなかったと言うのは、私も初めて知りましたが驚きです。
<日本BIM見聞録 第4回 「BIMを始めるまでの遍歴」>
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ やっとコロナがピークアウトを迎えたようです。来月から緊急事態宣言も解除されるようで、生活の自由度が少し出てきそうです。しかし油断はまだ出来ません。年末にかけてまた第6波が来るという話も出ています。マスク着用など、必要な対策は必ずして自分と家族の身を守りましょう。
今月9月12日(日)21:00からテレビ朝日「サンデーステーション」でのコロナ連気流シミュレーション動画が放映されました。放送を見逃された方はご覧頂ければと思います。今話題の家庭内でのエアロゾル感染が、分かりやすく解説されていると思います。
<TV朝日 サンデーステーション?独自検証“エアロゾル感染”換気に効果的な家電とは>
9月17日(金)のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で、また弊社シミュレーション動画が取り上げられました。また、「東洋経済」誌で工学院大学柳宇教授が、家庭内での換気の考え方についてコメントされています。
<TV朝日 羽鳥慎一モーニングショー?38人の科学者が提言「空気感染」から身を守る方法>
今回の動画等で強調されましたが、コロナ飛沫核の移流拡散には、人体周りの熱上昇流と呼気(吐く息)温度が高い事が大きく影響しています。飛沫核が遠くまで飛ぶと言うのは間違いで、多くは人間の頭上に滞留します。それを空調などで乱暴に混ぜる事なく、スムーズに排気してやる事が重要です。換気についての正しい知識を、今後とも啓蒙していきたいと考えています。
受託解析パンフレットと解析クローズアップを更新しました。 弊社で名簿登録している方にはお送りしましたので、お手元にはもう届いている方もおられる事と思います。 届いていない方は、お知らせ頂ければ発送致します。弊社ホームページでも閲覧・ダウンロード可能です。
コロナ禍により、お客様のCAE環境も一変しました。 在宅勤務・テレワークなどの増加で、個人の計算リソースやネットワーク速度の不足が顕著になり、手元で気軽に解析が出来なくなりました。 解析を外部に委託するニーズが増えたと言えます。
受託解析パンフレットは、私どもの建築土木系熱流体解析サービスについて、弊社で何が可能なのか説明しております。 解析クローズアップは、解析レシピや結果説明を網羅して好評を頂いておりますが、ご関心の極めて高いコロナ関連気流解析などを含め、新たな事例も加えてより内容を充実させました。
今回のパンフレットは、次のようなコンテンツを含んでおります。
これら解析は全て、弊社開発のWindPerfect及びe-flowで実施したものです。ご関心のある解析がありましたら、弊社までご遠慮なくお問い合わせ下さい。
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東京大学特命教授加藤信介先生が語るCFD千夜一夜。 今回のテーマ「逆解析」、その本質はどこにあるのでしょう。
求めたい解が、いろいろな条件を都合よく満たさないかも知れないと言うのは本質的な指摘です。 流れ場の逆解析は、ある意味、最適化探査そのものになるという事です。 ただ現状は、そのソフトで解ける流れ場がそもそも線型の域を出ないから、お手軽に逆解析が出来たつもりになっている事が多いかも知れません。
弊社は非線形現象が解けないCFDには興味がないので、逆解析機能は当分作らないと思います。
<CFD千夜一夜 第38夜 「逆解析」>
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ゼネコンでのCFDの大家、森川泰成先生のコラム、早くも第12回目になります。 今回の「温度成層型風洞模型実験とCFD」というテーマは、前回掲載分の発展形になりますが、風洞にたくさんの種類がある事はみなさんご存知でしたか?
私は化学工学出身なのでその視点で見てしまいますが、Re数とFr数とNu数とPR数を総て合わせる実験など、面倒くさすぎて考えたくもありません。 そうなるとやはりCFD頼みになってしまいますが、お陰で解析する規模がうなぎ登りです。 2000万グリッドや3000万グリッドはもう普通で、5000万を越える案件も出て来ています。 PCでここまで出来るとは、昔とは隔世の感があります。
<建築環境解析の光と影 第12回「温度成層型風洞模型実験とCFD」>
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株式会社BIMプロセスイノベーション代表取締役の伊藤久晴氏によるコラム「日本BIM見聞録」、第3回は「Build Live Tokyo 2009」。 弊社と言うか私も参加しました。 BIMに対する明るい未来を想像しながら、2日間徹夜で頑張りましたが、それで得た未来が今かと言われれば、忸怩たる思いを拭えません。
BIMで、CFD(計算流体力学)などのシミュレーションが誰でも簡単に出来ると思わせたのは間違いでした。 簡単なCFD解析など存在しません。 適当に何かやってるふりをして、設計案を自分らに都合よく施主サイドに伝えようとするシミュレーションが、世の中には多すぎます。
BIM普及のどさくさに紛れて、それまで200万円台で売っていたソフトを600万円以上に値上げしたソフトベンダーさえあります。 他の業界では値上げしていないので、建築系企業は無知につけこまれている訳です。 600万円以上のソフトなど、いくらBIMだと言ってもそうそう買えないので、普及の妨げになるだけです。 そう言う事が本当に分かっていて、皆さんBIMだと言っているのでしょうか。 BIMで行うCFDシミュレーションは、今転機に来ています。
<日本BIM見聞録 第3回 「Build Live Tokyo 2009」>
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本日9月12日(日)21:00からのテレビ朝日「サンデーステーション」で、弊社のコロナ関連の気流シミュレーション動画が放映されます。
今月9月12日(日)21:00からテレビ朝日「サンデーステーション」でのコロナ連気流シミュレーション動画が放映されました。放送を見逃された方はご覧頂ければと思います。今話題の家庭内でのエアロゾル感染が、分かりやすく解説されていると思います。
感染者数が減らない原因として、デルタ株など新しい変異種ウイルスの存在もありますが、家庭内での感染が増えているからとされています。では家庭内でどのようにウイルスは拡散するのでしょうか。
今回は家庭内での家族同士での感染に注目し、実際のリビングルーム内の気流の状況を再現して、呼気に含まれる飛沫核の拡散を可視化します。コメントは、コロナ関連の気流現象に詳しい、工学院大学建築学部の柳宇教授が担当 されます。
人体周りには体温で熱上昇流が発生しており、呼気も基本的には体温なので、吐き出されたコロナ飛沫核は室内上方に昇りそこに滞留します。気流によってそれら飛沫核(サブミクロン~5μm)が居住域に吹き降ろされないようにする工夫をする事が重要です。
アネモ・ブリーズ・天カセなど下向きの吹き出しの近くはリスクが大きいです。また吸込みの近くも部屋中の空気が集まってくるので、やはり安全とは言い難いです。空気清浄機も漫然と置くのではなく、気流の淀む場所に設置すれば効果的です。
家庭内での感染を減らす有効な対策を、各人で意識できればと願っています。宜しければ放送をご覧下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ また猛暑です。 国際的な運動会もようやく終わりましたが、こんな時に戸外で運動している人には、ご愁傷様としか言いようがありません。 皆様には水分補給となるべく戸外に出ないようお願いしたいものです。
緊急事態宣言も継続されていますが、電車はいつも通り密だし緊張感がありません。 弊社は、競技会場とその最寄りの繁華街には休日でも近づかないよう、社員に命令を出しています。 待機日数ほとんどゼロのオリパラ関係者が、何万人もその辺をウヨウヨするこの状況下では、我々は自衛するしかありませ ん。 ワクチンの接種も自衛隊も含めて止まっていると聞きますし、皆様もどうかお気をつけ下さい。
またパラリンピックがありますが、早くこの喧騒が終わって欲しいものです。弊社は今月7日から15日までお盆休みを頂きましたが、皆様方の夏休みはいかがだったでしょうか。 コロナ禍と喧騒の夏が早く終わりますように。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇日本BIM見聞録 第2回 能力と容量
株式会社BIMプロセスイノベーション代表取締役の伊藤久晴氏によるコラム「日本BIM見聞録」、第2回となりました。 テーマは「能力と容量」。日本のBIMの問題点の本質に迫る内容です。
BIMで社員が設計をせず、派遣の人や契約社員しかBIMソフトを触れない。 2次元CADでの設計から未だに脱皮出来ないというのは、日本の建築業界に根ざした宿痾と言えるでしょう。 変革のために何をしなければならないか、皆で 真剣に考えるべき時期に来ていると思います。
「日本BIM見聞録」第2回 能力と容量】
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東京大学特命教授加藤信介先生のCFD千夜一夜。 今回は「創造」と題してお送りします。 創造するとはどのような事なのでしょう?
創造を生物から見れば進化という事になりますが、その進化とは遺伝子コピーのミスの結果だと大胆な仮説が提示されます。 今話題のコロナウイルスも、ミスを含む遺伝子コピーの結果、あらたな変異種を生み出すという事です。
創造とはミスの集積の結果だと言うのは、神の御手は何と皮肉に出来ているのでしょう。
【CFD千夜一夜 第36夜 「創造」】
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森川先生の本コラム第11回です。 「風洞模型実験とCFD」というテーマは、 大学やゼネコンで研究実務の経験がある森川先生ならではのものです。
風洞実験はどのくらい実際と合うのか? 本質的な議論が本コラムでは提示さ れています。 それにしても可視化やCFDとのハイブリッド化ですか。 世 の中は進んでいます。
【建築環境解析の光と影 第11回「風洞模型実験とCFD」】
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 建築・土木のデジタルモデル化は、UAV(ドローン)などの3次元計測技術の発展とともに大きく歩を進めつつあります。BIM・CIMはそれを代表する一方の技術ですが、「デジタルツイン」という技術が最近注目を浴びています。
デジタルツインは、「実空間に対応するライフサイクルを反映するためのマルチフィジックスかつマルチスケールな統合システム」と定義されます。実オブジェクト(ここでは建築モデル)に対応する物理モデル、センシング、それらの履歴や相互作用などの情報を統合したシステム群により構築されます。実物と、その瓜二つの情報をもつデジタルモデルを二つながら扱うので、ツイン(双子)なのです。デジタルツインは、当然の事ながらBIM・CIMデータ・点群データも包含します。
デジタルツインで何が出来るか?コンピュータの中に検討対象のまるまるの数値情報をストックする事によって、多様な操作とその可視化を容易にします。建築・土木を対象にすれば、建築物や地盤などがオブジェクトとみなされ、形状情報を用いてのシミュレーションモデル作成は極めて容易になります。シミュレーション結果も、オブジェクトと同時に可視化されるため、臨場感や訴求力が非常に高くなり、今までより理解度も大幅に向上します。
ただしこのような機能をもつクラウドは、非常に多くのデータ容量と迅速な描 画機構を併せ持つ必要があり、単独企業での開発は至難であるので、従量制での利用が向いています。これは昨今のテレワーク志向ともニーズが合致します。デジタルツインがもたらす未来に、あなたも自分の夢を託してみませんか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇シンメトリー社デジタルツインクラウドとコラボ開発
弊社はSymmetry Dimensions Inc.殿と、同社のSymmetry Digital Twin Cloudのデータを活用した気流シミュレーションについて、共同開発を行う事で合意しました。 具体的にはSymmetry Dimensions殿のプラットフォーム上でPLATEAUやOpenDataなどのデータを元に風や熱の状況を予測でき、これによって、環境や設備コストを改善する解析ソリューションを提供できるようになります。
Symmetry Dimensions Inc.殿の6月30日付けニュースリリースです。
■オープンデータを活用したデジタルツイン構築 PLATEAUはこう使う! オープンデータを活用したデジタルツイン構築 PLATEAUはこう使う!
シンメトリー殿のデジタルツインクラウドは、データの民主化を標榜しています。 GISデータやBIMデータは、抱え込み秘匿する事で価値が上がると言うビジネスモデルですが、デジタルツインクラウドはそれとは一線を画すサービスです。 シンメトリー殿はXR(AR,VR,MR)にも長けた企業で、デジタルツインクラウド上で行った検討はXR技術で可視化出来ます。
デジタルツインクラウド上での弊社気流解析エンジン提供は、本年10月頃を予定しています。ご期待下さい。
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株式会社BIMプロセスイノベーション代表取締役の伊藤久晴氏によるBIMコラム「日本BIM見聞録」、新連載です。 同氏は3月まで大和ハウス工業殿に勤務され、BIMの黎明期から日本のBIM普及をリードして来られました。BIMについて伊藤様がその時々に考えたことをつづっていきます。 第1回目のテーマは「チェンジ・モンスター」。 様々なタイプのチェンジ・モンスターでどのような改革の問題があるのか考察します。
新連載「日本BIM見聞録」第1回 チェンジ・モンスター
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 建築環境CFD(ComputationalFluidDynamics)の普及が始まったのは、村上周三先生と日比一喜氏の論文が出た1984年頃と思われます。それから40年近い歳月が経ち、CFDは建築分野に広まりました。しかし、その発展と普及は健全だったのでしょうか。
建築業界の各企業や大学研究室で現在行われているシミュレーションは、「定常解法」と「RANS」で行われているものが大半です。「定常解法」はいわゆる陰解法で、時間発展方程式を逐次解かず、一発で解を求める手法です。そこでは流体現象の本質である途中のカオスな流れ場の発生は無視されます。当然の事ながら、「非定常解法(時間進行法)」と「定常解法」で得られる流れ場は異なります。
「RANS(ReynoldsAveragedNavier-Stokes)」は時間平均乱流モデルの事で、k-ε2方程式モデルなどがこれに当たります。計算時間が短いという触れ込みで普及しましたが、噴流や旋回流などで渦粘性が過大に出るなどの欠点を持っています。
これに対して現在は空間平均モデルであるLES(SmagorinskyDeardorfモデルなど)やDNSが主流になりつつあり、非定常現象も含めて適用がひろまっています。ただ大学などの講義で「RANS」が取り上げられる事が多いせいか、「RANS」を利用する人は今だに多いです。複数の「RANS」モデルを使い分ける事で、構造物後流の流れ性状をコントロールする論文を見掛けますが、これなどは最悪の使い方です。流れ場をそうやって恣意的に解く事に何の意味もありません。
弊社は陽解法とLES・DNSを解析の基本にしています。定常解はアンサンブル平均を使って求めます。これは経験則で得たもので、誰の指導を受けた訳ではありませんが、現在では王道と呼べる手法と私どもは考えています。もちろん計算時間はそれなりに掛かります。しかしCFDシミュレーションが、普通のPCで目の前で5分くらいで解けてしまう方が異常です。
また、「定常解法」や「RANS」を用いたシミュレーション結果は、流体現象としての特徴を再現していない事が多いです。本来は複雑な渦や局所変動を伴うはずが、極めてのっぺりとした流れしか計算できません。本来の流れ現象は見れば見るほど興味深いもので、そこから得られる知見・ノウハウは非常に貴重です。そう言った視点で、皆さんも普段目にするCFDの結果を見直してみてはいかがでしょうか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇CFD千夜一夜 第35夜 「歩きながら考える 」
