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パンチカードは紙テープのように切れる事はありませんでしたが、やはり紙製ですから長く使っていると
擦り切れ劣化します。更に大量のパンチカードを常時扱ったりしていると、角が傷んだりあるいはカードそ
のものに折れ目が付いたりします。四角い穴が破損することもしばしばです。これが原因で起こるトラブルが研究者泣かせでした。
快調に進んでいたカードリーダーへのパンチカードの読み込みが止まると、「ジャムった~。」と叫びながら、
都度自分で操作の対応をしなければなりません。落ち着き払って既に読み込んだカードの最後の1枚をリーダー
側に戻して再スタートボタンを押す。これでうまく行けば万々歳ですが、半分の場合は再スタートしません。
無理やり再スタートさせると、プログラムかデータが一部欠けた状態で計算される訳ですから、課金された
ものが無駄になり、指導教官からお目玉を喰らいます。
また、カードはトランクに最大2000枚入りますが、これを誤って床に落っことすと復元するのが大変です。
カードの順番が違うと、全く違った計算ジョブになりますから、顔を引きつらせながらカードの順番チェックを
したものです。計算費用が無くなると、最悪卒業論文が書けない事になるので必死でした。今となっては笑い話ですが。
なお、既にお分かりかも知れませんが、パンチカードシステムはプログラム内蔵型計算機を前提としています。
インタープリター型計算機であれば、プログラム・データの所定の部分を随時再読み込み出来なければなりませんが、
パンチカードシステムではカードの流れは1方向で、逆進は出来ませんので、プログラム内蔵型にしか対応していません。
念のため。
読み込めなくなった傷んだカードは、全体の様子を見てどれだけの修復をするか決めます。個々のパンチカードを
目視で検査すれば傷み具合は分かりますから、折れたり破れたり穴が傷んだカードはチェックして取り替えます。
専用のパンチカード作成機に入れてカードを複製出来れば良し、傷みがひどくて複製出来なければ、再びカードに
プログラムやデータを手で打ち込みます。それでも紙テープを修復するのに比べて、作業は非常に簡単で、技術革新
の有難味を大いに感じたものでした。
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