風荷重:競技場スタンドを覆う片持式屋根構造の流体計算

解析の詳細

     

    【解析結果】
      屋根中央断面における計算終了時の風圧係数分布を図4に示す。 風圧係数は空気密度1.187kg/m3、風速10m/sとして算出した。風向に関わらず、屋根上面では渦が間欠的に発生し、屋根先端部から下流に向かって渦の成長が見られる。風圧係数は最大で0.9程度の負圧を示す。一方、屋根下面ではスタンドによる吹き上げが生じるため、風上で1.0程度の正圧を示す。

     


    図2 風圧係数分布(瞬時値) 風向:後方から客席

     


    図3 風圧係数分布(瞬時値) 風向:客席から後方

     

    <平均風圧係数の比較>
     屋根中央断面における時間平均した風圧係数を、風洞試験結果と共に図5に示す。 平均化時間は0.2秒とした。 風向が観客席後方からの場合、屋根上面では、-0.9~-0.5程度の負圧を示し、風洞実験結果とほぼ同じである。 屋根下面では、-0.3~1.1程度を示し、風上では正圧を風下に向かうに従い負圧を示す傾向は一致する。 しかし、風上端部において風洞試験結果よりやや大きい。
     一方、風向が観客席側からの場合、屋根上面では、-1.1~-0.7程度を示し、風洞実験結果とほぼ同じである。 屋根下面では、-1.0~1.1程度を示し、風下端部の傾向が異なるものの風洞試験結果より大きい。

     


    図4 平均風圧係数 風向:後方から客席

     


    図5 平均風圧係数 風向:客席から後方

     

    【まとめ】
     一様流の流体計算を実施した結果、屋根下面の風圧係数は風洞試験に比べて大きいものの、傾向及び屋根上面は概ね一致した。今後の課題として、屋根勾配、背面開口率、観客席勾配等が異なる場合の再現性の把握などが考えられる。

     

     またケーススタディとして、斜め方向の風向でのシミュレーションも行い、順方向の風向の結果と比較した。 図5は、後方から客席への風向の結果である。屋根面の風圧分布では、順方向では台形の負圧になっている部位が観察されるが、斜め45°の風向ではコニカル(円錐状)な渦が1つしか観察出来ない。立方体の場合では2つ観察出来たものが1つしか見られない原因は、屋根勾配にあるものと考えられる。
     図7には、客席から後方の風向の結果を示した。順方向の風向での屋根面風圧分布は、屋根全体が同様な値の負圧で覆われているように見受けられる。それに対して斜め45°の風向での結果は、立方体の場合と同じような2つの明確なコニカルな渦が観察できる。風の方向に対して屋根面が上り勾配か下り勾配かは、風圧力に大きな影響がある事が分かる。

     


    図6 屋根面の風圧分布 左:順方向 右:斜め45°風向:後方から客席

     


    図7 屋根面の風圧分布 左:順方向 右:斜め45°風向:客席から後方

     

・解析の目的
 大規模片持ち式屋根に対して一様流の流体計算を実施し、その適用可能性を把握する。 また比較的小規模な風洞を用い、屋根勾配、背面開口率、観客席勾配などを合わせた部分模型による一様流下での風洞試験で、構造設計初期段階に適用可能な風力特性を得た。
・解析の内容
<風洞試験の概要>
 対象とする構造物は、図1に示すような、既存サッカースタジアムのメインスタンドに増築する大規模片持式架構の屋根である。

 


図1 対象構造物 概観

 

 屋根面の風圧はスキャニバルブを介して、圧力変換器により屋根上下面それぞれ別々に測定した。

 


 

<流体計算の概要>
 空間差分法として、粘性項は2次精度の中心差分、対流項は中心差分に数値不安定性を抑えるため数値粘性を調整して付加し、乱流モデルは使用していない。

 


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