東京大学特命教授加藤信介先生の、今回のCFD千夜一夜のテーマは、先生には珍しくやや思想的なお話です。 先生の大学時代はまだ大学紛争たけなわの時だったと思いますが、非常に活気と熱のある時代でした。 日本はまだまだ発展すると信じて疑いませんでした。 「科学的方法の実践は、謙虚にPDCAサイクルを回すこと」と言うのは、うんちくの深い言葉です。
CFD千夜一夜 第35夜 「歩きながら考える 」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【建築環境解析の光と影 第10回「CFDと最適化解析」】
森川先生の本コラム第10回です。 「CFDと最適化解析」というテーマはよ く語られるかも知れませんが、実効性のある解析はあまり成されていません。 CFDが元々非線形な現象だからです。 本稿では、生命と宇宙の神秘に始ま り、GAを介した最適化に思いを馳せます。 コンピュータが人の智を越える時 代は来るのでしょうか? 私は懐疑的です。
【建築環境解析の光と影 第10回「CFDと最適化解析」】
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 富岳で行われているCOVID-19関連のシミュレーションについて整理してみましょう。昨年来、大きな関心を得ているシミュレーションの功罪について、弊社の見解を加えます。
先ず、多くのメディアに取り上げられて、一般市民の方にCFD(計算流体力学)への関心を喚起したのは大変良い事だと思います。コロナ飛沫核がどのように飛ぶか可視化されたのを見れば、日常生活の中でどのような行動を取れば良いのか分かります。CFDの結果が、ここまで一般の方の行動に影響を及ぼした事は、今までの歴史にはかつてなかった画期的な事です。
他方、富岳のシミュレーションが与えたデメリットもあります。いちいち挙げるとキリがないので、ここでは2点にのみ絞ります。
1つは熱が考慮されていないこと。どういう理由かは分かりませんが、神戸大坪倉教授らが行った富岳でのシミュレーションは、対流・熱伝導・輻射などの熱伝達が考慮されていません。そのため、重要な2つの現象が再現出来ていません。それは人体周りに起きる熱上昇流と呼気の浮力です。いずれも周辺空気(約26℃)と体温(約37℃)との温度差によるもので、これだけの温度差を無視すれば、全く異なった流動状態になります。
これらにより、人体から排出された咳または呼気の実際の軌跡は、富岳のシミュレーション結果よりも大幅に上向きになります。咳にしろ普通の呼気にしろ、2mも飛ぶ事はありません。もちろんコロナ飛沫核の飛び方も大きく変わってきます。この事実は、空調関係の研究者からも指摘されている事なので、神戸大・理研グループの見解を聞きたいところです。
2つ目は、質量保存則が満たされていないこと。これも何故かは分かりませんが、富岳のシミュレーションは連続の式を満たしていません。という事は、例えばコロナ飛沫核の濃度分布を表示すれば、口から出た濃度がところどころ不連続なまだらになってしまうと言う事です。このような事は、実際の物理現象では絶対に起こりません。報道されている富岳のシミュレーションの可視化で、濃度分布での表示がほとんどないのは、そのような解析上のアラを隠蔽しているフシがあります。
上記2点は、富岳のシミュレーション結果の信頼性を大きく損なうものです。CFDに携わる者として非常に残念に思っています。是正して欲しいものです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
東京大学特命教授加藤信介先生の、CFD千夜一夜の34回目のテーマは「バックグラウンド」。 なんと海外ミステリーにも詳しい加藤先生のトリビが炸裂します。 ミステリーなら、私には古畑任三郎くらいがちょうど良いのですが・・・。
【CFD千夜一夜 第34夜 「バックグラウンド」】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【建築環境解析の光と影 第9回「低炭素街区シミュレータ」】
森川先生の本コラム第8回は、低炭素街区シミュレータの話題です。建築関連のSDGs(Sustainable Development Goals【持続可能な開発目標】)に関する森川先生の簡明な説明が聞けます。 スマートシティと連動したエネルギー解析の未来について、今後注目すべきものがあります。
【建築環境解析の光と影 第9回「低炭素街区シミュレータ」】
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 平成ガメラシリーズ第3作「邪神(イリス)覚醒」が今上映されています。当時は東宝ゴジラシリーズが宇崎竜童やジャニタレの大根達のお陰で終焉に向かってまっしぐらだった時で、後の「進撃の巨人」や「シン・ゴジラ」で監督を務めた樋口真嗣が特撮監督としてメガホンをとった作品でもあります。
本作品はギャオスの変異体イリスの神秘的な造形やガメラ誕生の起源、JR京都駅での激しい戦闘などが描かれ、日本の実写怪獣映画の中では屈指の名作と思われます。また同作では、ブレイク前の仲間由紀恵が出演していますが、どこに出ているかは探してみて下さい。
東宝ゴジラシリーズでインファント島の小美人でデビューした長澤まさみは、今をときめく日本を代表する大女優ですが、何故かゴジラシリーズ出演の事実が芸歴には載っていません。もしかして、彼女にとっては黒歴史だったのでしょうか。
経歴を隠す人は我々の業界にも居て、今や粒子法で有名になった東京大学越塚誠一教授は、かつて東京工業大学原子炉実験所の助手だったはずですが、何故かその事実が経歴にはありません。私は当時の越塚先生と名刺交換しているのですが。越塚先生の上司であった高橋亮一教授は、名著「コンピューターによる流体力学(原著:P.J.ローチェ)」を邦訳された著名な方なので、経歴を隠す理由が思い当たりません。
今また新型コロナの感染者が増え始め、先行きが見えなくなりつつあります。私見では、大企業が出勤を止めて思い切って完全ロックダウンをしない限り、この感染は収まらないのではと思っています。電車もオフィスも密では、飲食業に時短を要請しても意味がありません。本来は経団連あたりが音頭をとってロックダウンをするべきですが、実態は日本経済を回すとの大義名分で逆になっています。
何が本当で何がウソかを見抜く事は、自分と家族・友人を守るために不可欠になりつつあります。周りに流されない自分の判断こそが真に重要です。期初にあたって、皆様方のご健勝を祈らずにはいられません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
東京大学特命教授加藤信介先生のCFD千夜一夜。 33回目のテーマは「ライセンス」。 いかに加藤先生と言えども、お上の陰謀は怖いのだと、変なところで感じ入りました。
ところでCAE解析技術者の資格ですが、既に日本機械学会のものがあります。実は92年くらい頃、当時計算力学部門の幹事をやっていた私が企画したものです。 米国機械学会ASMEが、資格ビジネスで儲けていると聞き及び思いついたものです。 機械学会さん、バラしてごめんなさい。
学会役員に残っていれば今頃私も有資格者だったのですが、あいにく持っていません。 ペーパーテストの資格をいくら持っていたところで、CFD解析が出来るかどうかとは、何の関係もありませんから。
【【CFD千夜一夜 第33夜「ライセンス」】
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森川先生の本コラム第8回は、森川先生得意のVR(Virtual Reality)がテーマです。 建築設計を「個」から「総」に向かわせるためのVRシステム。壮大です。 是非一読を。
【建築環境解析の光と影 第8回「建築総合評価のためのVRシステム」】
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今年は桜の開花が早いそうです。都内の名所の千鳥が淵では、皇居のお濠の周りを既に満開の桜が咲き誇っているそうです。私はまだ見に行けていません。それにしても昨今は、往生際の悪い政治家や官僚・芸能人が多いようですが、日本人なら桜の花の潔さを見習って欲しいものです。
この1年、我々の生活や仕事は大きく変わりました。その中で、何が本当に我々が生きていくに当たり必要なのか、少し見えてきた気がしています。豪勢な食事をしたり良い洋服を着たり、高価なアクセサリや化粧をしたりなど、生活の質とは実は余り関係がなかった事に気付かされます。インバウンドな ど本来の需要ではないニーズを追いかけるのも、意味がないと分かりました。人間が生きていくのに、そんなに大きなコストは実は必要なかったのだと分かったのは大きいです。コロナ禍は我々の余計な見栄を吹き飛ばしたようです。
例えコロナが収束しても、人々のこのような生き方は変わらないでしょう。大企業にはお気の毒ですが、もはやスケールの大きさや売上げの多さを求めるビジネスは時代に合わなくなっている事を知るべきです。これで大企業が破綻しても何も気に病むことはありません。日本人は終戦の焼け跡の中から立ち上がったのです。
幸い弊社は多くのお客様からたくさんのお仕事を頂いています。有り難い事です。その信頼に応えるべく、今後も私どもはCFD(計算流体力学)に精進します。何よりも、目の前の仕事に真摯に向き合う事で社会に貢献しようと考えています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
森川先生の本コラム第7回、ラピッドプロトタイピングがテーマです。 HighPerformance Computingの黎明期に提唱された概念で、高速に製品を試作するための開発手法です。 今はラピッドプロトタイピングの大部分が、AIによる探索に置き換わっているような気がします。
【建築環境解析の光と影 第7回「Rapidprototyping技術」】
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2月18日11:30からフジテレビ「Live News days」で、弊社シミュレーション動画が放映されました。 今回は避難所で生活する人達の環境に関して、人が歩いた時に巻き上げるコロナ飛沫核が、寝ている人にどう影響するかに注目しました。 足の動きで起こる床付近の気流を弊社移動物体解析が解明します。驚くような結果となりました。
【先月18日、避難所のコロナ飛沫核拡散シミュレーションがフジテレビで放映】
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コロナといい五輪といい、明るい話題がありませんね。困ったものです。
不織布マスク警察という人達がいるそうです。ウレタンマスクや布マスクはコロナ飛沫核の飛散防止効果が薄いそうで、それをわざわざ指摘するそうな。不織布マスク以外だと、入店できないお店まであるようです。
CFD(計算流体力学)的立場で言うと、ウレタンマスク・布マスクが不織布マスクより劣ると言う証拠はありません。と思ってネットを調べると根拠について触れている記事があって、富岳での呼気のシミュレーション結果でした。不織布マスクが、飛沫核が最も前に飛ばさない結果になっているそうです。
CFDではマスクなどの流動抵抗物をモデル化する際には、開口率と抵抗係数を使うのが常道です。富岳のシミュレーションは、詳しい条件設定が全く公開されていませんが、異方性の扱いの違いがある程度で、マスク材料は開口率と抵抗係数で表現されているはずです。しかしそれなら、マスクから漏れる気流に差はほとんど見られないはずです。何故ならば、マスクの生地そのものの流動抵抗よりも、マスクと顔面の隙間の抵抗が遥かに小さいからです。
口・鼻から出た呼気は、通りやすい経路を通ってマスク外に出ます。マスク生地の流動抵抗が大きいなら、通りやすい隙間を通れば良いだけの話です。それが自然界の摂理です。マスクをいくらきちんと装着しても、顔とマスクの間には隙間ができます。ヒモの張力があるので、マスクの下面と側面には隙間はまず出来ません。しかし上側の鼻周辺は、どんなにワイヤーを調整しても数mm程度の隙間が必ず出来ます。
今や毎日マスクをして生活している我々は、自分の息がマスクの隙間から常に漏れているのに気が付いているはずです。その漏れる量は、不織布マスクだろうが、ウレタンマスク・布マスクだろうが、変わる事はありません。どのマスクも前に呼気が大量に飛ぶなど最初からありえないのです。
もう1つ、呼気が前に飛ばない理由として、人体周りの熱上昇流があります。基本的に人体表面は体温なので、夏場での室内温度27℃と比べても10℃以上の差があります。当然のことながら人体周りの空気は熱せられて、上昇流となります。その速さは実測で0,3m/secくらいです。口や鼻の周りの空気は3 秒もあれば1m上へ登ってしまいます。人が吐き出す咳や呼気も体温なので、それ自身が浮力を持っており、やはり上へ上昇します。コロナの飛沫核が前に大きく飛ぶなど、これもまた有り得ないのです。
不織布マスク警察が如何にバカげているか、ご理解頂けたでしょうか。別のお話ですが、フェイスガード・マウスガードって、皆さんはあれどう思いますか? CFD的にはあれの方がむしろ問題かも知れません。良ければそのお話は次回で。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 明けて2021年となりました。皆様にはどのような年末年始だったでしょうか。大雪や緊急事態宣言発出など、波乱の幕開けとなりましたが、今年はどのような年になるのでしょう。
DXって何でしょう。デジタル・トランスフォーメーションなどと言われていますが、略称からすると明らかにデジタル・イクスチェンジ(Digital Exchange)です。何だかすごく新しいもののようですが、クリントン・ゴア時代に米国EDS(Electronic Data Systems)が提唱したEDI( Electronic Data Interchange)の受け売りに過ぎません。何故メディアはこんなカビが生えたものを、ITの新しい概念として喧伝するのでしょう。 EDS: <EDS-Wikipedia>
こんなものに安易に乗っかるとするなら、その企業は反省しなければなりません。ITについて今まで何も考えていなかった事になるからです。概念とすればデジタルツインの方がまだ時代に即していますし、実際に役に立ちます。 デジタルツイン: <デジタルツイン-Wikipedia>
日本はCALS(Computer Aided Logistics Support)の導入に先進国で唯一失敗した国ですが、それはBIMの普及にも影を落としました。日本のBIMは一部を除いて、失敗の烙印を押されかけています。ここでまたアジアの中でもIT技術で遅れを取るとなると、日本の製造業にとって致命的な事になりかねません。何度も言っていますが、この世界では騙すより騙される方が悪いのです。IFCだのGrasshopper連携だの役に立たない技術に拘るのは滑稽にさえ見えます。
国や経済界の意向などとは関係なく、我々は企業として個人として生き残る事を、自分の頭で真剣に考えなければなりません。その他大勢に迎合しない自立した思考がますます要求される時代となります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今年もいよいよ押し詰まってきました。コロナに明けコロナに暮れた2020年でしたが、来年は良い年になって欲しいものです。
FCV(燃料電池車)に至っては、内燃機関があってコストを削減しようがないし、水素のような危険なものを使う意味が分かりません。水素は他の可燃ガスに比べて、爆発限界(着火すると爆発する空気との混合比)が群を抜いて広いからです。数%から90%近くまで、ほとんどの混合比で爆発します。 こんなのを日常生活で扱いをミスればたちどころにドカンです。ヒンデンブルク号事件を想起させます。
自動車業界が酷いと思うのはそのボッタくり体質。1990年前半ではカローラクラスは100万円台前半でした。それが今では倍以上します。当時からこれだけ値上がりしたハイテク商品は車だけです。例えばPCは、90年頃はPC9801が100万円くらいしましたが、今では1000倍くらいの計算速度のPCが数万円で買えます。価格性能比だと10000倍以上です。車も相当な技術開発とコスト削減があったとはずですが、それらは一体どこへ消えたのでしょう?
