第5回 2021年のISO19650関連のセミナーについて

 今年(2021年)は、8月に1回、10月に3回と合計4回のウェブセミナーでお話させて頂きました。3社の違う会社でのウェブセミナーでしたが、これらは「BIMによるプロセス改革のすゝめ」というテーマで、続き物だったのです。なかなか全部見たという人は少ないと思いますので、これらがどんなものだったのかを、今回はご説明しようと思います。
 

2021年のBIMプロセスイノベーションのセミナータイトル
2021年のBIMプロセスイノベーションのセミナータイトル


 まず、「BIMによるプロセス改革」について説明します。日本の建設業界は、プロセスを変えずにBIMソフトウェアを導入してきたので、なかなか本来の成果を出せずにいると考えていて、BIMソフトウェアがツールとして実践活用ができるようになった今こそ、プロセス改革に取り組むべき時期だと考えています。そういう考えによって、私は4月に株式会社BIMプロセスイノベーションという会社を立ち上げました。つまり、会社名自体が「BIMによるプロセス改革」なのです。

 この「BIMによるプロセス改革」をどのようにすればできるのかということなのですが、私はISO19650に着目しました。ここで書かれている、「情報マネジメントプロセス」の導入が、「BIMによるプロセス改革」のきっかけになると考えて、取り組みを始めたのです。

 ISO19650は、最初は単なる興味で、BIMについての規格が出たから読んでみようという感覚でした。しかし、読んでみると、私が考えていたようなBIMのプロセスがきちんと体系化されていることに驚き、真剣に取り組むようになりました。2020年の夏ごろから取り組みを始め、2021年2月に前職において、日本初となるISO19650‐2の認証(Certification)を取っています。今年は、大和ハウス工業以外にも2社認証を取得していますが、それは検証(Verification)であって、認証(Certification)を取得しているのは、現時点でも大和ハウス工業だけです。

 2021年3月に大和ハウス工業を退職して、BSIの認定講師となり、ISO19650‐1と‐2のトレーニングを行うようになりました。このトレーニングは丸2日間のコースですが、すでに10社受講して頂き、200名近くを教えています。このトレーニングはありがたいことにとても喜んでいただいています。

 このトレーニング終了後にアンケートを取らせて頂いているのですが、このアンケートの中で「BIMによるプロセス改善はあなたの組織に必要ですか?」という問いかけに対し、なんと98%の方が必要もしくは必要となると答えておられます。

 これはとても嬉しいことです。日本のBIMがプロセスを変えようとせずに、ツールとしての活用を進めてきた中で、ISO19650のトレーニングを通して、プロセス自体を変える必要性があるとほとんどの方に言って頂けたのです。

BSIトレーニング受講後のBIMプロセス改善についてのアンケート結果
BSIトレーニング受講後のBIMプロセス改善についてのアンケート結果


 そこで、私は今年のセミナーはISO19650を知って頂くきっかけとしたいと思い、今年は、「BIMによるプロセス改革のすゝめ」というテーマでお話を致しました。これらのセミナーの概要をご紹介します。

2021年8月26日 主催:応用技術株式会社 
BIMによるプロセス改革のすゝめ 1
~ISO19650(情報マネジメントプロセス)の適用


 最初のセミナーでは、まずBIMによる一気通貫についての考えを述べ、ISO19650が設計・施工だけでなく維持管理運用や情報セキュリティなどの規格があることを説明しました。そして、建物のライフサイクルにおける発注者やゼネコン・設計事務所・協力業者などの役割や、設計における情報マネジメントプロセスの適応について説明しています。

2021年10月14日 主催:オートデスク株式会社
BIMによるプロセス改革のすゝめ 2
?ISO19650におけるRevitとBIM360の効果的活用術


 次のセミナーでは、まず、設計BIMのプロセス分析を行い、現状の業務パターンを認識し、あるべき業務パターンがどのようなものかを説明しました。そのうえで、ISO19650の重要な概念である「共通データ環境による協働作業」において、RevitとBIM360をどのように活用してゆけばよいのかを説明しています。

2021年10月20日 主催:株式会社BSIジャパン 
BIMによるプロセス改革のすゝめ 3
~プロセス改革のための情報マネジメントプロセス(ISO19650-2)の取り組み方


 このセミナーは、ISO19650の認証機関であるBSIのセミナーです。ここでは、ISO19650の規格について「知る・学ぶ・取得する・活用する」という4つのステップで説明しています。「学ぶ」では、ISO19650のトレーニングがどのようなものか?その特徴的な学習方法などをご説明しています。「(認証を)取得する」では、認証をどのようにして取得するのかといった流れを説明しました。

2021年10月27日 主催:応用技術株式会社 
BIMによるプロセス改革のすゝめ 4
~BIMプロセスの在り方について語ってみた~どうやってプロセス改革に取り組むのか


 連続してきたセミナーの締めくくりとして、「どうやってプロセス改革に取り組むのか」ということで、応用技術で2021年の11月から始められたISO19650のコンサルティングサービスについてお話ししています。そのコンサルティングサービスで、当社が提供している「元請受託組織の活動ガイダンス」の内容を説明しました。「元請受託組織の活動ガイダンス」は、ISO19650の情報マネジメントプロセスで必要となる管理書類のテンプレートや共通データ環境の構築などの説明資料です。

 今年のセミナーでは、ISO19650-2 設計施工フェーズの情報マネジメントプロセスが主な内容でした。来年は、ISO19650‐3の維持管理運用フェーズの情報マネジメントプロセスやISO19650‐5の情報セキュリティなどについても取り組んでゆきたいと思います。

今年のセミナーは皆様のBIMのプロセス改革に少しでもお役に立てたなら嬉しく思います。