移動物体:強い横風中を高速移動する車両の風圧数値シミュレーション

解析の詳細

    【高速走行するトラックの風圧解析】
     解析モデルは、公開されているCAD データ3)を加工せず直接生成し、格子間隔のみ調整した。
    本計算の解析領域の大きさは30m,50m,20m で、計算格子点数は95×311×68 とし、x,y,z 方向の格子間隔はトラック走行領域で等間隔としている。
     Euler 法では、物体移動は個々のセルにおけるVf 及びAx,Ay,Az の時間変化として表現される。 通常の空力CFD で用いられるガリレイ変換は一切行っていない。
     車両の走行速度は100km/時とし、風速は30m/sec の一様流として走行方向に直角に設定した。物体表面の境界条件はNonSlip を規定している。
     風向きに対する垂直断面圧力と表面圧力分布の結果をそれぞれ図3,4 に示すが、トラック側方風上側と風下側にそれぞれ強い正圧と負圧が観察される。正圧の最も強い箇所は横風の来る車体斜め前方に見られる。

     


    図2 Super Cartesian 法の格子定義

     


    図3 高速走行トラック周辺の断面圧力分布

     


    図4 高速走行トラックの表面風圧分布

     

    【高速走行する鉄道車両の風圧解析】
     本計算の解析領域の大きさは400m,600m,80m で計算格子点数は125×286×51 とし、車両走行領域x,y,z 方向の格子間隔は等間隔としている。
     車両の大きさは4.5m,24m,4.5m で4両編成とした。車両の走行速度は100km/時で、風速は30m/sec 一様流として走行方向に直角に設定した。なお、車両は地面から6m 上がった軌道の上を走行すると仮定している。
     車両の断面圧力分布と負圧部の等値面(-500Pa)を図6 、7に示す。トラックと同様に風上側では強い正圧が風下側では強い負圧が見られ、強い負圧領域が主として先頭車両の風下側に大きく存在していることが分かる。

     


    図5 横風を受け高速走行する鉄道車両の解析モデル

     


    図6 高速鉄道車両周辺の断面圧力分布

     


    図7 高速鉄道車両周辺の表面圧力分布・等値面を同時表示

     

    【まとめ】
    以上より、車両風上側・風下側では大きな圧力差が見られ、部分的に100kgw/㎡を超える荷重が観察された。 車重によっては大きな横力による横転の可能性は小さくなく今後詳細な解析を進めたい。また、e-flowを利用することで、移動する物体そのものに及ぼす影響だけでなく、周辺に及ぼす風速や風荷重を観察することも可能であることが確認できた。移動する物体の大きさ・モーションやその周辺で発生する風の向き・速度を変更して検討することも可能である。
・解析の目的
【はじめに】
近年、強風下において鉄道車両やトラックなど、高速走行する車両の横転事故が多く報告されている。しかし、強風下で高速走行する車両周辺の流れ場の構造や圧力の挙動について解析された研究はほとんど報告されていない。 そこで本報告では、強風の流れ場の中で車両を模した物体が高速で移動する状況を、直交格子による3次元移動物体CFD 解析を用いて再現し、車両周辺に発生する流れ場及び圧力場の解明を試みた。 解析は鉄道車両とトラックの2種類について実施し、流れ場及び圧力場の構造を可視化・検討した。
・解析の内容
【解析手法】
移動物体の解析手法には、大別してEuler 法,ALE 法,MultiGrid 法の3つがあるが、ここではEuler 法に物体表面の勾配を持つCut セル法を適用して離散化を行った(次式及び図1参照)。
◆ 運動方程式(Navier-Stokes 方程式):
∂(uVf)/∂t+uAx(∂u/∂x)+vAy(∂u/∂y)+wAz(∂u/∂z) = Vf・(-∂P/∂x+(μ/ρ)∇2U|x+Fx)∂(vVf)/ ∂t+uAx(∂v/∂x)+vAy(∂v/∂y)+wAz(∂v/∂z) = Vf・(-∂P/∂y+(μ/ρ)∇2U|y+Fy)∂(wVf)/ ∂t+uAx(∂w/∂x)+vAy(∂w/∂y)+wAz(∂w/∂z) = Vf (-∂P/∂z+(μ/ρ)∇2U|z+Fz)
◆連続の式:∂(Vf)/∂t+Ax(∂u/∂x)+Ay(∂u/∂y)+Az (∂u/∂z)=0

ここで u,v,w は各速度成分、Vf は体積占有率、Ax,Ay,Azは隣接セルとの開口率、 μは粘性係数,ρは密度、P は圧力、U=(u,v,w)、Fx,Fy,Fz は体積力である。
なお、移流項の空間離散化はハイブリッド中心差分によるDNS を用い、乱流モデルは用いていない。

 


図1  Super Cartesian 法の格子定義
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