これでトヨタ1社で年に数兆円もの利益だなんて、私は納得できません。そもそもカンバン方式なんて、インフラ投資もしないで道路を倉庫替わりに使う手法です。税金で作られた道路を食い物にするのはやめて欲しい。私は、日本車にお金を使うのがバカバカしいので、ドイツ車の中古しか買いません。 ドイツ車のハンドリングは良いですよ。ちなみにトヨタはここ数年世界一になった事はありません。VWが排ガス疑惑で落ち込んだ時も2位でした。
自動車技術会にCFD技術委員会と言うのがあって、CFDベンチマークが時々あります。昨年久々にあったセミナーを聴講したところ、タイヤの空力性能をテーマにしていましたが、1mmあるかないか分からないバリ(成形のハミ出し部)の評価でした。そんな小さなものをいくらつついても、さして意味はな いと思うのですが。思いもよらぬ自動車CFDのレベルの低下に鼻白みました。
建設業界に携わる方々は誇って良いと思います。建築は技術開発の裾野が広く、個々のテーマにおいてもかなりハイテクです。建てた建物は街のモニュメントとして何10年も機能し続けます。ボッタクリ価格を強いながら、たった数年で買い替えを迫る自動車業界は、資源と設計パワーの無駄使いです。
それでは皆様、良いお年を。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今年の流行語大賞は「3密」だそうです。笑えません。
日本の経済も回すどころではない事態になりつつありますが、その中で最近特に感じるのは都市銀行・大銀行の劣化・凋落です。先ほど会社の税金の払い込みにみずほ銀行に行って来ましたが、10月5日から法人対応の店舗が減少し、行った店舗では払い込み手続きを拒否されました。こんな事は初めてで す。銀行にとっても何のメリットもないと思ったので理由の説明を求めましたが、回答は全く得られませんでした。日本の金融業界で今何が起こっているのでしょうか。
戦後、著名な護送船団方式で磐石たる基盤を築いたはずの日本の金融業界ですが、金利ゼロ体制の深化で利ざや稼ぎが出来ず、経営収支が悪化しているのは一目瞭然です。それにしても、天下の都市銀行が法人対応を止めてしまいかねない勢いなのはどうなのでしょう。今日話した係員は、他行も続くよう な事を言っていました。
元々みずほ銀行に口座を作ったのは、今まで使っていた三井住友銀行が店舗数が著しく減少し、記帳すらままならない状況になったからです。三井住友と言えば三大都市銀行の一角だったはずですが、その凋落ぶりは尋常ではありません。店舗統合と言う名の店舗実質廃止が続いています。
一方で振込みに使っているジャパンネット銀行(振り込み手数料が安い)が、来年4月から「PayPay銀行」と言う名前に名称変更すると言うメールが来ました。カッコ悪い・・・。このまま使うのを継続するか悩んでいます。どなたか良い知恵はありませんか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今年もジングルベルの音を聞く季節となりました。しかし昨年までとは違って今年はどうなるのでしょうか。忘年会など控えている企業が多いそうですが、年の瀬だしやはり皆で会食したいと思うのが普通ではないのでしょうか。新型コロナウイルスの蔓延は生活にも大きく影を落としています。
GoToトラベルとかGoToイートが物議をかもしています。接触を少なくするのがコロナ感染防止の要諦だと思いますが、それをわざわざ大きくしに行く訳ですから、感染が広がるのが当たり前だと思います。
考えてみれば4月の緊急事態宣言も含めて、日本の大企業は出勤停止になった事がありません。企業毎に在宅ワーク・テレワークの推進で対応はしているようですが、夏以降は通勤電車のラッシュはまた復活しています。日本が新型コロナの死亡者が少ないのは、健康保険制度も含む臨床体制の充実が大きく功を奏していたのではないでしょうか。本当はロックダウンを含む本格的な施策がもっと必要なはずです。
コロナ対策を、我々一人ひとりが自分の問題として。真剣に語る時が来たのではないでしょうか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 緊急事態宣言後、メールが増えました。恐らく以前の倍にはなっているでしょう。会社としてMicrosoft365(Officeから勝手に名前を変えるな。)を全員分購入し、Zoomもオンラインセミナーなどのために有償版を購入しましたが、ネットでのコミュニケーション量は半端ない状況になっています。 皆様のところはいかがでしょうか。
弊社はオンライン会議利用はこの5月からですが、既に社内では定着し、社外の方とだけでなく、事務所出社者と在宅ワーク者とがかなり気軽にコミュニケーションを取っているようです。うちの人達、元々PCを使っての仕事に慣れているのは知っていましたが、ここまで適応力が高いとはビックリしまた。私はまだ招待メールすら自分で打てません…。私が社内きっての情報弱者であるのは、どうかご内密に。
弊社は現在の事務所を2004年3月に開設してから既に17年目ですが、ネットワークは当初からUSENさんの光にお世話になっています。驚くべき事にこのUSENさんの光ネットワーク、現在に至るまで全くのノンストップ・ノントラブルです。何とあの東日本大震災の時も一瞬も止まりませんでした。当時ソフトバンクが壊滅状態だったのに対し対照的です。光は素晴らしく早く、数10メガバイトのファイルは、社内ならメールに添付して送ってしまいます。
ネット社会の進展に日々眼を見晴らされますが、一方で困るのはスパムメールの増加です。私のところに来るメールで多いのは、日経BP、NTT、朝日新聞、Intel辺りです。全くのセールスメールですが、数10通に1通くらい見ておきたいメールもあるので、配信停止にする事も出来ず厄介です。取り敢えず迷惑メールフォルダーに振り分けて後から消してますが、日経BPさん一日に数10通ものセールスメールはやり過ぎです。オオカミ少年じゃないですが信用なくしますよ。いやもう信用してませんが。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 秋らしい気候になりました。そろそろ冬のオーバーとか用意しなければなりませんが、今年のクリスマス商戦とかどうなるのでしょう。
コロナ関連の気流シミュレーションを通して、我々が従事しているCFD(計算流体力学)について、最近思うことがあります。日本には30種類以上の熱流体解析ソフトが流通していますが、そのどれもこれもが同じような答えを出すと、皆さんは思っているかも知れません。しかしそれは正しくありません。
構造解析のような線形問題ならそうでしょうが、熱流体問題は非線形であるのが特徴であり、その本質はカオスであり常に時間的に変動しています。 離散化手法、利用した格子、境界条件、乱流モデルなどによって、出される解はソフト毎にみんな違います。 あるソフトで出された答えは、他のソフトでは異なるのが普通です。
その中でも取り分け問題視されるのが、陰解法とRANS(レイノルズ平均ナビエストークス)乱流モデルです。陰解法は計算が速いので重宝されますが、途中の流れ場計算をはしょって得た最終解が正しいと言うのは有り得ません。途中の非定常状態を経由してこそ、熱流体問題の解は意味を持ちます。弊社 は基本的に陽解法しか使いません。陰解法はおかしな答えを出すからです。
RANSの利用は、それよりも悪いかも知れません。その性質上、旋回流や噴流には使えませんし、時間的に常に変動する流れ場に対して、わざわざ時間平均の乱流モデルを適用する意味が分かりません。計算が速いと言うのが利用される理由だったようですが、LESやDNSで計算するのと当時から計算時間は余り変わりません。弊社は現在LES・DNSしか使いません。
で、その陰解法とRANSを常に組み合わせてCFDをやっているのが、弊社のソフト以外を使っている人の普通の状況です。その結果を見た他の業界の人が建築CFDをバカにしないか心配です。
弊社がコロナ関連の換気シミュレーションや、自然換気問題、移動物体問題、風荷重風圧解析問題などに強いのは、陰解法やRANSが通用しない問題だからです。基本には常に忠実であるべきなのです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ あっと言う間に寒くなりました。ついこの前まで半袖だったのがウソみたいです。季節は早足で冬に向かっています。それにしても忙しいです。まだ年末期末は遠いのに、既に仕事はたくさんあります。有り難い事です。
最近いくつか、おや?と思う事があります。劇場やパチンコ屋で水蒸気粒子だかの可視化を見せ、それらが短時間で消えるのを指して「換気は十分だ」とするものです。しかし実際には、コロナウイルスの飛沫核が直径約0.3ミクロン、可視化されている粒子の直径は見たところ約100ミクロンです。
この2つの粒子の沈降速度(終端速度)は、私が計算したところによると、それぞれ2.6ミクロン/secと0.23m/secです。大きく違います。可視化された100ミクロンの粒子は、何もしなくても数10秒で床に落ちてしまいます。それに対してコロナウイルスの飛沫核は、一日経ってもたった2.2cmしか空気 中を降下しません。
コロナウイルスは小さいが故に、わずかの気流速度でもいつまでも空間の中を舞い続けます。コロナ対策には、基本を踏まえて空間の流れ性状をきちんと把握する必要があります。子供騙しの可視化実験では何も分かりません。
劇場やパチンコ屋は安全だと強弁したいとしても、誤った事実をメディアを通して拡散するのは考えものです。コロナを避ける手段に関して、一般の方に誤解を与えるからです。感染症の専門家と言われる人も含めて、私がお目にかかった範囲では、医療関係者は物理学に弱いと言うのが、残念ですが現実 のようです。大学受験の成績は良いはずなのに何故でしょうね。
自分や家族、友人の安全に関わる事ですから、何事も自分で確認して判断される事をお勧めします。IT業界では常識ですが、騙す方より騙される方が悪いのです。自分の身は自分でしか守れません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ あっと言う間に涼しくなりました。少し前までのあの暑さがウソのようです。巷ではGOTOキャンペーンとやらで先の四連休は行楽地ではかなりの人出だったようです。また第三波・第四波が心配なところではありますが、一方では仕事もしなければならず、悩ましい今日この頃です。
奈良・京都で学生時代を送ったお陰で、神社仏閣には頻繁に参拝し、多くの仏像などに親しんで来ました。奈良の大仏や運慶・快慶も良いのですが、最も美しいと思ったのは秋篠寺の伎芸天でしょうか。 「秋篠の御寺の中の伎芸天、何の縁か我にもの言う」
一方で、コロナ関連の気流シミュレーションと言いながら、熱を全く考慮していないシミュレーションが報道されている事もあるようです。熱を考慮しないと人体周りの上昇流が表現できず、呼気や咳の解析が困難になるのは、建築環境工学では自明なのですが。どんな良いハードウェアを使って いたとしても、これでは「仏作って魂入れず」です。大変残念です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 常識と思っていても、ある日を境にその常識が通用しなくなる事があります。例えばこの新型コロナ禍がそうでしょう。昨年の今頃、いや今年の初めであっても、今のような、全員がマスクを着けて密を避ける生活を強いられるとは、一体誰が想像したでしょう?オリンピックの延期や飲食店などの一斉休業なども、今までの常識ではおよそ考えられない事です。在宅勤務・テレワークの急速な普及は、我々の労働環境を一変させました。そしてそれらは、我々の生活や社会活動の中で、恒久的に根付きそうです。
そして更に戦慄すべきは、この変化が全世界に及んでいる事です。神の加護で守られたとか言う国は、残念ながら1つも無かったのです。米国・ロシア・中国などの超巨大国から、アジア・アフリカ・南米の発展途上国まで、等しく新型コロナ禍の中にあります。未だ人種差別で争う国が多い中で、新型コロナウイルスは、どの人種に対しても、金持ちにも貧乏人にも、一切の差別をしなかったと言う現実が眼の前にあります。人間が如何に恣意的な行動を取ろうと、自然による淘汰は過酷なほどに平等です。
我々は、政治や経済、社会様式などが、劇的に変化している時代に立ち会っているのかも知れません。変化を受け入れ、適応した者が覇者となるのは世の常です。攻撃力に特化した恐竜が、酷寒でも生きられる小型の哺乳類に駆逐される光景を、我々は政治や経済・軍事などの世界で、これから目撃するの ではないでしょうか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ お盆休みも終わりましたが、危険なほどの暑さが続いています。コロナ禍ではありますが、皆様には熱中症にならないようお願いします。
お盆休みなのに読む雑誌がなくて困りました。7月の4連休も含めて、休刊になった週刊誌が非常に多いです。 私はコミック好きですが、週刊での連載をここ1ヶ月で1回か2回しか読めなかった作品がいくつかあります。 出版不況と叫ばれて久しいですが、活字離れが激しくなった理由は、本当に読み手 の側にあるのでしょうか?
そうではないと思います。せっかくの読者の元に作品を届けるチャンスを、述べたように出版社自らが放棄しているのが実情です。ビジネスチャンスを自分の手で失っておきながら、それを読者の活字離れのせいにする。その無神経さが私には理解しかねます。
人並みに休みが欲しいと言うなら、出版の仕事に就かないで欲しいと思います。昔、「R」と言う出版業か広告代理店か分からない企業に居た事がありますが、社内ことわざに「暗いうちに帰りたい。」と言うのがありました。意味はご想像にお任せしますが、楽して稼げる仕事などないと言う事です。
次の大型連休では、各誌の連載を楽しめるようになっていて欲しいものです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 将棋界では藤井聡太新棋聖が誕生しました。弱冠17歳11ヶ月での戴冠は新記録だそうです。ちなみに弊社コンサルタントの東大名誉教授加藤信介先生も愛知県瀬戸市出身で、藤井棋聖と小学校が同じだそうです。やはり天才には共通点があるのでしょうか? 味噌煮込みうどんを食べて頭が良くなるならあやかりたいです。
プロとアマの差が激しいのは将棋とボクシングだそうです。アマはどんなに頑張っても絶対にプロには勝てない。野球や囲碁がプロとアマの差が縮まっているのと比べて対照的です。
我々のCFDの世界ではどうでしょうか。アマと言うと大学の先生や学生さんになるのでしょうが、昔と違って今は市販のCFDソフトを使う人が多いようです。という事は、CFDをアルゴリズムを組んで解く人、は確実に減ってきていると言えます。
CFDスキームの事を話題にする人に出会うのは希になりましたし、確実に日本のアカデミアの地盤沈下は進んでいるように思います。これは独法化、国立大学法人化と縁のない事ではないと思いますが、この流れは押し返せないのでしょうか?
そう言った中で、建築・土木の流体解析の大御所、日野幹雄先生の書かれた本が先日出版されました。非常に大部の本で厚みが5cm以上あります。これでぶん殴ったら人を殺せると行った人がいましたが、驚くのはこの本を80歳を越えた日野先生が、ほとんどご自身で執筆されたという事実です。自ら率先して学問の光をかかげるその姿には、自然と頭が垂れざるを得ません。
「乱流の科学: 構造と制御」: <パンチカード-Wikipedia>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ また新型コロナの感染者数が増えているようです。やっと戻ってきた日常なので、緊急事態の再宣言は願い下げにしたいところです。
学生時代を京都で過ごしました。7月と言えば祇園祭。宵々山・宵山のあの「コンチキチン」の音を今でも鮮やかに思い出します。8月は大文字送り火、舟形・妙法などの文字が遠くの山腹に火で描かれるさまは、夏の風物詩であると同時に、我々の来し方行く末について思いを馳せざるを得ません。
京都と言うのは華やかな印象とは裏腹に独特の土地柄です。 江戸遷都まで長らく支配者階級の街であったので、町家の人々の為政者への視点は、他の都市とは一線を画します。権力者の言い分を斜に構えて受け流し、ここぞと言うところでは強い反骨精神が顔を出します。
京都大学という大学があります。今でこそ尾羽うち枯らしていますが、東京大学に伍して研究活動にはプライドがありました。例えばノーベル賞受賞者数は今でも全国でダントツです。昔から足切り点のない大学で、数学がゼロ点でも総合点数が足りていれば数学科に入れます。そう言った気風が研究活動での自由な発想を醸成するのでしょうか。
京都大学では、新入生が入学すると行動パターンが真っ二つに分かれます。勉強する学生と遊ぶ学生です。勉強も遊びも一生懸命で真剣でした。今の若い人がかわいそうなのは、そういった真剣度を評価してくれる大人が少なくなった事でしょう。しかし頑張っていれば、見る人は見ています。我々もそう信じて日々仕事に向かっています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇CFD千夜一夜第25夜「アントレプレナー」 ◇京都アニメーション 火災シミュレーション ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【CFD千夜一夜第25夜「アントレプレナー」】 お陰様で3年目に突入した、東大名誉教授加藤信介先生のCFD千夜一夜。 第25夜はアントレプレナーを題材に取り、学生への教育の現状や今後のCFDの あるべき姿を語っておられます。 一方でCFDという言葉は、一般では電子金 融取引を指す言葉になってしまいましたが・・・。 https://www.env-simulation.com/jp/senyaitiya/index_25.html バックナンバーはこちら。 https://www.env-simulation.com/jp/senyaitiya/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【京都アニメーション 火災シミュレーション】 今月であの痛ましい事件から1年を迎えます。 私どもは事件から数日以内に 3次元煙流動シミュレーションを実施し、ホームページに掲載しました。 今回 そのシミュレーションについて、2つのテレビ局からの取材を受けましたが、 あらためて建物の火災安全に関して考える機会にしたいと思っています。 何故あのような大惨事になったのでしょうか。 何か事前に防ぐ手段はなか ったのでしょうか。 みなさんと考えたいです。 /jp/?p=5680 放映予定:7月17日(金) NHK総合・近畿管内「かんさい熱視線」 7月17日(金) テレビ大阪「やさしいニュース」 (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ GAFAと言う言葉を聞いた事がありますか。Google、Amazon、Facebook、Appleの事で、米国を代表する先進IT企業とそのビジネスモデルを指します。しかしこの4社のビジネス、我々がお手本にしなければならないほど立派なものでしょうか。最近の事情を見ると必ずしもそうではないようです。
京都に喫茶アマゾンと言うお店があるそうですが、数年前から間違い電話が頻繁に掛かって来るそうです。「商品がまだ届かないんだけど。」「カスタマー部門に繋いで下さい。」アマゾンではなく喫茶店だと言っても、「ああ喫茶部門ね。カスタマー部門に繋いでくれたら良いから。」と取り付く島なし。
何故このような事が起こるのでしょう?その理由はアマゾンのビジネススタイルにあります。私も経験がありますが、何かクレームを入れたいとき、聞きたい事があった時に、その窓口がいくらホームページを探しても見つかりません。さんざん探してると、ある事はあるのですが、非常に分かりにくい。 これはGoogleもAppleも同様です。
我々は解析企業ですからサポートを非常に重要視しますが、GAFAは違います。意図的に問い合わせやサポート窓口を分かりにくくしている。最終的に何かしなければならない時は、商品の交換で対応するだけ。手間のかかる説明とか修理はしません。そうする事によって、対応するシステムや人員のコスト ダウンを図っている。彼らは利益の非常に大きな企業ばかりですが、その力 の源泉の1つは、顧客にコストを掛けないビジネススタイルにあります。 四半期での利益を重視する外資企業は皆そうなります。
それに対して、日本人と言うかアジア人は、「一期一会」とか「情けは人のためならず」とか、人と人との縁を大事にします。私どものビジネススタイルもこうした考えに根ざしています。1994年からこの仕事を始めましたが、その当時からお付き合い頂いている企業様が少なからずおられます。社会情 勢が変わろうが、永くお付き合い出来る心強いお客様達です。
売上げや利益の多さを求めるビジネスは、このコロナ禍で変わらざるを得ないでしょう。社会に何を貢献出来るか、我々の生活をどうやって良くする事が出来るか、次の世代に何を残せるか。今、企業や我々に問われています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 非構造格子(Non Structured Grid)という言葉がCFDにはあります。有限要素法的な4面体要素やプリズム要素・6面体要素を使った格子で解析をする手法で、形状への追随性を重視する機械系や空力系のCFD解析で今まで発展して来ました。この非構造格子が建築でも良いと主張する人が最近増えているようですが、良いと言うのは本当でしょうか?
