第19回 ISO19650のBSIのBIM資格について

 これまでBSIの認証や研修について説明してきました。今回は、BIM資格についてご説明します。BSIのBIM資格は、前回ご説明した、研修を受講することで、資格試験を受けることができ、その試験に合格することで、BIM資格を得ることができます。BSIの研修を受けた方の多くが、このBIM資格を取得されています。

 BSIの資格は、4種類あります。そのうち、BSIジャパンが主催している日本語の研修で取得できる資格は、プロジェクトインフォメーションのプラティクショナーとプロフェッショナルの2種類です。

 プロジェクト インフォメーションというのは、設計・施工のISO19650-2による情報マネジメントのことです。また、プラティクショナーとは実務者のことで、プロフェッショナルとはスペシャリストのことです。つまり、プロジェクトインフォメーション プラティクショナーとは、設計施工段階においてISO19650における情報マネジメントの知識を持って、実務が行える力量があると、グローバル認証機関のBSIが試験によって認めた事になります。また、プロジェクトインフォメーション プロフェッショナルとは、設計施工における情報マネジメントだけでなく、BIMによる情報セキュリティや安全衛生などの知識を持ったスペシャリストであると、グローバル認証機関のBSIが試験によって認めた者のことになります。

 ISO19650の認証は、企業としてのISO19650が実施できる力量があるといった証明であり、ISO19650の資格は、個人としてISO19650が実施できる力量があるという証明になると言えます。
  

BSIによるISO19650の研修と資格の関係

 残りの2つの資格についても説明しておきます。アセットインフォメーションというのは、ISO19650‐3の竣工後の資産の運用フェーズに対応した資格です。この資格取得に必要となるBIM ISO19650パート3 アセットマネジメント研修は、まだBSIジャパンによる日本語の研修が行われていません。従って、この資格を得ようとした場合は、英国本社などの英語による研修と、試験を受けて頂く必要があります。試験に合格すると、建物の竣工後の運用・維持管理におけるプラティクショナー(実務者)又は、プロフェッショナル(スペシャリスト)という資格を得ることができます。

 このアセットインフォメーションの資格取得に必要な研修は、上記の表のように、プロジェクトインフォメーションの資格取得に必要な研修と同一のものが多く、もしプロジェクトインフォメーションのプロフェッショナルの資格を持っていれば、BIM ISO19650パート3 アセットマネジメント研修を受講し、試験に合格すれば、アセットインフォメーション プロフェッショナルの資格も得ることができます。

 これらの資格は、名刺に入れることができますので、資格を取得したらぜひ、入れて頂ければと思います。

 プロジェクトインフォメーション プロフェッショナルの資格取得に必要な、BIM ISO19650パート5 セキュリティ及びBIM研修は、2022年の8月に開始され、BIM PAS1192パート6 安全衛生研修については、今年6月から始まっていますので、プロフェッショナルの資格者は今後増えてゆくと考えられます。プロジェクトインフォメーションのプラティクショナーの資格を持っている方は、9月末時点で417名になります。

 これまでに、私がBSIジャパンで、研修を行った回数と人数が下記のグラフです。ISO19650-1/2の研修は、BSIジャパンには私以外にも講師がおり、全体で32回、600人近い方が研修を受けておられます。つまり、この研修を受けた方の半数以上が、試験に合格され、プロジェクトインフォメーションのプラティクショナーの資格を持っておられるということになります。
  

BSIジャパン認定講師である伊藤が行ったISO19650に関する研修

 プロジェクトインフォメーションのプラティクショナーの資格取得者数は、全世界でも1761名です(9月末時点)。実は、日本は英国に次いで2番目に資格取得者数が多い国です。積極的に、この資格取得に取り組んでおられる企業もあります。

 日本では、RevitなどのBIMソフトウェアの操作に関する研修は多く行われていますが、「BIMとは何か?」「BIMによる情報マネジメントプロセスとは何か?」「BIMによる情報セキュリティなどのリスクへの対応や安全衛生」といった内容の研修は、まだあまり企業の研修では行われていません。BIMソフトウェアの操作を学ぶことも重要ですが、BIMのプロセスが理解できないと、何のためのBIMなのか、わからなくなってきて、大きな成果も期待できないでしょう。

 BSIの主催している研修やBIM資格は、ISO19650の認証を取得するためにも必要ですが、認証の取得に関係なく、BIMプロセスの国際規格であるISO19650を理解するためにも、この研修を受けておいたほうがよいでしょう。  

 日本の建設業において、中堅以上のゼネコンや設計事務所はほとんどBIMに取り組んでいます。しかし、実態はBIMソフトウェアを試行している程度の会社が多く、その企業のBIMの実力やスキルを示す指標はありません。少なくとも、ISO19650の認証の取得や、BSIのBIM資格取得者数という数字で、その企業のBIMに対する取り組みが示されるのではないでしょうか?