前回ISO19650の概要について説明をしました。今回は、この国際規格の認証・講習・資格という内容についてご説明したいと思います。
BSIとは
ISO19650の認証・講習・資格制度は日本ではBSIジャパンが行っているものです。最初にBSIについて、少し説明をしておきます。BSIとは、英国規格協会 (British Standards Institution)のことです。BSIの起源は1901年の工学標準化委員会 (Engineering Standards Committee)だと言われています。その後1929年に、BSI(英国規格協会)に名前が変わり、英国の国家規格を制定する機関となりました。日本での国家規格はJIS(日本産業規格)になります。この起源は、1939年の工業品規格統一調査会と言われていますので、BSIはJISよりも歴史は古いです。
日本にJISマークがあるように、英国にも規格のライセンスマークがあります。BSIのライセンスマークはカイトマークと言います。カイトマークは、ヘルメットや工具などにも使用され、その製品の安全性と品質が英国規格協会によるテストに合格していることを証明します。このマークが凧(Kite)に似ていることからカイトマークと言われるようになったようです。
BSIは、1947年に創立された国際標準化機構(ISO)との関係が深いと言われています。BSIは、ISO9001やISO14001、ISO27001などの国際規格の元となる英国規格の制定に関わっています。
ISO19650についても、その前身となるPAS1192などの標準の開発から取り組んでいるようです。つまり、BSIは規格の開発・認証・教育などを行っています。日本のBSIジャパンは、建設関係の規格の開発は行っておらず、認証審査と教育を行っています。
ISO19650の認証について
ISO19650の認証審査は、建設プロジェクト単位となります。ISO9001やISO27001は企業や組織に対する認証審査ですので、その点が大きく違います。ISO9001やISO27001は、審査の対象となる組織自体の業務すべてが対象となりますので、その企業全体の管理書類などの整備が必要となりますが、ISO19650-2(設計・施工段階)の認証審査では、審査対象となる建設プロジェクトが、ISO19650‐2の情報マネジメントプロセスに適合しているかということが審査の対象となります。これは、発注組織を中心とした、設計・施工・運用業務全体のプロジェクトの中で、各企業が果たすべき役割を実施できているのかという観点で審査されるためだと考えられます。
ISO19650では、建設プロジェクトにおける、その役割は、発注組織、元請受託組織(発注組織から直接受託を受けている設計事務所やゼネコンなど)、受託組織(元請受託組織の下で情報を生産する組織や協力会社)の3つに分けられます。その3つのどれかの役割で審査が行われますが、日本ではまだ発注組織として認証を取得している企業もしくは組織はありません。
現在、日本で認証を取得している企業は、下図の13社になります。設計事務所・ゼネコンなどの元請受託組織が9社、BIMモデルの作成などの協力会社が4社となっています。
また、種別のカイトマークとベリフィケーションという記載があります。カイトマークとは、先ほど説明したようにBSIの認証マークのことを指しますが、これは、認証審査するプロジェクトが、ISO19650の規格通りに実施できていることを審査し、問題なければ認証を与えるという意味です。ベリフィケーションは、そのプロジェクトを審査することによって、ISO19650の実施ができる能力を、その企業が持っているかどうかを認証するものとなります。カイトマークの審査は、3年間の認証期間で、毎年中間審査が行われます。ベリフィケーションは、1年の認証期間なので、継続するために、翌年も審査を受ける必要があります。つまり、どちらの審査種別を選んでも、毎年審査が行われます。
また、現在BSIジャパンが審査できる規格は、ISO19650-1及び-2、とISO19650‐5です。ISO19650-5の情報セキュリティ(情報マネジメントに対するセキュリティ志向のアプローチ)は、ISO19650-1及び-2のカイトマークの認証をしているか、同時に取得するかが条件となっています。現在2社がすでに認証を取得しています。
現時点で、さらに数社が認証取得に向け取り組みを行っていますので、今後多くの企業が取得されてゆくのだと思います。企業によってBIMの取り組みに違いがあり、この認証取得や、次回説明する資格取得は、先進的なBMの取り組みを行っているひとつのエビデンスになると考えられます。
認証を取得している元請受託組織は、受託組織である協力会社に、ISO19650に対応した業務を要求するようになるでしょう。さらに、海外のように発注組織も、これを要求するようになれば、より多くの企業が認証取得に動くことになるのではないでしょうか?
ということで、次回はBSIのISO19650の資格制度について説明したいと思います。