非構造格子の長所は、言うまでもなく解析形状への追随性の良さにあります。とにかく見た目はそれらしい格子が作れます。しかしそれがCFD的に見て性能が良いかと言う事とは全くの別問題です。
よく見かけるのは、要素が等間隔で整然と並ぶモデルではなく、大小様々な形の要素がランダムに空間を埋め尽くすモデルです。そう言う格子を自慢する人も居ますが、それは大きな間違いです。
どのようなCFDスキームも上流性を持っていますから、大小の要素が無作為に並んでいると下流への乱れが正しく伝わりません。何故なら計算の各過程の物理量は、格子スケールで平均化して扱われているからです。細かい乱れを扱っているつもりでも、大きな要素が1つでも途中にあると乱れは小さくな るし、物理量の変動も平均化されてしまいます。
またCFDでは、流れは格子に沿って伝わりやすいと言う特性がありますから、格子の向きがランダムに変化する非構造格子が、構造格子より精度が高いはずはありません。更に非構造格子は、コントロールボリュームに持たせる変数が多い分メモリに負担を掛け、扱える要素数は著しく小さくなります。そこを要素の大小を使い分けてカバー出来ると良いのですが、前述のようにそれは精度を著しく落とす原因になります。解析モデルの作成にやたら時間が掛かるのも非構造格子です。
構造格子は、斜めや丸い形状には確かに追随しませんが、メモリを食わないという長所を活かして、格子数を増やす事でかなりカバー出来ます。研究論文が多く解析精度に不安がない点や、アルゴリズムが単純なので計算時間でも大きなアドバンテージがあります。モデル作成も時間が掛かりませんし、弊社のSuperCartesian法のように形状への追随性の良い手法も開発されています。
非構造格子が有効なのは建築では極めて限定的です。躯体形状はほとんどの場合四角いのです。高くて使いにくいソフトウェアを買わせてやろうと言うソフトウェアメーカーの思惑に、それでもわざわざ乗っかりますか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇ライダー計測点群データから迅速に空調換気解析 ◇大和ハウス工業伊藤久晴氏 BIM緊急提言その2 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ライダー計測点群データから迅速に空調換気解析】 バックパック型可搬レーザーライザーによって採取した大規模3次元点群デ ータ(1億点以上)から、ポリゴンを経由せず建物躯体データの直接モデル化 が可能となりました。 コロナ禍を回避する空間検討に必須のツールです。 今回開発した解析の手順は以下のようです。 (1)バックパック型可搬レーザーライザーは、対象空間周辺を移動しながら 計測する事により、簡単に3次元点群データを採取出来ます。 (2)得られた点群データをWindPerfectで直接読み込みます。 (3)点群データに角度修正及びトリミング処理を実施。 (4)点群データからポリゴンデータを経由せず解析用モデルを直接生成。 (5)給排気条件、熱条件などを設定しCFD解析。 可視化と報告書作成。 点群データさえ得られれば、解析開始までは何と約30分くらいしか掛かりま せん。 図面調査やモデル作成などの工数・時間を大幅に短縮出来、迅速な検 討や対策の立案が可能となりました。 /jp/service/5/daikibotengun.php 「最先端の調査で避難所のウイルスがたまる場所を分析(静岡SBSテレビ)」 https://www.at-s.com/sbstv/videonews/index.html?id=-k-vYjVKIJM 「バックパック型可搬レーザーライザー」日本DMC株式会社 https://dmcmaas.co.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【大和ハウス工業伊藤久晴氏 BIM緊急提言その2】 「なぜ日本のBIMはダメなのか?」 日本のBIMの第一人者、大和ハウス工業 伊藤久晴氏のBIM緊急提言第4回目が、ITメディアWebで公開されました。 現場で頻発する設計データと施工データの乖離、2次元CADとRevitでの2重CAD 作成が引き起こす問題に取り組み、施工BIMの本質を見据えます。 もちろん施工BIMでも、CFDシミュレーションは必須です。 https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2006/17/news013.html (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 東京アラートも解除され、ようやく仕事が活発に動いて来た気がします。一方で、30℃を越える気温でマスクをして移動するのは辛いです。日射と自分の息で蒸せかえりそうです。誰か涼しくて息のしやすいマスクを開発してくれないでしょうか? CFDでお前がやれと言われそうですが・・・。
今日発売の週刊ポストに弊社の記事が載っています。「電車、飲食店、オフィス 感染する席、しない席」です。今回、全国放送のテレビでシミュレーション動画が10回以上紹介されていますが、こういう一般の週刊誌にCFDの記事が掲載されるとは私どもも思っていませんでした。シミュレーションで分かった事を、出来るだけ正確に平易に記者さんには伝えたつもりですが、記事になったものを読んでみると何となく雰囲気が違います。
突貫工事でシミュレーション動画を各局に提供しています。5月12日放送のTBSテレビ「あさチャン」が皮切りでしたが、電話で依頼があったのは前日の14:00頃。それから何度もやり取りをして最終的に4パターンのシミュレーション動画を納めたのが深夜2:00頃です。半日のスプリントレースでしたが幸いにも動画は好評で、TBSテレビ、テレビ朝日、日本テレビなどで何度も再放送されました。
TBSの視点は秀逸でした。「エアコンは換気能力がない」と言うのは建築設備の人間には常識でしたが、一般の方や施主さん界隈はご存知なかったようです。そしてエアコンの使い方や窓を開けての換気まで言及し、良い啓蒙になったのではと思っています。それにしても、他の流体ソフトでは何故テレビ放送対応が出来ないのでしょう? 使いやすさや解析速度を自慢するなら、うちよりもメディアに取り上げられて良いはずですが・・・。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇CFD千夜一夜第24夜「楽しいことを考える」 ◇来月より「熱流体解析の光と影」掲載開始 ◇「換気と咳の話」ページリニューアル ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【CCFD千夜一夜第24夜「楽しいことを考える」】 加藤信介東京大学特任教授&名誉教授の熱流体解析随想、CFD千夜一夜。 ちょうど2年目の第24夜。 今回は趣を変えて「楽しいことを考える」がテー マです。 かの有名なミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」に 題材を取り、映画の詳細にも触れています。 巣ごもりニーズでこの映画を見 られた方も多いと思います。 ちなみに私は「すべての山に登れ」が好きです。 https://www.env-simulation.com/jp/senyaitiya/index_24.html バックナンバーはこちら。 https://www.env-simulation.com/jp/senyaitiya/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【「熱流体解析の光と影」掲載開始】 来月から、森川泰成先生のコラム「熱流体解析の光と影」の掲載を開始し ます。 大成建設技術センター長、千葉工業大学教授を歴任された経験と知 識を活かして、建築環境系の熱流体解析の過去・現在・未来を俯瞰しつつ、 シミュレーションや評価手法のあるべき姿について思いを馳せます。 乞うご期待! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【「換気と咳の話」ページリニューアル】 従来の「換気と咳の話」に咳のシミュレーションの話題だけではなく、簡単 な換気の解説などを追加しました。 いきなり咳のシミュレーションを説明し ても、一般の方にはハードルが高いと考え、先ずは基本知識を身に付けて頂き たいと思っています。 テレビや雑誌のパブリシティ情報につきましても、整 理したものを弊社サイトで掲載する予定です。 /jp/service/5/seki_jirei.php
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 緊急事態宣言が解除され、繁華街や店舗は活況を取り戻しつつあるとの事です。取り敢えずの一段落ですが、何よりだと思っています。
友人からのメールですが、非常に意味深い内容を提起されました。
「コロナ騒動でよかったことは、安易に重要な部品、食物、ソフト類を海外依存していたらどういう事になるかが明白になったことです。今後このような(計画的に仕組まれた)危機が何年かおきに起こりうるということです。普段何も考えない人でも気が付いたはず。
市場に関しても、昔は世界に誇れる中間層が支える国内マーケットが日本にはあったのが、新自由主義という欧米の国際戦略に惑わされ、貧弱になってきています。これも転換させねばなりませんね。
あらゆる方面からの要請で、近い将来は、国産独自ソフトの重要性が大きく見直される時代になります。」
非常に示唆に富む意見で私も同感です。我々はこれまで以上に地図のない時代を生きなければならないようです。国産ソフトの開発、頑張りたいです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇CFD千夜一夜第23夜「システム」 ◇ITメディア掲載 大和ハウス工業伊藤久晴氏 BIM緊急提言 ◇BIM風関連解析 -WindPerfectV5.1a新機能紹介- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【CFD千夜一夜第23夜】 加藤信介東京大学特任教授&名誉教授の熱流体解析随想、CFD千夜一夜。 今回のテーマは「システム」。 入力と出力と言う行為の意味から始まり、 「三銃士」や谷崎まで話題は広がります。 SEと言うのは定義の難しい職業です。 今は居ないようですが、昔はプログ ラミングやシステム運用が相当出来る人が情報システム部に居て、私も若い頃 そう言う人に弟子入りしてスキルを磨きました。 お陰で大型計算機に投入し た自分のジョブのプライオリティを勝手に上げたりして、大いに顰蹙を買って いました。 大型機のメモリが16MB、計算速度が数MIPSの頃ののどかな話です。 https://www.env-simulation.com/jp/senyaitiya/index_23.html バックナンバーはこちら。 https://www.env-simulation.com/jp/senyaitiya/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【大和ハウス工業伊藤久晴氏 BIM緊急提言】 大和ハウス工業伊藤久晴氏の、コロナ災害に対するBIM緊急提言がITメディ アWebで公開されました。 WindPerfect/e-flowで、BIMによる災害のCFDシミ ュレーションを今まで行って来ていますが、そのいくつかを今回引用頂いてい ます。 災害や極限状態の検討ほど、BIMを利用したシミュレーションが有効です。 https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2005/20/news019.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【BIM風関連解析 -WindPerfectV5.1a新機能紹介-】 新しいWindPerfectV5.1aは大きく機能向上を果たし、テレワークにも対応し た高性能な熱流体解析ソフトウェアとなりました。 今回開発した多くの特徴 をご紹介します。 ◆Intel HD Graphics搭載のノートPCで稼働が可能 ◆柔軟なライセンス運用を可能とする遠隔(WAN)認証システム ◆入力が楽で迅速な条件設定が可能なBIM風解析システムを実装 ◆簡単にRevitデータを取り込めるダイレクトリンク機能を搭載 ◆ターンアラウンドを大きく稼げる高速ソルバーを装備 ◆多彩で自在な表現の可能な結果ビジュアリゼーション(可視化)機能 ◆DXF、SketchUp、Rhinocerosデータも取り込み可能な多様なBIM連携 /jp/sn_sof/wpv5.1a_panf.pdf (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ テレワークが普及するご時世になっています。弊社でもGW以降テレワークを本格化し、全員完全フレックス勤務に移行しています。いろいろな失敗や蹉跌を繰り返し、徐々に慣れつつはあります。これはある意味産業革命です。
大企業はテレワークが普及しているとか適しているとの風評がありますが、実際はそんな事もないようです。あるのは、飲食や運送・介護などの、元々テレワークに適さない業種です。我々もまだまだ慣れないですが、我々以上にたどたどしい方たちもおられます。余計な恐れは無用です。
そしてこのテレワークのための、新しいルールが出来つつある事も事実です。曰く、弊社がWeb会議のルールとして社内に通達した内容は次のようです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇特別寄稿2:新型コロナウィルスの感染対策としての室内換気設計 ◇コロナ関連換気シミュレーション、テレ東でも放映 ◇弊社技術サポート、セミナー、相談会などについて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【特別寄稿2:新型コロナウィルスの感染対策としての室内換気設計】 東京大学特命教授&名誉教授の加藤信介先生に、「正しい換気」の第二弾の 解説をお願いしました。 制気口を用いた気流制御や換気の基本的考え方、 換気効率解析の適用法まで言及されています。 一読して頂き、皆様の知識 強化に役立てて頂ければと思っています。 https://www.env-simulation.com/jp/senyaitiya/special_edition_2.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【コロナ関連換気シミュレーション、テレ東でも放映】 既にお伝えしたように、過日TBSテレビやテレビ朝日等で、弊社のコロナ関 連換気シミュレーション動画が全国放映され、大きな反響を呼びました。 「エアコン風で“咳粒子”部屋中に充満 すぐに換気を[2020/05/15 20:24]」 https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000184068.html 26日、テレビ東京の「ワールド・ビジネス・サテライト」でも放送されます。 宜しければまたご覧下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【弊社技術サポート、セミナー、相談会などについて】 弊社ではコロナ禍において業務のテレワーク化を実施しており、技術サポー ト体制の見直しを図っております。 また、過密を避けるために事務所の在席 人員を減らさざるを得ず、今後次のような対応とさせて頂きます。 ・当日即日での電話応対は原則お受け致しかねます。 ホームページから電話 される日時等をご予約下さい。 ・メールでの対応は、これまで通りお受けしております。 その際はご相談され る問題のデータも、必ず添付等でお送り下さい。 ・Web会議システムでの技術サポート対応を始めます。 ご希望の際は、ホー ムページからご予約をお願い致します。 招待メールを差し上げます。 弊社では、ZoomとMicrosoftTeamsでの会議・打ち合わせ対応が可能です。 ・相談会等も、原則Web会議システムでの対応とさせて頂きます。 ・セミナー、ユーザー会も、Web会議システムでの開催となります。 ・ソフトウェア導入時講習会は、従来通りの扱いとなりますが、場所・人数 などの開催条件について、入念に協議させて頂きます。 ・ソフトウェア操作のチュートリアルなどは、ホームページのアニメーション 掲載を、今後拡充して参ります。 皆様には諸所ご迷惑をお掛けし申し訳ございません。 何卒ご理解を賜り たく、宜しくお願い致します。 /jp/sn_info/form50.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ TBSテレビ「あさチャン」、名古屋CBCテレビ「ゴゴスマ」、テレビ朝日「スーパーJチャンネル」など多くの番組で、弊社のコロナ関連換気シミュレーションの動画が取り上げられ、全国放映されました。
今回、テレビ局からリモートでインタビューを受けました。弊社はGW明けからテレワークに移行しましたが、その準備のため、Microsoft TeamsやZoomなどで、Web会議の体制を整備していたので慌てずに済みました。
実際にZoomでTBSテレビとテレビ朝日の2社から取材を受け、お客様とも解析業務の打ち合わせを既に数件こなしていますが、これはこれでかなり使えると実感しています。 実際に会って話をするのに比べれば確かに情報量は落ちますが、相手の姿や声に移動時間なしに触れられるメリットは大きいです。
家からの利用での背景の変更も自由だし、インカムも用意しましたが声はよく通るので、特に必要は感じませんでした。 長いものでは2時間を越える打ち合わせもありましたが、不便や疲れは感じていません。現地調査を含まない打ち合わせは、これで間に合ってしまうのではないでしょうか。 弊社も今年のセミナーやユーザー会は、今後Web会議で行おうと考えています。
社会と仕事のあり方の大きな変革期に、我々は居合わせているようです。皆様とは、ZoomやTeamsでまたお会い出来ればと思います。もちろん呼んで頂ければ、喜んでお伺い致します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇弊社コロナ関連換気ミュレーションがTV全国放映2 ◇咳のシミュレーション解説 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【弊社コロナ関連換気ミュレーションがTV全国放映2】 弊社が作成したコロナ関連の換気シミュレーション動画が5月12日TBS「あさ チャン」で全国放映されました。 また同日の「Nスタ」でも放映され、翌日 のTBS系列名古屋CBCテレビでも放映がありました。 今度の動画の反響は非常に大きく、15日もテレビ朝日「スーパーJチャン ネル」で放映されました。 こちらはテレビ朝日のホームページにニュースが 出ていました。 かなり分かりやすい内容になっていると思います。 「エアコン風で“咳粒子”部屋中に充満 すぐに換気を[2020/05/15 20:24]」 https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000184068.html 我々が居住する住戸や労働するオフィスも含めて、大半のエアコンに換気能 力はありません。 我々建築設備に携わる者には当たり前の事ですが、一般の 人の大半はこれを知りませんでした。 家庭の壁掛けエアコンもオフィスビル の天井カセットも、24時間換気がない場合は換気能力がない事は自明です。 要するに今までの冬季も含めて、我々は家庭でも仕事場でも、換気のない場 所で生活していたのです。 これでは3密以前の問題として、新型コロナ肺炎 感染者が減るはずもなかったという事になります。 高層ビルの上階部分は、窓ははめ殺しで通風換気は出来ません。 換気性能 は、これからの建物用途や運用を決める上での、極めて重要なファクターとな るのは間違いありません。 使えない建物など建てても意味がないからです。 躯体が立ち上がっていないプロジェクトは、施主がこれから計画変更を希望 する場合もあるかも知れません。 設備設計の検討にこれからますますCFDは 重視されるでしょう。 但し、熱的問題などで解析精度が伴えばの話ですが。 全国放映に関しては弊社サイトでページを開設し、あらためてご紹介致したい と思います。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【咳のシミュレーション解説】 /jp/service/5/seki_jirei.php 前回メルマガで紹介しましたが、やや説明不足ですので補足したいと思います。 <人体周りの熱対流> 人間の体温は37℃で、室内の周りの空気は夏でもせいぜい27℃くらいですから、 身体の周りには常に緩やかな上昇流が起きています。 感染防止の視点で 見れば、咳や普通の呼吸の気流が、その上昇流のバリヤーを越えて広がるかど うかが問題です。 結論から言えば咳の場合は易々と上昇流を越えます。 <咳のシミュレーション - エルボー有り、マスク無し> 気道と口蓋で構成されるエルボー(角部)を考慮すると、流れは非常に複雑 になり、遠くには飛ばず広がり易くなります。 つまり、咳をした者の顔の近 くに居ると危険です。 咳をした人がその瞬間だけ横を向いても、感染防止に はほとんど意味がない事も分かります。 <咳のシミュレーション - エルボー無し、マスク無し> 頭部を拡大した気道と口蓋部のシミュレーションは下記のリンクのようです。 https://biz.datadeliver.net/receiver/file_box.do?fb=ef71a3d437c844bbad0c7dc1f5ffdbcb&rc=796a64b788304bada653762b0912f369&lang=ja エルボーがないと口からの噴流は真っ直ぐ飛ぶだけですが、これは実際の現象 とは全く違います。 咳は2mも飛ばないですから、射線上を避けても無駄です。 <咳のシミュレーション - マスク装着> マスクをして咳をすると、前方には飛びませんが、その代わりマスクの隙間 から呼気が吹き出します。 マスクは通常は側方より上の方が隙間が大きいの で、主にマスクよりも上の顔の表面をかすめて上昇します。 そのため、咳を した後は顔の鼻より上は手で触らない方が良い事になります。 <呼吸のシミュレーション - マスク無し> 通常の呼吸の呼気は、人体周りの上昇流を越えられず、上昇流とともに上方 に上がります。 これはマスクをしてもしなくても同様です。 この場合も呼気 は顔の周りに滞留する事に気をつけたいものです。 咳でも普通の呼吸でも、マ スクをしてもしなくても、呼気は顔の比較的近くに漂っています。 ソーシャル ディスタンスが常に必要な理由です。 CFD(計算流体力学)シミュレーションで分かる事は非常に多いです。 皆さ んも、役に立つ換気シミュレーションを始めませんか? 弊社ではユーザー様 にも一般の方にも、無料相談会を広く実施しています。 /jp/sn_info/form50.html (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今朝、TBSテレビ「あさチャン」にて、弊社のコロナ関連換気シミュレーションが取り上げられ、全国放映されました。
夏日で大変暑くなってきた昨今、エアコンを掛ける日が多くなってきました。しかし、家庭やオフィスで使われているエアコンの大半は換気能力はありません。この今まで皆さんが(私どもも)余り気付いていなかった視点で、TBSテレビが大変ユニークな問題提起をしました。
また、空調中に窓が開くという事は当然漏気があるので、省エネ的な視点でも大きな問題でしょう。 今後議論されるべきです。
なお本題材は、同TBSテレビ「ひるおび」「Nスタ」でも取り上げられるそうです。宜しければご視聴下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇弊社コロナ関連換気ミュレーションがTV全国放映 ◇「再掲」咳や呼吸をシミュレーションで再現する ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【弊社コロナ関連換気ミュレーションがTV全国放映】 我々が居住する住戸や労働するオフィスも含めて、大半のエアコンに換気能 力が無い事は、建築設備の人間なら誰でも知っている事です。 しかし、今夏 以降は、これが大きな問題になりそうです。 世の中を震撼させている新型コ ロナ肺炎の感染拡大防止のため、部屋の中は定期的に換気せざるを得ないから で、非常に頭の痛い問題です。 取り敢えず建築基準法に則っていれば各部屋に換気口はあるでしょうが、ほ とんどは穴が空いているだけの成り行き換気のためのものです。 法令通りの 換気が出来る代物ではありません。 いきおい窓等を開けての換気になります が、空調中に窓を開けるなど今までは考えられなかった事です。 また、空調中に窓を開けると言う事は当然ながら漏気があるので、省エネ的 に大きなマイナスです。 これが日本だけではなく世界中もですから、今夏以 降の世界全体のエネルギーロスは莫大なものとなるでしょう。 今朝全国放映された、TBSテレビ「あさチャン」にて、弊社のコロナ関連換気 シミュレーションは、エアコンで冷房されているリビングルームで窓を開けたら どうなるかと言うものです。 ウイルスの室内での発生を織り込んでいますが、 実はエアコンの吹出し方向が斜めか水平か垂直かで、ウイルスの拡散状況は異な ります。 また窓から入った新鮮外気の挙動も注目されるところです。 詳しくは弊社サイトでページを開設し、次回メルマガでご紹介しますが、今回 は静止画のみご覧頂ければと思います。 https://biz.datadeliver.net/receiver/file_box.do?fb=9bbbe5d6f754469da2afadddbad1261a&rc=c77ef7c522084fb39b5a7c51930e500a&lang=ja ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【咳や呼吸をシミュレーションで再現する1】 /jp/service/5/seki_jirei.php 何故エルボーの再現が咳のシミュレーションに必要なのでしょう? 頭部を拡大したシミュレーションは下記のリンクのようです。 https://biz.datadeliver.net/receiver/file_box.do?fb=ef71a3d437c844bbad0c7dc1f5ffdbcb&rc=796a64b788304bada653762b0912f369&lang=ja エルボーがないと口からの噴流は真っ直ぐ飛ぶだけですが、気道と口蓋で構 成されるエルボー(角部)を考慮すると、流れは非常に複雑になります。 咳 の呼気は、口を出た直後から上下左右に広がり、多くが咳をした者の近くに漂 う様子が分かります。 例えば、次のリンクの咳やくしゃみの測定結果がありますが、昨日お送りし た私どものアニメーションは、これらに良く一致しているように見えます。 ◆”Flow dynamics and characterization of a cough” J. K. Gupta, C.‐H. Lin, Q. Chen のFig9 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1600-0668.2009.00619.x ◆「動画でわかる くしゃみで飛び散る唾液のしぶき」 ライオン公式チャンネル https://www.youtube.com/watch?v=7-P7Z560ZJU エルボーで流線が曲がり、流れの分布が複雑化する現象は結構有名です。 昔、敦賀原発で一次冷却水が漏れて多数の人が被爆した事故がありましたが、 配管のエルボー部で偏流が起こり、内部から損耗したのが冷却水漏れの原因 でした。 今の若い方は知らないでしょうか。 弊社以外で行った咳のシミュレーションでは、口をストレートなノズルと して設定しているものが多数ですが、これだけ分布に違いがあると言う事は、 認識頂ければと思います。 ではエルボーの有無がどう言う結果に繋がるのか考えてみましょう。 エルボー無しでは、咳の呼気はほとんど広がらず遠くに飛びます(と言っても 2mくらい)。 この事は、咳の射線上に居たら感染の可能性が高い事を意味 しています。 しかし実際には咳の呼気はそれほど飛ばず、私どものシミュレ ーションでは、咳をした者の比較的顔の近くに滞留する結果となっています。 つまり、遠くからの咳を気にするより、咳をした者の顔の近くに居た方が危 険なのです。 何人かで顔を寄せ合って話しをしているなんてのは最悪でしょ う。 そして、咳をした人がその瞬間だけ横を向いても何の意味もないのです。 コロナに罹患する人がこれだけ多いのは、咳の飛沫の飛び方に知識がないから ではないでしょうか。 横を向いて咳をしたから、安全を担保したと思うのは 間違いです。 シミュレーションで分かる事は多いです。 今後はこの咳モデルで、会議室 などの換気の問題に手を付けて行きたいです。 /jp/service/5/seki_jirei.php
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 友人から”「接触を8割減らす」とはどういう意味でしょうか。”と言う質問を頂きました。私なりに調べてみました。
「接触8割減へ「10のポイント」 専門家会議が示す 新型コロナ 」 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200422/k10012400721000.html
いろいろ接触8割減の記事はありますが、方法論をうたっているものばかり(それもかなり適当な)で、友人が知りたい接触8割減の本質を論じている記事はありませんでした。例えば、 ・接触の定義 10割とはどう言う状態で、8割とはどう言う状態なのか? ・接触減の客観的な計測法は? あるいは評価方法は? ・10のポイント毎の接触減への寄与の割合は? これでは接触減をどうやって実践すれば良いかは分かりません。絵に描いた餅を食べろと言われても困ります。
私見ですが、接触の程度を独断と偏見で段階分けすると、 9.○○○○する 8.キスする 7.ハグする 6.頬ずりする 5.握手する 4.物を手渡す 3.会議する 2.話をする 1.近くを通過する 0.接触なし
だと考えられます。しかしその状態での経過時間を乗算しないといけないでしょうか。あと、その行為を同時にあるいは時間を置かず何人としたかも重要でしょう。与える接触の数値として、9の項目は9でなく実は100かも知れませんね。「正しい換気」で話題にしたウイルス濃度も当然関係するでしょう。何とも分からない事ばかりです。
先週になって国立感染症研究所が「濃厚接触」の新しい定義を発表したそうです(https://medical.jiji.com/news/31148)。それによると、 ・患者への接触時期:「発症2日前」 ・患者との距離 :「手で触れることのできる距離(目安1メートル)」 ・患者との接触時間:「必要な感染予防策なしで15分以上の接触」 感染予防策-マスクなどの装着だそうです。これも定量化や計測は難しそうです。
さて、この後はどうすれば良いのでしょう? 分かる方は教えて下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇「正しい換気」 シミュレーションから見たウイルスの拡散3 ◇咳や呼吸をシミュレーションで再現する1 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【「正しい換気」 シミュレーションから見たウイルスの拡散3】 /jp/merumaga/kanki_tokushuu 「正しい換気」について、具体的なお話を続いてしたいと思います。 ◆正圧制御と陰圧制御 一般に部屋の中の給気風量を過大にして部屋の中の正圧力を保つ方法を正圧 制御と呼びます。 逆に排気風量を過大にして部屋の中の負圧を保つ方法を陰 圧制御と呼びます。 例えば、病院の手術室などは外部から細菌などが侵入し たら困るので正圧制御が採用される事が多いです。 喫煙室は廊下などに中の 汚い空気が漏れたら有害なので陰圧制御が選ばれます。 前回までのお話を聞いて頂けた方にはお分かりでしょうが、正圧制御の部屋 では場所を特定出来ない事もありますが、概ね前室や廊下などに繋がる扉周辺 で漏気が起こっています。 設定された吸込み口(RA)以外に、そういった場 所に中の人達の呼気が集まると予想されます。 また陰圧制御の喫煙室では、扉で0.3m/secのドラフトを作ってVOCの多い汚い 空気を廊下などに出さないようにしていますが、扉とは逆側の有圧扇などの排 気の近くが危険と言う事になります。 この場合、ウイルスとVOCのダルパン チになる事は言うまでもありません。 ◆コールドドラフト コールドドラフトとは、冬季に窓際や壁際近くに発生する下降気流の事です。 一般に冷えた外気に面した場所で起こります。 断熱の悪いオフィスや工場で よく見られる現象です。 冷えた日にその近くに立つと、降りてくる冷気を感 じますからすぐ分かります。 問題はこのコールドドラフトが、天井近くに溜まった空気を下方に引きずり 下ろす事です。 前回、人の周りには体温による上昇流が発生していて、呼気 も含む空気を天井方向に運んでいます。 その空間に感染者が居た場合、その 呼気は天井付近に溜まっている事が予想されます。 必ずとは言いませんが、 コールドドラフトは天井に溜まったその空気を、下方にまた運んでいる可能性 があります。 ◆暖房機器の影響 人間は一人当たり50kcal/時の熱量を発しているとされます。 そのために 起こる上昇気流の風速が約0.3m/secでした。 それに対してストーブなどの暖 房器具は、1kWくらいの容量のものが多いですが、やはり大きな上昇流を周り に発生させていると見るのが普通でしょう。 仮に他の空調が全くない部屋でストーブを焚いていると、その上昇流のため に部屋の空気がそこに全て集まって来る事になります。 感染者が居る部屋で は、ストーブの周りに集まって長時間話していたりするのは考えものです。 ◆窓・ガラリ・換気扇 換気のために窓を開けると言うのは普通にされている事ですし、3密を避け る方法としても推奨されています。 しかし窓を開けた際のCFDによる換気シ ミュレーションは、意外と一筋縄ではいきません。 先ず、窓の開口状態(引 き戸式・観音開き・縦すべり窓)が一様ではありませんし、開度も全開とは限 りません。 また窓の換気では質量保存の立場で言うと、その窓の平面内で流入と流出が ありますから、それらが収支が取れていないと行けません。 必ず吹き込んだ 風の分だけ出て行く風があるのです。 その上、自然界の風は一定の風向と風 速で必ず吹く訳ではなく、常に風向や風速が変化し続けます。 これを間欠風 と呼びますが、一定風に比べて間欠風は室内への進入能力が低い事が知られて います。 定常計算で求めたCFD結果で換気風量を決めるのは、概して過大評 価になりがちです。 ガラリはドアや窓などにもうけた通気口のことです。 基本的には窓と同じ 扱いで良いですが、ルーバーなどが設けられている場合が多いので、当然通気 抵抗を考えなければなりません。 ガラリは語源が、グリルがなまったという 説と、英語のGalleryから来た説の2つがあるそうですが、建築設備では頻繁 に使う用語です。 換気扇は、建築では有圧扇と呼ばれる事が多いです。 但し一般建築では、 家庭用のものとは異なるかなり大きい機種が使われる事が多いようです。 工 場などでは、有圧扇と循環ファンを複数使った換気計画を立てるのが定番にな っています。 有圧扇は給気にも排気にも使われます。 排気側にその空間の 空気が集まって来るのは今まで説明したとおりです。 /jp/merumaga/kanki_tokushuu 次回は「正しい換気」の最終回で、 ◆完全混合流れとピストン流れ ◆ベストの空調方式 ◆飛行機・新幹線の換気 についてお話します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【咳や呼吸をシミュレーションで再現する1】 /jp/wy_gal/sn_gal_17.pdf 人間が咳や呼吸をする際の周辺の流れはどうなっているのでしょう? ここ では最新の知見に基づき、熱と濃度の移流拡散を伴うシミュレーションを試み ました。 本シミュレーションで留意しているのは次の点です。 <気道から口蓋にかけてのエルボー形状を再現する。> あちこちのサイトで掲載されている咳や呼吸のCFDシミュレーションは、口を 吹出し口として風速条件を設定しているものばかりです。 しかし、それでは 口から出た気流の挙動は、実際とは大きく異なります。 人体では肺から気流 が噴出し気道と口蓋を経てから外へ噴出するからです。 気道と口蓋で形成す るエルボー形状のため、気流は複雑な流れを形成してから外部へ吹き出します。 単にノズル様の吹出し口から出た単純な噴流とは、自ずから風速分布や温度 ・濃度分布は違ってきます。 本シミュレーションではそれを再現しています。 <体温で人体周りに発生している上昇気流を再現する。> 人体の周りには体温により数10cm/secの上昇流(プリューム熱対流)が形成 されています。 この熱対流によって、人は周辺の汚染された空気を吸う事か ら守られています。 人は、自分の身体に沿って上昇してきた、下方の比較的 清浄な空気を吸っているのです。 但し、この上昇流を崩すような気流や、咳などの激しい呼気に出会った場合 にはこの防御は効果が薄くなります。 本シミュレーションでは、咳や呼吸な どで、どの程度そのような現象が起こるのか検証してみました。 <既存の文献から最も確からしい風速条件・熱条件を設定する。> 咳や呼吸のシーケンスを再現するのは簡単ではありません。 咳も呼吸も定 常流れではなく時間とともに刻々変化する非定常流れだからです。 咳を例に とれば、初速はおよそ22m/sec。 これが0,18秒間続いて、その後は流速がゼ ロになります。 呼気の温度や濃度も、非定常で移流拡散する様子を捉える必 要があります。 ここではLESを使っています。 いろいろな咳と呼吸の形態に合わせて、人がどのような換気環境に居るのか も再現する必要があります。 今回は換気なしの条件での解析ですが、典型的 な換気システムとの組み合わせでのシミュレーションも、順次お目に掛ける予 定です。 気流の実態を知って頂いて、それが新型コロナ感染防止に少しでも 繋がればと願っています。 /jp/wy_gal/sn_gal_17.pdf (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ コロナ騒動の影響で映画が軒並み公開延期になっています。映画好きの私としては寂しい限りです。年明けにStar Warsエピソード9を観て以来、劇場で映画を観ていません。いきおいDVDを見る事になりますが、良い作品は何度も見てしまいます。特に日本のアニメは、ストーリーに奥行きのあるものが多く楽しめます。普通に買うと高いですが、アマゾンやメルカリで安い作品をよく探します。配信派ではなく円盤派です。
百貨店や量販店は閉店していますが、地元の商店街は賑わっているようです。本当に感染拡大を防止するなら、大企業や公共交通機関も含めて最低2週間のロックダウンをすべきだと思いますが、現実はそうなっていません。先週、ペットのトリミングを頼もうとしたら、GW明けまで営業自粛だそうです。理髪店・美容院はやってるので、正直意味が分かりません。
スーパーやコンビニでは、レジにビニルカーテンの仕切りが設けられるようになりました。CFD的に見てもあれは良いアイデアだと思います。発話中の偶発的な呼気の拡散を防げます。
この状況は1年以上続くと予測する人が増えています。一時的なものと考えないで、これを常態と想定しての施策が必要なようです。とは言いつつも、直近で弊社の解析結果を待たれているお客様は相変わらず多いです。有難いことです。皆さんと一緒に頑張りたいと思います。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇ CFD千夜一夜第22夜「生命を作る」 ◇「正しい換気」 シミュレーションから見たウイルスの拡散2 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【CFD千夜一夜第22夜「生命を作る」】 東京大学名誉教授加藤信介先生のCFD(計算流体力学)随想「CFD千夜一夜」。 第22夜は「生命を作る」。 90年代、ロスアラモスサンタフェ研究所のクリスト ファー・ラングトンが人工生命を提唱し一世を風靡しました。Genetic Algorithm やGenetic Programmingもそれらの動向と前後して研究が進みました。 それら の研究成果は、現在でも自律的機械やAIの研究などに大きな影響を与えています。 なお、GeneticAlgorithmの「遺伝的アルゴリズム」と言う和訳は誤りだ そうで、正しくは「根源的アルゴリズム」だそうです。
「生命を作る」
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「CFD千夜一夜」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【「正しい換気」シミュレーションから見たウイルスの拡散2】 前回の話題を受けて、今回は「正しい換気」について。より具体的なお話を したいと思います。 ◆部屋のどこに居れば良いか 建築物の内部空間には多くの場合、換気のための吹出し(SA:Supply Air) と吸込み(RA:Return Air)があります。 換気には一般的に1種から4種まで の方法がありますが、その種類に関わらず吸込みの近くには、その空間の空気 が集まって来る傾向があります。 つまり、その空間に居る人が吐いた呼気は 一旦全てそこに集まって来ると考えられます。 もしその空間に感染者が居れば、その人がどこに居ようがその人が吐いた呼 気は吸込みに集まって来ます。 吸込みの数が限定されているほど、換気回数 が大きいほど、この傾向は強くなります。 どこが吸込みかは手を当ててみれ ば分かります。 ドラフトを感じるはずです。 逆に吹出しの近くにいればより安全と言えなくもないですが、その吹出しが OA(外気)ではなくSAで、フィルターなしで循環している空気なら、他の部屋 に居る人達の呼気を吸う事になっているかも知れません。 心配なら設備図面 で、そのビルなりフロアのSAとRAなどの配置を確認しましょう。 なお会議室は、天井カセットと言うエアコンで空調されている場合が多いで すが、真ん中が吸込みになっているので、真下には居ない方が言いかも知れま せん。 更に、人体の周りには体温により数10cm/secの上昇流(プリューム) が形成されている事が知られています。 この上昇流によって、人は周辺の汚 染された空気を吸う事から守られています。 人は、自分の身体に沿って上昇 してきた、下方の比較的清浄な空気を吸っているのです。 但し、この上昇流を崩すような気流や、咳などの激しい呼気に出会った場合 には、この防御は効果が薄くなります。 また、この上昇流と呼気の温度によ る熱対流で、呼気の大半は部屋の上方に昇り滞留する事になります。 喫煙者 が多い空間では、天井の方に行くほど煙が濃い状態になっていますが、この理 由によるものです。 流体力学的には安定成層と呼ばれます。 ◆どこが淀むか ―換気効率指標― 自分が居る部屋のどこが淀むかは重要な問題です。 先に述べたように、吸 込み近くにはその部屋にいる人の呼気が集まってきますが、もう1つ注意すべ きは空気が淀む場所には呼気が滞留している可能性がある事です。 滞留した からと言って呼気が濃縮する事は考えられませんが、集まって来た呼気塊が大 きくなる事は大いに有り得ます。 呼気塊の近くに人が居れば、その空気を人が吸う事になります。 部屋の中 にそのような淀みが生じるような設計は、基本的に望ましくないと言えます。 ではどうすれば良いのでしょうか。 呼気を想定した濃度の移流拡散シミュレ ーションを行う事が1つのアプローチとして考えられますが、拡散源の位置や 発生量の設定などを変えて、何パターンも解析するのは煩雑です。 もう1つ有力な淀み点の予測手法は、換気効率指標(SVE)解析です。 東大名誉教授加藤信介先生の提案されたこの手法は、空間の中の空気について、 入って来た時からの経過時間(空気齢:SVE3)と、あとどのくらいの時間で出 て行くか(空気余命:SVE6)を評価します。 解析には、CFDの結果を元にした 所定の移流拡散計算を行います。 換気効率の立場で言えば、空気齢(SVE3)が大きい場所は呼気が集まり危険 と分かります。 空気齢が小さければ比較的安全と言えます。 空気余命で考 えると、小さい場所が危険で大きい場所が安全となります。 換気効率指標は 空間内の空気の淀み箇所を適確に評価出来る優れた評価手法です。 もっと普 及して活用されるべきでしょう。 化学工学では滞留時間と言う指標がありますが、計算しても淀み点の評価は 適切に出来ません。 実は空気齢と空気余命を足すと滞留時間になりますが、 加藤先生は、滞留時間の考え方とは関係なく、Visitation Frequencyの理論 に基づいて、換気効率指標を考案されました。 換気効率指標解析はWindPerfectで可能です。 ◆ダイヤモンドプリンセスの換気 いささか旧聞に属しますが、豪華客船ダイヤモンドプリンセスの空調システ ムの情報が次のリンクにあります。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanrin/17/0/17_KJ00004883109/_pdf?fbclid=IwAR27-IsK0JhNKUohfuc7Fsb6LwbupHS0qUcLgGd51IMlVCGv-ELggjTHpBI これによると、客室キャビンの空調換気は外気30%、循環風70%とのこと。 途中に一般的なフイルターは挟まっていますが、既に発症している人たちの呼 気を吸い込む訳で、分かっている人達は生きた心地がしなかったかも知れませ ん。 ちなみに医療ゾーン・厨房ゾーンは外気100%とのことでした。 ま たこのURLの終わりの方に、送風量26500?/分とあります。 ダイヤモンドプ リンセスの大きさが長さ290m、幅37.5m、喫水からの高さが54mだそうですから、 半分が気積として26500×60分/293625=5.415で、換気回数としては十分なよう に見えます。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%82%B9_(%E5%AE%A2%E8%88%B9) しかしその風量を、88台のAHU(エアハンドリングユニット)で賄っていた ようですから、AHU1台で数10室程度の空間の換気を担保していたのでしょう。 換気ダクトには圧損がありますから、部屋によっては極端に換気の悪い所もあ ったでしょう。 つまりダクトには圧力損失がありますから、連通管の原理に 従って送風元に近い所よりも末端の方が格段に風量が多くなります。 普通は 末端に行くほどダクトの管径を絞るのですが、均一の径でダクトを作ると、送 風元に近い部屋は全く風量が出ない事が考えられ、所定の換気回数は維持でき ていなかったかも知れません。 換気は一般に室内のCO2濃度が1000PPMにならないようにすることが労働安全 衛生法で決められており、通常は600PPMから700PPmになるようAHUの換気設定を します。 また厨房では、発生する熱気・蒸気を逃がすための換気設定もする ので、40回/h以上の換気回数を取りますし、トイレは衛生上の問題で通常10回 以上の換気回数を取ります。 普通の事務室やホテルの客室、学校の教室も6回/h程度の換気が一般的です し、医療現場や診察室では6回/h以上を必要とします。 それもウイルスを通 さないHEPAフィルターを通して循環し、屋内感染を避けるようにしています。 HEPAフィルターは医療用のN95マスクと同等の性能があるそうです。 それらを 考えると、ダイヤモンドプリンセスの、全体で平均5回/hの換気と言うのは足り ていない可能性があります。 /jp/merumaga/kanki_tokushuu 次回以降は、 ◆正圧制御と陰圧制御 ◆コールドドラフト ◆暖房機器の影響 ◆窓・ガラリ・換気扇 ◆完全混合流れとピストン流れ ◆ベストの空調方式 ◆咳のシミュレーション ◆呼吸のシミュレーション についてお話しします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前回の「正しい換気」、お陰様で大好評でした。今回の環境シミュレーションメルマガでは、弊社コンサルタントの東大特命教授&名誉教授の加藤信介先生に、「感染対策として有効な室内換気とは何か」と題して寄稿頂きました。
コロナ騒動ですが、ゼネコン数社が、現場を含めて業務が停止になりました。スーパーゼネコンが感染者を出したこともそうですが、感染者が出ていない中堅ゼネコンが現場を止めたのは、大きな驚きをもって受け止められています。
東京はデパートや量販店が、今週になって軒並み営業停止しており、日常の買い物に支障をきたし始めています。 弊社近くのヨドバシアキバが、昨日行ってみたら5月まで閉店していたのには驚きました。
弊社としても緊急事態宣言を受け、社員の席配置を見直し、席が隣り合わないようにして、勤務中の各人の離隔距離(建築用語です。)を確保しています。1.8mくらいは空いていると思います。
また時差出勤と時短を始めました。事務所内の滞在人数を減らすためと、混雑時間帯での通勤を避けるためで、当面4月末まで行う予定です。社員を2つのグループに分けて、異なる勤務時間帯を適用しました。 ◆早番勤務:7:30~13:00 ◆遅番勤務:12:00~17:30 としました。 しかし始めてみたところ、朝の7時半出社でも、電車は結構混んでいたとのこと。誰しも考える事は一緒のようです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇加藤信介先生特別寄稿 「感染対策として有効な室内換気とは何か」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【東大特命教授&名誉教授 加藤信介先生特別寄稿 「感染対策として有効な室内換気とは何か」】 「正しい換気」とは何かを加藤先生に語って頂きました。 感染や換気に対す る貴重な情報が含まれていますので、皆さんとも共有したいと思います。 加藤先生によるとコロナ収束には最低1年は掛かるそうです。 今後恒久対策 として換気に対する正しい知識と施策が必要となり、解析精度の高い空調換気 シミュレーションの重要性はますます高まるでしょう。
「感染対策として有効な室内換気とは何か」
(続く)
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空気調和・衛生工学会と日本建築学会が、換気の正しい方法を緊急発表したそうです。
<新型コロナ対策で話題の「換気」、正しい方法を日本建築学会などが緊急発表>
今さらという気もしますし、この内容を読んで、一般の人で換気の正しい方法を実践出来る人は少ないでしょう。学会の他に都知事や医療関係者など、換気について説いていますが、どうもピンと来ません。何故かと言えば具体性に乏しいからでしょう。3密と言われても、実際に何をどうすれば良いかは分かりません。
今回の環境シミュレーションメルマガでは、空調換気シミュレーションの実務から見た「正しい換気の方法」について考察してみました。と言うよりは、いかにしてコロナウイルスを回避するかです。数回にわたって掲載します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -ヘッドライン- ◇「正しい換気」 シミュレーションから見たウイルスの拡散1 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【「正しい換気」 シミュレーションから見たウイルスの拡散1】 「正しい換気」を考えるには、建築設備の基本知識に基づいて、ウイルス拡散 現象の過程を、1つ1つ定量的に積み上げる必要があります。 今回は次の内 容をお話ししましょう。 ◆空中を浮遊するウイルス 世界を震撼させている新型コロナウイルス。 感染経路の分からない厄介な ウイルスです。 しかし、陽性者から排出されたウイルスが何らかの形で他の ものに移るのは確かです。 接触感染は置いておいて、空気感染・エアロゾル 感染など、気流の動きによってウイルスが運ばれるのも事実のようです。
咳などによってウイルスが空気中に吐出された後、何が起こっているのでし ょうか? 陽性者が持っているウイルスは、肺や気道から飛沫となって体外に 排出されます。 飛沫には水分とウイルス、体内の分泌物や途中で巻き込んだ ホコリなどが含まれます。 飛沫は体外に出ると急激に水分の蒸散が起こり、 乾燥します。
後にはウイルスとホコリ・分泌物の残滓が残り、空中を浮遊します。 マス クをしていれば途中で飛沫はトラップされますが、もしも無くてたまたま近く に人が居れば、その人の体表面に付着します。 マスクをしていれば感染の予 防効果があるのは当然です。 何らかの形でウイルスは空気中を旅して、次の 宿主にたどり着くのです。
ウイルスの大きさは1ミクロン以下。 空気中の粒子は、その粒径と密度に よって所定の終端速度で落下しますが、周囲の気流速度が終端速度よりも大き い場合、粒子はいつまでも空中を舞っている場合があります。 「プルトニウ ムは重いから飛ばない」と言った大学の先生が居たようですが、プルトニウム も微粒子化すればわずかな風速で飛びます。
◆換気回数とは
換気回数は建築設備分野での専門用語で、ある部屋の空気が1時間に何回入 れ替わるかという指標です。 例えば30?の部屋があったとして、1時間60? の換気があったなら、換気回数は2回になります。 一般に建築基準法では、 住宅などの居室で、換気回数0.5回以上である事を求められます。 これは2時 間以下で、その部屋の空気が全部入れ替わる事です。
用途で、必要とされる換気回数は変わります。 倉庫などでは1回換気、オ フィスなどでは3~4回換気を求められる事があります。 データセンターでは 20~30回換気、最も多い例では塗装ブースが100回を大幅に上回る換気回数の 場合があります。 ウイルスによる感染防止の観点では、換気回数は多ければ 多い方が良いのは当然です。 部屋に取り込む外気は、ウイルスがないものと 仮定されているからです。
◆人数から見た適正な換気量
成人一人の呼気量は1回500ccと言われます。 1分間に18回程度呼吸すると して、毎分9リットルの息を周りに吐き出している事になります。 これは1時 間では540リットルになります。 それに対して、例えば6畳間の容積は2.7m× 3.6m×2.5mで24.3?。 0.5回換気に必要な空気量は、1時間に12?ほどになり ます。
成人一人の1時間の呼気量が0.54?でしたから、これで部屋の換気量を割ると 希釈率は22.2倍。 人間の吐いた空気は、20倍以上に希釈される事になります。 どの程度まで濃厚な空気を摂取したらヤバイかと言う事ですが、例えばおおま かな目安として、10%以上の他人の呼気を吸うのは好ましくないとしましょう か。 そう仮定すると、希釈率は10倍以上が必要で、6畳間なら二人程度が一 緒に居る事を許される限界になります。
これが広めの会議室ならどうでしょう。 ある貸会議室は、面積250㎡・高さ3.5m で132名収容です。 部屋の気積が875?として0.5回換気の空気量は約437?。 132名分の1時間の呼気量が約71?だと、換気による希釈率は6.15倍ほどになり ます。 これは6畳間で二人程度での希釈率10倍(10%)よりかなり低く、もし 人員の中に陽性者が居れば感染のリスクは高まるでしょう。 広い部屋だからと言って安心できません。
3密の中の「換気の悪い密閉空間」は、適当な仮定を設けることでこのように ある程度定量化出来る事が分かります。 この会議室では、換気量を倍にする か、収容人員を半分にすれば、呼気の希釈率は10%以下に出来ます。
◆ウイルス濃度
以上の話の中ではいくつか曖昧な点があり、その1つがウイルス濃度です。 例えば、結核などは菌が1個体内に入れば結核に罹ります。 それに対してイ ンフルエンザは、ウイルスが100万個入らないと発症しません。 エボラであれば この中間の数字なのでしょうが、コロナウイルスの場合はどのくらいのウイルス 濃度で発症するのか、まだよく分かっていません。
また、陽性の人間の呼気の中にどのくらいの数のウイルスが居るのか、これ もよく解明されていません。 発症に至るウイルス濃度も、ウイルスを受けた 人間の体調によるのですが、これも今後のデータ待ちです。
という事なのですが、例えば希釈率1倍(100%)とすると、これはマウス toマウスで陽性者かも知れない人の呼気の半分を吸い取っている訳ですから一 発で罹患するでしょう。かと言って100倍(1%)の希釈率ではまず発症しないの では?だからエイヤで10倍(10%)としています。 当たらずとも遠からずと思っています。
次回以降は、
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 熱流体解析は構造解析とよく比較されます。しかし、市場やソフトの性格が両者ではかなり異なります。一体何が違うのでしょうか? 最も違うのは汎用プログラムのカバーする範囲でしょう。例えば構造解析ではNASTRAN,AbaqusとLS-DYNAやPAM-CRASHなどのダイナミック解析用のソフトウェアがあれば、皆さんの元にやって来る解析の80%くらいはこなせるでしょう。 コンクリートの破壊や亀裂進展問題はいまだに汎用ソフトでは難しいかも知れません。
これに対して熱流体解析ではどうでしょう? 恐らく今の日本には国産・海外産含めて40本以上のソフトが流通していると思われます。 それらのソフトをもし全部持っていたとして、皆さんの所に来る解析のうちどのくらいの割合をこなす事が出来るでしょうか、と言うのがクイズです。 さあ、どのくらいの割合でしょう?
構造解析と同じように80%?いやいや、それはいくら何でも無理です。50%?そのくらいあれば嬉しいですが、現実は甘くありません。人によって答えは若干変わるでしょうが、私の答えは10~20%です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 熱流体解析は、まだまだ解けない問題が非常に多いのです。例えば自動車エンジンにシリンダー燃焼問題は、1980年代からいろいろ試みられていますが、未だにシリンダー内の燃焼ガスに火が入ったシミュレーションは実現していません。 風の分野でも流入変動風を実施地形や現地の気象データに即してきちんと模擬した風荷重解析はまだ実現していませんし、津波解析でも浮遊物を適切にモデル化して建物への衝突力を計算するに至っていません。
この他にも、構成方程式が複雑な非ニュートン流体の挙動や、極端に遅い流れはまだ数値シミュレ-ションに乗りませんし、相変化や多くの反応過程のある流れも非常な難題の一つです。熱流体解析は、まだまだ研究テーマの宝庫であり、これからも解析モデルやスキームの開発が必要な分野と言えます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CFD(計算流体力学)の礎(いしずえ)を築いた2人の天才と言うか巨人がいます。 一人はフォン・ノイマン(Von Neumann)、もう一人はセイモア・クレイ(Seymour Cray)です。今回はフォン・ノイマンの話をしましょう。
フォン・ノイマンがCFDの礎を築いたと言われるのは、彼がCFDの基礎式を離散化して初めて数値的にカルマン渦列などの流体現象を解いたからだと言われます。 実験や実測しかない当時、計算だけで流体現象を再現したというのは驚くべき功績です。 乱流モデルも可視化ソフトもない当時ですから、数値を読み取って流れの動きを確認するしかなかったのですが、何もない「無」の状態から「有」を生み出したのは凄いことです。
更にフォン・ノイマンの大きな業績の一つに、プログラム内蔵型電子計算機の開発があります。それまでのコンピュータ(電子計算機)の計算はインタープリター型でした。 コンピュータは、計算に必要な命令群を何らかの媒体からその都度読み取って計算を実行すると言う過程を繰り返していました。 媒体といっても、紙テープかワイヤーか磁気テープしか無かった時代ですから、計算が進むたびにコンピュータが媒体を巻き戻して命令をガーと読む様子に、確かに計算が実行されていると言う実感が湧いたものです。 これを、計算過程の全命令をプログラム化して記憶しておき(プログラムを内蔵)、それをロードする事によって計算を実行すると言うのは画期的なアイデアでした。 余計な入出力が無くなったので計算は飛躍的に早くなりましたし、媒体からの再読込みと言う機械動作の誤作動による計算の失敗も無くなりました。 コンピュータの演算装置が、当時の真空管やパラメトロン式から、トランジスタや集積回路(LSI)による高速化を果たすのはかなり後の事です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ もう1つ、実は大きなフォン・ノイマンの業績があります。それは自己増殖型プログラムの開発です。いわゆる人工生命やGenetic Algorithm、GeneticProgrammingはその発展形と言われますが、もっと平易に言うとコンピュータ・ウイルスもこの自己増殖型プログラムに含まれます。ウイルスと言うと聞こえが悪いですが、常駐型で自己修復機能を持つソフトは全てウイルスみたいなものと言えます。ソフトウェアが良いか悪いかと言うのは使う人間の視点によるものです。
「CFDでカルマン渦列などの流体現象を解いた」,「プログラム内蔵型電子計算機を開発した」,「自己増殖型プログラムの開発した」巨人フォン・ノイマンが、何故ノーベル賞を受けていないのか私は非常に不思議です。 世の中の学術評価はソフトウェアに関しては不当に低く、ダイナブックを構想したアラン・ケイや、Macintoshのインターフェイスを開発したスティーブ・ウォズニアク、Linuxを開発したLinus Torvaldsの業績はもっと高く評価されるべきです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 先週はCFD(計算流体力学)の礎(いしずえ)を築いた2人の天才のうち、フォン・ノイマン(Von Neumann)の話をしました。今回はもう一人の天才、セイモア・クレイ(Seymour Cray)の話になります。 クレイもやはり大きな業績を持っており、それはスーパーコンピュータのアーキテクチャに関するものです。余談ですが建築の世界にもアーキテクチャと言う言葉があって頻繁に使われ、主に建築様式や構造・設計法・工法を指します。 これに対して、コンピュータの世界では設計思想や共通仕様の事を指す場合が多いです。
クレイの最も著名な業績は、Crayと言うベクトル型スーパーコンピュータを開発したことです。当時、CDC 7600,STAR-100などのスーパーコンピュータは既に存在しましたが、それを大きく上回る性能のコンピュータを彼は作り上げました。 1976年のことです。それは彼の名を取ってCray-1と名付けられ、1号機はLos Alamos 研究所に納入されました。Cray-1がそれまでのコンピュータと一線を画すのは、その冷却性能によるものとされています。水冷の枠と基盤を直結させた冷却システムは、CPUから発生する高熱を効率的に処理したと言われます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 実際にCray-1は100台以上が売れると言うベストセラーになりましたが、納品の際に受け入れ側は床の補強をCray側から要請されたと言います。 本体と冷媒ポンプの異常な重さを、通常の床では支えられなかったからだそうです。 当然、納入機材をエレベータで持ち上げられるはずも無く、床を補強したコンピュータルームの外壁をぶち抜きクレーンで横待ちして所定の場所に据付けをしたと言う実話もあります。 デザインも斬新で、2つの径の異なる円筒形の筐体を組み合わせた形は「世界で一番高価なラブベンチ」と称されました。 しかしその重い筐体をもってしても、阪神大震災の時は某電機会社のCrayコンピュータが大きな振動で横倒しに倒れたと言われます。いくら座りやすいとは言え、そういう時には出来ればそばには居たくないものです。
数々の伝説に彩られたCray-1ですが、クレイ自身にはもう1つ伝説があります。 それは、ロールアウト仕立てのCray-1にマシンコードを打ち込んでいってブート(起動)出来たというものです。 要はOS(コンピュータの基本ソフトウェア)をアッセンブラで何も見ずにキーボードで入力してCrayを立ち上げ出来たというのですが信じられないことです。 一体どれほどの天才だったのでしょう。
そのクレイもCray-1の後継機Cray-2~4などが評価されず、1996年に71歳でこの世を去りました。 クラスターなど並列計算機が主流の現代ですが、単体のCPUの中にはパイプラインやベクトル演算器が備わっており、クレイの築いたアーキテクチャは今も生きています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CFDは元々海外から来た技術です。ハードウェアもソフトウェアもそうです。 ハードウェアは前回のお話にあったようなCRAYコンピュータか、それが無ければ IBM互換の汎用機、それとCALCOMPのプロッターで図を書いていたというのが昔の姿です。 そこにTEKTRO4014のようなグラフィック端末が現れ、可視化の世界は徐々に芳醇になりました。 そこへ1980年代になってからシリコングラフィックスのリアルタイムで描画が可能なワークステーションが出現したときは非常に驚いたものです。
私は1984年にカリフォリニアのNASA AMES リサーチセンターを、 当時の航技研角田支所からNASAに留学されていた中橋和博先生(元東北大・JAXA) に案内されて、IRIS4DワークステーションによるCFDの可視化を見せて頂き大いに感動したものです。 今で言うとほんの数秒、機体や翼周りの粒子軌跡が見えるだけのものでしたが、 その当時としては日本国内には全くなかったものです。 シリコングラフィックスのIRIS4Dワークステーションは その年から日本でも住商エレクトロニクスが代理店になって販売が始まりましたが、 1台数1000万円もしたのでとても手を出せるものではありませんでした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ コンピュータ室も見学させてもらいましたが、当時最新鋭のCRAYとCYBER-205が鎮座しているのを拝謁したものです。 コンピュータ室の壁に米国式のソロバン(玉が1列に6つ。Abaqusと呼ばれるものです。)何故こんなものがNASAの コンピュータ室にあるのかと担当の職員に聞いたところ、「スーパーコンピュータが故障したらこれで計算するのさ。」 と言う答えが返ってきました。アメリカ人の陽気でジョーク好きなところは今も昔も相変わらずです。 一緒に写真を撮って良いかと聞いたら「いいとも!」と言う答えが返って来ましたが、今その写真は残念なことに行方不明です。
ちなみに、有名な構造解析ソフトのABAQUSもこのソロバンと言う名称をそのまま使い今日に至っています。 ABAQUSはソフトを作る前に先ずマニュアルから作ったという事でも有名です。知ってましたか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は予定を変更して、年末に飛び込んできたニュースについて所感を語りたいと思います。 国産CFDソフトウェアベンダーが外資企業に突然身売りすると言う事件です。
<MSC、熱流体シミュレーションのソフトウェアクレイドルをグループ企業に>
この業界では、国内でソフトウェアの普及に汗水たらして努力した人に対して、 ソフトウェアの開発元が現地法人を作って営業権を奪ってしまうという事がしばしば起こります。 国内でその先駆けとなったのは日本HKSの創立でしょう。HKSは構造解析で著名なAbaqusの米国の 開発元なのですが、当初は日本国内の販売と普及は「武田技術開発」と言う会社が担ってきました。 武田技術開発は、後に法政大学の工学部長を歴任された武田洋先生の作った会社です。 それがある日突然、開発元の代理店がいきなり日本に乗り込んで来て、武田技術開発が 営々と築いた日本市場の売上を全てかっさらっていきました。当時、みな唖然としたのは言うまでもありません。
欧米の投資家にとっては会社経営というのは単なるゲームですから、TOBやM&Aは日常茶飯事です。 しかしこう言った、一般販売代理店として日本人ベンチャー企業が築いた市場を、海外の開発元が業績 を良くするために独占販売代理店の特権を行使して力づくで奪い取るというのも珍しい話ではありません。 日本でFLUENTと言う流体解析ソフトをCFDの草分け時代から普及・販売を続けて来た「流体コンサルタント」 という企業に対して、米国の開発元がやはりいきなり日本法人を作って営業権を奪ったのは1990年代後半の事です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ そのFLUENTは2000年代に入ってからANSYSに買収され、そのANSYSが、FLUENTではなく見た目ソフトとして綺麗に できているように見えるCFXに経営資源を集中したため、FLUENTは営業体制・技術サポート体制が崩壊しました。 「集中と選択」と言うのは投資家にとっては都合の良い言葉ですが、一生の仕事として業務に先進してきた従業員や 経営者にとっては無慈悲なものでしかありません。日本はまだマシでしたが、欧米ではエンジニアがほとんど社外に流出したと言われます。 全世界で当時数1000ユーザを擁した押しも押されぬ巨大ソフトの市場が、目の前で呆気なく消えていく様に、我々も戦慄を禁じえませんでした。
FLUENTの営業・サポート体制が一時期消えたために、代替ソフトを探したユーザは非常に多く、STAR-CDなどの草刈り場になったと聞きます。 OpenFOAMなどのオープンソースコードの利用を現在多くの企業が進めている動きは、このような巨大ソフトがあっさり消えてしまうCFD市場の 不安定さにユーザの嫌気がさしたからとも分析できます。そのOpenFOAMですが開発元だったOpenCFD社がいつの間にかSilicon Graphics社に買収されています。 今でこそ無償のOpenFOAMですが、有償化される日が来ないとは言い切れません。自前のソフトウェア開発力に乏しい日本の悲劇は既に始まっています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ごく最近ではSTAR-CD,STAR-CCMの開発元が、やはり日本で現地法人を設立し、 それまでの日本代理店であったCDAJ社の営業権を一方的に奪ったと言う事件がありました。 こう言った事件の常として、今まで営業やサポートに当たっていた社員が排斥され、開発元 が雇った市場に馴染みのなかった人材が入って来るので、やはりユーザサイドの混乱は避けられなかったようです。
今回の日本CFDソフトベンダーの身売りは今までとはやや違った様相を見せています。 元々外資企業などに侵食されないはずの生粋の日本企業が、創業者が持ち株を総て手放し 外資に売ったために、身売りが決定してしまいました。何か大金が必要な事情でもあった のでしょうが、これも時代の特徴を反映しているのでしょうか。
営業・サポート体制の維持のためには何事もないと良いのですが、外資企業に営業権が 移った以上、武田技術開発・流体コンサルタント・CDAJが経験して来た弱体化は避けられ ないのではと考えるのが普通でしょう。また、MSCの世界市場でのCFDビジネスを担当する 以上、日本以外の市場にフォーカスせざるを得なくなり、日本市場への経営資源の配分が 希薄になるかもというのも気になるところです。まだ日経系などの大手メディアからのニ ュースリリースは無いようですが、それも日本市場の反応を懸念しての事かも知れません。
しばらくは日本固有のCFDソフトを築いてきた企業の趨勢を見守りたいと思います。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 入出力機器の話をしましょう。私が初めてコンピュータに触れたのは1975年。 当時学んでいた大学の実習用電子計算機のOKITACが、私の最初に触ったコンピュータです。 当時、沖電気が汎用コンピュータを制作していたなんて、ほとんどの人は知りませんよね。
入力には紙テープを使いました。幅が3センチくらいの、ザラっとした厚手の黒い紙で出来たテープです。 これに穴が空いていてそれで表現された2進数を光学リーダで読み取ります。当時のコンピュータはインタプ リター式ですから、計算をさせる度にテープリーダーが映画フィルムのマガジンのようなリールから紙テープ を読み取り、読み取りの終わったテープは別のリールに巻き取られていきます。当時の映画館もフィルムが時々 切れて上映が中断する事も少なくなかったですが、フィルムよりもっと強度の小さい紙テープは計算中に頻繁に 切れてくれて、我々をよく煩わせてくれたものです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 切れたテープをどうやって修復するか?先ずリールや読み取り機から紙テープを出来るだけ傷付けずに回収します。 と言ってもものは紙ですから、どこかの部品にそれが食い込んでいると、無傷で回収するのは不可能に近いです。 その場合は食い込んだ部分は諦めざるを得ないので途中が無くなったテープになってしまい、その部分だけをまた打ち直す必要があります。
それだけならまだ良いのですが、これを継ぎあわせるのがまた厄介。 紙テープですから普通の木工用ボンドなどで貼り合わせるのは簡単に出来ます。 それでも手先の器用でない者は接着面が波打ったり斜めに貼り合わせたりと、 あちこちで惨状が繰り広げられました。貼り合わせたテープは当然の事ながら 接合部の穴は埋まっています。それらの穴を整合性を保ちながら一個一個専用の パンチで開け直していくのですが、何とも根気と神経の要る作業でした。穴には パリティビットと呼ばれる規則性のある穴もあってルールに沿って開けないといけません。 細心の注意で作業したテープが一発で通った時の爽快感は何とも言えないものでしたが、 気がついたら夜が明けていた事もしばしばでした。
出力の方は、コンピュータグラフィックスなんて洒落たモノのない時代ですから、 プリンタ用紙に大量に並んだ数字をただただひたすら読んでいくしかありません。 ある研究者の部屋を訪ねたら、今で言うアスキーアートのような形で流れ場や分 布を二次元表示していたのに感動したことがあります。いつの世の中でも頭の良い人は居るものですね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 引き続き、入出力機器の話の続きです。前回お話した紙テープ以前の時代には磁気ワイヤーの時代がありました。 紙テープの代わりに直径1mmくらいの金属製ワイヤーに磁気ヘッドで記録する方法です。私は残念ながら使っ た事はないですが、流石に記録密度が荒い点や、早期に劣化しやすいなどで、現場からは早くに退場となったの だろうと考えられます。紙テープの次はパンチカードの時代でした。もはや前時代の遺物ですね。
<パンチカード-Wikipedia>
80欄のカードは、大きさが 187.325 mm × 82.55 mm。EBCDIC文字セットと特殊記号を入力できるもので、 1枚がプログラム・データの1行に相当しました。計算機システム毎に異なるジョブコントロールカードと言う ものでプログラムとデータを挟み込み、1セットの計算ジョブを規定するカードデックと言う束を作りました。
学生当時、分子動力学の研究をしていたので、パンチカードを専用のアルミ製トランクに入れ(トランクは 研究室で買ってもらいました。結構高かった。)、颯爽と大学の大型計算機センターに通う毎日でした。 大型計算機と言っても、計算能力は現代のパーソナルコンピュータの1/1000もありませんでしたが・・・。
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ パンチカードは紙テープのように切れる事はありませんでしたが、やはり紙製ですから長く使っていると 擦り切れ劣化します。更に大量のパンチカードを常時扱ったりしていると、角が傷んだりあるいはカードそ のものに折れ目が付いたりします。四角い穴が破損することもしばしばです。これが原因で起こるトラブルが研究者泣かせでした。
快調に進んでいたカードリーダーへのパンチカードの読み込みが止まると、「ジャムった~。」と叫びながら、 都度自分で操作の対応をしなければなりません。落ち着き払って既に読み込んだカードの最後の1枚をリーダー 側に戻して再スタートボタンを押す。これでうまく行けば万々歳ですが、半分の場合は再スタートしません。 無理やり再スタートさせると、プログラムかデータが一部欠けた状態で計算される訳ですから、課金された ものが無駄になり、指導教官からお目玉を喰らいます。
また、カードはトランクに最大2000枚入りますが、これを誤って床に落っことすと復元するのが大変です。 カードの順番が違うと、全く違った計算ジョブになりますから、顔を引きつらせながらカードの順番チェックを したものです。計算費用が無くなると、最悪卒業論文が書けない事になるので必死でした。今となっては笑い話ですが。
なお、既にお分かりかも知れませんが、パンチカードシステムはプログラム内蔵型計算機を前提としています。 インタープリター型計算機であれば、プログラム・データの所定の部分を随時再読み込み出来なければなりませんが、 パンチカードシステムではカードの流れは1方向で、逆進は出来ませんので、プログラム内蔵型にしか対応していません。 念のため。
読み込めなくなった傷んだカードは、全体の様子を見てどれだけの修復をするか決めます。個々のパンチカードを 目視で検査すれば傷み具合は分かりますから、折れたり破れたり穴が傷んだカードはチェックして取り替えます。 専用のパンチカード作成機に入れてカードを複製出来れば良し、傷みがひどくて複製出来なければ、再びカードに プログラムやデータを手で打ち込みます。それでも紙テープを修復するのに比べて、作業は非常に簡単で、技術革新 の有難味を大いに感じたものでした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 紙テープ・パンチカードとお話ししてきて、今回は磁気テープの話になります。 コンピュータが動いているというのを表現する時に映画やテレビでよく使われていた、 大きなリールが間欠的にクルックルッと回るあれです。学生時代に分子動力学の研究を していた時に、パンチカードと併用で計算機センターでよく使ったものです。今からちょ うど40年前、1977年頃のお話です。
磁気テープを使うジョブをJCBカード(いわゆるジョブコン)で指定すると、 所定のタイミングでマウント指令がディスプレイに現れます。ディスプレイが まだ珍しい時代で、それを使うのになにか優越感みたいなものを感じたものでした。 おもむろにケースからテープを取り出し、ジョブを流す本人が磁気テープ装置に近寄 り直接操作をします。磁気テープ操作を計算機センターのオペレータに依頼するクロ ーズドジョブもありましたが、私はある理由から自分で磁気テープを操作するオープンジョブを利用していました。
磁気テープ操作には当然の事ながら読み取り操作と書き込み操作があります。 紙テープ・パンチカードでは基本的にコンピュータが書き込む動作をする事はな かったので、最初は非常に操作に戸惑いました。しかし慣れてみると、人間とは 比較にならないスピードでデータが出来ていくので、大いにその恩恵を利用しました。 途中の結果からシミュレーションをスタート出来るリスタートもこの当時使い始めました。 非定常計算である分子動力学法だから出来たことですが、このテクニックは社会人になって からCFDソフトを開発する際に大いに役立ちました。
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 当時の計算機データの構造として「順データセット」と「区分データセット」があり、 データの長さの定義についても、「固定長」と「不定長」があり、これらのデータの扱い をきちんとしないと磁気テープジョブは動かせませんのでマニュアルと首っ引きで勉強しました。 今でもあまり苦にせずにコンピュータアーキテクチャの本が読めるのは、この時代の蓄積が あるからと思っています。何事も基本は大切です。
磁気テープ操作に読み取りと書き込みがある関係で、磁気テープには中央の芯の部分に 小さなプロテクト用のスライダーがあり、それがオンになっていると書き込みが出来ません。 シミュレーションをスタートする際にジョブがデータを読みに行くとマウント指令が出るので 装置に磁気テープを取り付けに行きますが、ジョブの最後に書き込み動作があるとまたマウン ト指令が出て書き込みのためにまた磁気テープを取り付けます。この時はプロテクトを外すの ですが、うっかりしてテープを間違えるとそれまでそのテープに蓄積していたデータが全てお釈迦になります。 テープの格納データを管理するディレクトリという場所が書き換えられるからで、失ったデータが 重要なものであった時は、卒業が遠のくのを肌で感じたものでした。皆さん、データのバックアップは面倒くさがらずに確実にやりましょう。
磁気テープのおかげで研究は順調に進みましたが、楽だった反面辛い事もありました。 前回お話した2000枚入りのパンチカードのトランクに加えて、数本の磁気テープを持 って計算機センターに通う毎日は結構難行苦行でした。あれで腕っ節は多少強くなったと 思います。ソフトウェア開発業が、首から上の賢さよりも、首から下の体力の方が重要であると言うのは、実は昔からだったのです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は予告通りTSS端末とプロッターの話をします。TSSとはタイムシェアリングシステム(Time Sharing System)の事です。 それまではコンピュータに投入する計算ジョブは基本的にバッチ式だけでした。この方式では、一回ジョブを起動すれば結果が 出るまでそのジョブは計算を続けます。TSSはコンピュータの計算資源(主にはCPU)を時間で割って複数のジョブで共有して実 行するステムです。そのため途中での計算結果の確認やジョブを途中で止める事が随時できます。入力データはあらかじめコン ピュータ内にパンチカードや磁気テープから投入し保存しておいたデータが使え、大変便利になった事を実感したものです。 一度のジョブで複数のデータを自由に参照できたり、書き込みが出来たりしたのも、仕事の効率を上げる事に大いに寄与しました。
この時は大学院から既に企業に就職していたのですが、導入したTSS端末の空きを探して設置されている部署をジプシーのように 移動して仕事をしていました。端末は名機と言われたSONY TEKTRO 4014で、画面上で緑色にブリンク(明滅)する文字を、朝から晩まで追いかけたものです。
端末は今のようなラスターグラフィック式ではなくストレージ式で、緑色のビームがブラウン管(CRT)を照らして文字や図形を描くタイプです。 描画速度はそのせいで非常に遅いものでしたが、当時はその便利さに驚きました。出力がプリンタ用紙しかない時代では、紙に印字された数値をい ちいち読み取るしかなかったのが、端末で図形やグラフを描き、それをボタン操作一つでハードコピーで保存出来たからです。ただこのハードコピ ーは普及当初は紙代が非常に高く、使い過ぎて事務の女性によく文句を言われたものでした。当然、長距離出張の時はお土産は必須でした。
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 図形やグラフを描く方法としては、もう1つXYプロッタと言う装置がありました。これはA1サイズ以上の大きなロール紙にボールペンで 図形を描くものでして、主に設計図のようなものを描くのに使われていましたが、結果データを図形やグラフで描画のプログラムをFORTRAN で自分で書き、計算ジョブとは違うプロッタジョブをバッチで流して計算結果を図にしていました。プロッターが動くゴトゴトという無骨な 音を聞くと、いかにもコンピュータが働いているのだなあという実感がありました。
XYプロッタを使う際、数値流体解析の場合は自前で速度ベクトルと等値線(コンター)を描くプログラムを書く必要がありました。 そんな描画関数のライブラリは当時まだメーカーが用意していなかったからです。描画プログラムをうまく作れば非常に綺麗な結果図 が描けるのでアルゴリズムには大いに凝ったものでした。ベイジェとかB-スプラインなどと言う用語がまだ普及する前のことです。 プロッタは高級な機種だと2色から3色のペンが使えたので、初めて色の付いたプロッタ図を手に入れた時は感動しました。TEKTRO端末 で得られるハードコピー装置はモノクロでしか描けなかったからです。フルカラーのハードコピー機が使えるようになったのはもう少し 後になってからになります。弊社が何故秋葉原にあるかと言うと、当時高価で手に入りにくいハードコピー用紙や専用インクを、いつでも 少量でも買いに行けるメリットがあったからです。ウソのような本当の話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前回はTSS端末とプロッターの話をしました。TSS端末の話をもう少し。 当時のTEKTRO4014のストレージ型のCRTは、陰極線が文字が最初に書かれる 左上を必ず照射するので、長い年月の間にその部分が劣化して発光が不鮮明 になっていきます。そう言う時はどうするのでしょう?今の感覚で言えばす ぐ交換と言う事になるのでしょうが、今のような4Kの20インチ以上の液晶ディ スプレイが数万円で手に入る時代ではなく、目の玉が飛び出る金額が掛かった もので、おいそれとは気軽に交換出来ません。
さて正解ですが、ディスプレイのCRTの部分を上下に180度回転させて、 今まで照射を受けていない右下だった部分を左上に来るようにします。 それまで左上だった部分は右下のほとんど使われない場所になるので、 メデタシメデタシと言うところです。実際に修理するところを見た事が ありますが、こんな簡単なことで次から新品のように使えたのでビックリしました。
さて、今回からはCADとコンピュータグラフィックスの話をしましょう。 私がCADシステムを初めて触ったのは1984年頃の話です。触ったCADを2種類。 富士通のICADとAppliconのBlabo!と言うシステムです。富士通のICADの習得には、蒲田のシステムラボラトリに1週間通いました。
当時のICADは、入力プロンプトを解釈するコマンド解析部と、指示された機能を 実現するプログラム部に分かれていました。今で言うイベント駆動型ソフトのハシ リみたいなものでしたが、現代のようにAPIやひな形が整備されておらず、Wizardな ど夢のまた夢でした。そんな中でわずかなサンプルプログラムを参考にしながら手探りで開発を進めたものです。
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ICADで書いた2次元図面の線情報を読み取って、鋳型凝固の解析モデルを組み上げ、そこに物性値や初期値・ 境界条件を割り付けて別立てのソルバーにデータを引き継ぎ、シミュレーションが終わったらCADで結果を取り 込み、コンターライン(凝固時間)の結果図をまたCADシステムで表示する。2次元ですから視野角や視点は気に しなくて良いし、カラーディスプレイがまだ普及していない時代ですからモノクロの図形だけ扱えば良い訳なの ですが、かたやCADの乗っていたコンピュータが遅くて(FACOM 230-48?)、スムーズな動作には苦労したものです。
イベント駆動型ソフトは、現代では我々の日常に溢れかえっており、携帯やスマホなどで常にお世話になっている状況ですが、 バッチ式処理が主体だった時代にあって、FORTRANのような単純な事しかできない言語(当時はまだC++は存在しませんでした。) でのプログラムのコーディングを通してコンピュータに自分の指示を認識させるのはある種の冒険でした。しかし日を追うに連れ て思うような処理が出来ていくことに、一定の手応えを感じたものでした。
考えればこれは今で言うCAD/CAEシステムのハシリであり、建築業界で言えば今のBIMによく似ています。 しかしCAD(Computer Aided Design)と言う言葉や概念がまだよく理解されていない時代(1982年ごろ)だっ たので、システムを見に来る人への説明には四苦八苦しました。このCADを利用した日本初の凝固シミュレ ーションシステムはBACCUS(バッカス)と呼ばれて、川崎製鉄知多製造所の鋳造部で永く稼働したと聞きます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前回はTSS端末の話のオマケとCADの話をしました。余りにも古い話なので皆さんには馴染みがなかったかもしれません。 今回はコンピュータグラフィックスの話をします。 これは現代にも繋がる話なので、少し長くなるかも知れません。
コンピュータグラフィックス(Computer Graphics)は文字通りコンピュータで画像・イメージを描くという意味ですが、 近年では当たり前の技術でして、我々の従事している科学技術計算や映画産業だけでなく、日常のビジネスプレゼンテー ションや我々が使っているスマホのインターフェイスなどにも多用されています。現代においてCGあるいはCGI(Computer Generated Imagery)は、我々にとって欠くべからざる技術になっていますが、その源流を辿るとやはりコンピュータ発祥の地である米国になります。
アメリカコンピュータ学会(ACM:Association for Computer Machinery)の中にコンピュータグラフィックスの分科会が設置され、 1974に第1回会議が実施されました。それがSIGGRAPH(Special Interest Group on Computer GRAPHics)です。
<SIGGRAPH-Wikipedia>
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「毎年夏にアメリカで開催され、世界中の多くの研究者により最新のCGの論文が発表され、技術更新がなされている。 ここで発表された技術が多くの3DCGソフトの開発に活かされる。Autodesk (Maya,3ds Max,Softimage XSI)、NewTek(Lig htWave 3D)といった大手3DCGソフト会社が、自社ソフトの最新版の発表をこのSIGGRAPHですることも多い。」と言う事ですが、 2008年からは毎年冬にアジアでもSIGGRAPH Asiaが開かれているようです。
一般的なCGの歴史を語るのは私には荷が重いし専門ともやや外れるので、 広島大学で中前栄八郎先生と共に日本のコンピュータグラフィックスの礎を築かれた西田友是先生のホームページを紹介するにとどめます。
<CG History -西田研究室>
SutherlandやBezier、Blinnなどきら星のごとき名前が出て来ますが、こういうのに馴染みがあると言うか関心がある人がどんどん減っているそうです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回はCFD(計算流体力学)に特化したCGのお話をします。
CFDのCGデバイスは、1980年代前半のSiliconGraphicsの IRIS-4Dワークステーションの登場をもって嚆矢とします。それ まで静止画でしか見た事のなかったシミュレーション結果が、 目の前で動くと言う信じられない出来事を経験したのは昨日の 事のように思い出します。1984年3月、米カリフォルニア州モ フェットフィールドのNASA Ames Research Center, CFD Branch を見学した際の事です。Reentry(大気再突入)するスペースシャ トル周りに描かれた流線が動いた時は本当に驚きました。 それに加えて見る角度を変えても同様にアニメーションが出来ました。 流れが何と分かりやすいのだろうと感動もしました。
見学に立ち会って下さったのは、当時のCFD BranchチーフのDr.スティーブ・ダイバート氏と、 現JAXAの中橋和博先生(元東北大教授:当時は航技研角田支所所属でAmesにポスドクで留学中)。 その後の私の人生を決める得難い経験でした。Ames Research Centerの見学紹介の労を取って下さっ た筑波大学柘植先生とAmesOBのDr. Kenneth Kenji Yoshikawa氏にも感謝です。
今となっては基本的なアーキテクチャですが、IRIS-4Dのダブルバッファリングによる描画機能のおかげです。 ラスターグラフィックスで画面を記述する2つのフレームバッファを持ち、画面で片方のフレームバッファの内 容を表示しているうちにもう1つのフレームバッファに描画を開始し、描画が終わったら画面表示をそちらに切 り替え同じプロセスを繰り返してアニメーションを実現させるものでした。この秀逸なアイデアはCGでのエポッ クメイキングなもので、今でもこのアーキテクチャで我々はPCの画面上で動画を見る事が出来ます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 当時のNASAの描画ソフトはPLOT-4Dと呼ばれるもので、使われたグラフィック・ライブラリはGLと呼ばれるものでした。 GLは後にOpenGLに発展し業界標準となりました。OpenGLは、SGIをはじめ、ヒューレット・パッカード(HP)、サン・マイク ロシステムズ(現オラクル)、IBM、SONY-NEWSなどのUNIXワークステーションの他、Linux、FreeBSDなどのPC UNIXに加え、 Windows、macOS等で使用できるクロスプラットフォームなグラフィックスAPI(ApplicationPrograming Interface)です。
但し、現在のハードウェアから見たグラフィック・ライブラリの標準はMicrosoftのDirectXです。 市販されているほとんどのグラフィックボードは、NVIDIAもAMDも全てDirectXに最適化されており、 非常に高速な描画が実現できます。今DirectXはバージョンが12になり、並列シェーダーなどをサポートし更に進化しています。
OpenGLはすべてのグラフィックボードにおいてエミュレーションモードで動作する事が出来ます。 OpenGLで書かれたソフトウェアは非常に多いので、プログラミング的な見地と言うかソフトウェア 作成の上での業界標準はOpenGLになります。しかしハードウェアに直接アクセスせず仮想的にDirectX用に 最適化されたグラフィックボードを使っている関係上、描画速度等は大きく制限されます。
DirectXのAPIで直接グラフィックボードをコントロールした方が、当たり前ですが遥かに描画速度は速いのです。 ちなみに弊社のソフトウェアはDirectXに準拠して開発されています。その高速描画は定評があってユーザ様には ご存じと思いますが、現在では数1000万から1億グリッドの描画もPCで可能です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━